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仕事でめっちゃ苦労した話を聞いてくれ


前置き

2022年現在。ぼくは、ある企業と直接契約を結ぶフリーランスをしている。
最初の契約時は残念なことに報酬は減額するが、自分のスキルとその企業で与えられる仕事量を鑑みると、これは仕方がないことかとは思った。
その後、色々とサービス立ち上げに携わったりなんだりで報酬は上げてもらった。だいぶ上がったけどそれでも問題は続いている。ふぁっきん。

めちゃくちゃレアケースのクソ案件なので、こんな状況になった流れを皆さんに共有しておきたいと思う。

会社について

2019年11月まで、ある会社のいち社員だった。そしてこれは、過去形でありながら2021年9月まで続いてた。意味がわからないと思う。ぼくもわからない。

クソ面倒なことはゴメンなので余り詳細を書くべきではないが、ちょっと書いたらすぐにバレそうなのでもうどうでもいいや。普通に書く。

数年前、前職(いまでは前々職だが)で倒産の準備のための人材整理のため失業し、知人のツテで都内某所にあるベンチャー企業に入社した。
報酬は前職よりもそこそこ増え、自宅からそこそこ距離はあるもののフレックスタイム制で働きやすく、とても気に入っていた。フリードリンクもあって福利厚生は過去最高だった。

業務内容は主にソシャゲの開発とVR事業、そして研究開発と、そこそこ手堅くやっているようだった。プロジェクトが複数走っていて社員も多く、そこそこ安定感があったのでそこそこ安心していた。少なくとも、そう見えていた。

辞めるまでのあれこれ

予兆1

ディレクターとしての採用だったが、最初のプロジェクトにはプログラマーとしてアサインされた。しかしどう見ても炎上している。その上ぼくはその言語には全く触れていないのでゼロからスタートだった。異常である。それでもまぁできることをやりつつ日々お勉強だなという感じで過ごしていた。

ある時、共同開発している別会社の事務所で、こちらのエンジニアが作業するという話になった。プロジェクトの進行が著しく悪いからだ。
なお、このエンジニアとは「ぼくを除くエンジニア全員」である。当然身近に教育してくれる人間がいなくなったので、ぼくは何もできることがない。なお、その事務所は、東京から1600kmほど離れている。

暫くしてある程度状況が整理された中で、ぼくの所属する会社はそのプロジェクトから手を引いた。

予兆2

該当のプロジェクトが終了すると、ぼくは開発中の他のプロジェクトのアートディレクターとして採用いただいた。大変ありがたいことではあるが、正直、他のデザイナーさん方にしてみれば急に入ってきて何ができるかよくわからない人間に担当されていた訳で、不快だったかも知れん。そこはプロマネを恨んで欲しい。

海外で展開予定のVRコンテンツの開発で、ぼく自身はVRに関わるのは初めてではあったが、3Dは齧っていたのとディレクション経験はあったのとで、まぁやれることはやったと思う。2Dデザインを社内で行い、その指示出しからクオリティのチェック。3Dは外注でその発注をして、進捗とクオリティのチェック。そしてエンジニアとの連携を行う。
ぼくが入るまで停滞気味だったプロジェクトは、少しずつだが確実に動き出していた。

しかし、ここで問題が発覚する。クライアントと連絡が取れないらしい。さらに言えば、このプロジェクト……クライアントとは口約束で交わしたもので着手金も受け取っていないらしい。意味がわからない。

プロジェクトにアサインされて4ヶ月。入社から半年弱で、この会社は自主退職を求めるようになる。
正直この時点で転職していればこうはなっていなかったが、流石に半年も経たずに転職という選択肢を、ぼくは選べなかった。

予兆3

予兆っていうかもう既にどう見てもダメなんだけど、当時最先端であったある「Vの者」業界のトップとも言えるであろう事務所から引き抜きのお話があった。というのも、その事務所の取締役がこちらの会社の取締役も兼任していたので、上手いこと人材を有効活用しようという判断であろう。
多くのデザイナーとエンジニア達はここで移籍することになり、社内開発は絶望的になりつつあった。

