愛してはいけないと思えば思うほど、あなたへの好意が溢れ出て
随分前に恋心を抱いた相手がいました。
その人は、好きになってはいけない相手だと最初からわかっていて、好きになるはずもないと高を括っていた人でした。
彼と男女としての関係を進めるつもりも毛頭なく、ただお互い暇な時間に気軽に会ったりする仲でした。私だけでなく彼もそうだったと思います。
なのに、ただの暇つぶしの相手から、気付かぬうちに気になる相手になり、彼に会いたい、会えない時間がつらいと次第に思うようになりました。
でもこれは私の中だけに芽生えた感情であると、その気持ちを彼にバレないように押し殺し、たまに会うそのタイミングでも決して漏れないように、これまでの関係を継続できるように、それだけで満足だと自分に言い聞かせて、出会ってからの約半年間を過ごしました。
そんな中、ふと、自分は何をやっているんだろうと我に返りました。こんな報われない恋心をずっと心に閉まって、かといって次に進むわけでもなく、周りの友人がどんどん結婚していく中で自分だけ同じ場所に停滞し続ける焦りを急に感じました。
まわりの流れから取り残されていく不安のようなものがずっと心の底に居続けている気持ち悪さを拭いたくなった私は、ある日突然、