予兆4

残念ながら引き抜き対象にならなかった(が、これから1年ほどで正解だったと判明する)ぼくは、その後ほそぼそといくつかのプロジェクトを受託し、プロマネ兼エンジニアとしてVRコンテンツの開発を行った。自分+エンジニアの計2名で食い扶持は十分稼いだので、流石に解雇の恐れはないだろう。
並行して、開発しているVRコンテンツの方ではレベルデザイン(Unityでオブジェクト配置する方。ゲームバランス云々の方ではない)を行い、こっちのほうが向いてんなぁと思いながら色々こなし、人生で初めてまともに開発段階から企画にいちいち口出ししつつリリースにこぎつけるということができた。ようやくである。いつも開発終盤からだったからね。
ちゃんとゲームをリリースできたと言うのは本当に嬉しかったので、ここまで残った意味はあったなと思っている。

さて、1本目のリリースが終わり、2本目となったが、この時点で残っている社員は7名である。元の社員数は契約・出向含めて60名だ。実際の作業者は5名である。

予兆5

トドメである。
1本目のリリースが完了するとほぼ同時期に、これまで利用していたオフィスを引き払った。以降、マンションの一室を間借りする形で開発をすることになる。

このタイミングでぼくとシニアエンジニアを除く3名がマネージャーに昇格し、昇給した。まず間違いなく引き止めである。これもまた問題の引き金になる。

2本目の開発は難航した。システムは流用なのでエンジニア側はその改良、新機能の実装、調整のみではあるが、作品のコンセプトが決まらない。
プロデューサーのオーダーはそれなりにわかりやすく出ているのだが、プランナーがそれを理解できていない。デザイナーも理解しようとしない。完全に不勉強なので、ブレまくる。ぼくは出されているオーダーのジャンルに元から関心があったため、どういったものが求められているのか理解できた。そのため、エンジニアとプランナーに「こうあるべき」を語り続けたが、あまり聞き入れる様子はなかった。彼らはぼくの上司であり、マネジメント経験は初である。そういったこともあり、意地になったのかと思うが、実際のところはわからない。多分バカだったんだろうなと思っている。

そういった中で、あまり面白いと思えないような作品が仕上がって無事リリースとなった。結果、売上は前作とは程遠く、前作のアップデート版の開発が作られることになった。

カイシャノオワリ

2作目のリリースから数ヶ月。次回作の方向性もろくに決まらず、全員モチベが底辺である。そんな中、ある日、シャッチョから全員がレンタル会議室に呼び出された。
レンタル料は1時間1000円である。安い。会議室までの全員の移動代は1800円である。頭がオカシイのではないだろうか。

シャッチョから開口一番放たれた言葉は「今月の給料が払えない。申し訳ない」である。ウケる。直近作った2作品はサブスクみたいなものなので毎月利益は入ってくるが、従業員の給料分には全く届かない。
この時点で4名の退職が確定し、ぼく含め3名が出向という形になった。
その出向先が、現在委託を受けている企業様である。感謝感謝。

委託を受けて半年ほど。デザイナーが成果を出せずに「報酬を支払わない」などという話になって辞めていった。残されたぼくともう一人は立て直しは見込めないこの会社に見切りをつけ、フリーランスとして生きることを選択した。
ここまでの流れで「何で早く辞めないんだよwwww」となるだろう。わかる。だが、ぼくは気が付いていたのだ。下手に動けばシャレにならない事になるという事実に。

そして労基へ

というようなアレコレを経験し、フリーランスとして勤めて半年ほど。
労基から連絡が来た。元同僚から訴えがあり、その調査に会社が応じないため、同僚から名前が上がったぼくに話を聞きたいということだった。
なぜ社長でなくイチ社員であるぼくが労基へと赴かなければならないのか。面白すぎるので向かった。

元シャッチョとは連絡が取れず、オフィスも既に解約しているので当然凸っても意味がない。元同僚達は役員報酬などが支払われていないなどの問題を抱えていたようだ。知らんがな。

ここで新たな展開があった、いよいよ本題に移ろう。

本題

ようやく本題である。
労基に呼び出されて告げられたのは、辞めたはずの会社に未だにぼくの名前が残っているということだ。辞めたのに、辞められていない。
登記されている会社の住所も変わっていないし、電話も残っているが転送もされていない。完全に死んでいたのだ。死んでいるのに、消せないのだ。

ゾンビカンパニー

皆さんは転職経験、もしくは解雇されるなどで社会人から無職になったことはあるだろうか?ぼくは過去に10回ほどある。ジョブホッパーがよ。
基本的に離職後1ヶ月もすれば流石に離職票というものが手元に届く。お前は無職だという証明書である。これが、ぼくには届かない。

なぜ届かないのか?簡単なことだ。ぼくはまだ、在籍していることになっていたのである。在籍しているんだから離職票など届くわけがない。

ぼくが辞める宣言をした時、会社にはバックオフィスが存在しなかった。
会社は人員削減時に真っ先に総務を切っていた。皆覚えておけ、事務・総務が辞めたら、その会社は終わりである。
基本的にそういった手続きをするのはバックオフィスの仕事である。退職の手続きが一切されていないのである。どういうことか?離職票が届かないということである。離職票が届かないということは、失業保険の手続きもできなければ社保もそのままである。

保険の問題

この国は国民皆保険制度というものがある。国民皆が保険に入っているわけだ。基本的には。
企業は従業員を社会保険に加入させることが義務付けられている。
一方で、社会保険に加入せず、扶養にも入っていない国民は、国民健康保険に加入しなければならない。
しかし、実は離職後1ヶ月以内に加入していた保険会社に連絡することで個人で2年間延長することができる。これを任意継続と呼ぶ。もしフリーになる予定があるのなら、覚えておくといい。

ところがどっこい、これは「離職後に個人で延長する手続き」だ。辞めていない人間が、個人で延長などできるものではないのである。
ゾンビが滅び去るまで。

ホーリーライト(おめぇの会社ねぇから!)

多くのRPGなどにおいて、ゾンビに対して有効なのは聖属性である。
リアルで存在するゾンビカンパニーに対して有効なのは?政(府)属性だ。
政府の実態調査により、その企業の調査が行われる。これが発動すると、実態のない企業は「おめー死んでんな?」となり、勝手に倒産扱いになる。
このホーリーライトが発動されるまで、1年半かかった。長い戦いであった。

実態調査により「おめーの会社ねぇから!」と判断されると、「おめぇの会社ねぇから!」証明書が発行されて勝手に自宅に届く。特に連絡などはない。
これをもってようやく離職が証明される。とはいえ、あまりにもイレギュラーなのでこれを提出しても「離職票」代わりとして認識されない可能性が高い。職安に持っていっても区役所に持っていっても「???」という反応だった。
なお、この証明書は国が「倒産」認定をして社保が失効してから発行され、手元に届くまで郵送で数日かかることもある。最終的に手元に届くまでにタイムラグが有る。これは重要なポイントである。覚えておいて欲しい。
社保の失効は、完了しているのだ。

社保、延長できません!

社会保険は半分会社が負担してくれて、上限もある。
国保はそうではない。上限もぶっ飛んでおり、扶養もない。
家族4人の保険料だけで毎月10万である。年120万である。ウケる。
独立から安定するまでの間は社保の任意継続を行いたいと思うのは当然だ。

さて、前述のように任意保険の継続にはタイムリミットがある。
社保の失効から1ヶ月だ。一方で自営業と言うのは暇ではない。暇ではない上に、ADHDの特徴をご存知だろうか?後回しにする。それ。
書類が手元に届いて3週間ほどで、ぼくは任意継続の手続きをするために電話をした。

結果は見出しのとおりである。書類の発行ではなく、社保の失効から1ヶ月経過している。イレギュラーなケースであると何度説明しても、これが覆ることはなかった。年間120万の出費が確定した。

フリーランスになりたいあなたへ

あらゆる面でフリーランスは自己責任がつきまとう。
ぼくのように仕方なくなるものではないはずだ。だが、このご時世だ。仕方なくこの選択をする人もいるだろう。
これはあくまで一つの手段としてだが、ぼくのようなヤバい状況にならないために(なるかよ)回避策をいくつか覚えていって欲しい。

素直に転職する

いきなりフリーランスを否定している上に、すぐにそれができればそもそも苦労しないのだが。
離職票がなくとも、再就職したのであれば社会保険は更新される。何も問題はない。
職安行って早期雇用手当ゲットで臨時収入はできないが、これが一番現実的だろう。
まず正社員としての転職を目指しながら、フリーランスは最後の手段として考えた方がいい。本来であれば準備が必要なことなので。あ、自営業の登記はFreeeを使うと便利だよ!!!

非正規雇用で社保に入る

バイト・パート・契約社員。フルタイムの就労でなくともある程度の労働時間を超えると法的に社会保険に加入させなければならない。
週20時間以上の労働が発生すると、健康保険への加入が可能になる。
基本的に離職票が無くとも、社会保険の加入で上書きしてしまえば別の社会保険への加入は可能なので、週4で5時間働いて残りでフリーの仕事をするってのもありかと思う。収入源は複数ある方が安定するしね。

役所に行く

もし社保を個人で延長できず、国保に入らなければならない場合。
役所に行って状況を説明しよう。マジで金ねんだわ…とすることで保険料の分納ができる可能性がある。あとから返せよって話になっても、いきなり全額払い続けるのはキツいので、安定するまでの間猶予を貰うというのも選択肢に入れて欲しい。当然だけど、元から払えるなら払っておいた方がいい。

確定申告はちゃんとしろ

青色確定申告で国保やら年金やらをちゃんと計上して、翌年の還付金を受け取り、還付金を貰ったら全額その年の保険と年金にブチ込め。
まとめて払ってしまえば少し減額されるし。わかりやすい。そしてそれが控除に入り、翌年の還付金に繋がる。
在宅であれば家賃の一部も経費になるし、携帯代等の通信費も全額もしくは一部が経費になる。Netflix代も経費になる。10万以上の買い物は気をつけろ。

というわけでね

こんなふざけたことになる人間はめったにいないと思うし、ぼくほど怠惰な人間もそうそういないだろう。これが誰かの助けになることも、おそらくないだろうけれど、あまりにもふざけた状況になって面白かったので残すなどした。

つい先日の交渉で月収を上げることができたが、正直まだまだ苦しいところがある。パートナーが正社員でも、収入が少なければそちらの扶養に入ることも難しいので、もし家族を養う立場であるのならば(どこに住んでるかにもよるが)年間の売上は700万ほど必要だろう。マトモな人間ならやっぱ正社員がいいよ。ぼくには無理だけれど。

とはいえ、フリーランスにも当然いいところはある。最高の環境を構築して仕事ができる。会社でゴミみたいなCeleron搭載のグラボも積んでいないゴミみたいなPCとアスペクト比4:3のゴミみたいなモニター1枚で仕事しなくていいのである。ゴミみたいな椅子に座り腰を痛めることもなく、エルゴヒューマンに座ればいいのである。8時間勤務であっても、仕事が終わればYoutubeで黄色いパーカーを着たおっさんが酒のんでだらだら喋ってる配信をたれながしつつゲームをしてもいいのである。

クソみたいな失業イベントが二度も続いたわけだけれど、気楽なフリーランスになってなんとかやれてる状況になったので、愚痴をつらつら書いた下書きを仕上げて公開するなどした。

ところでこんな長文読む人いるのかな?読んだの?すげぇ……。

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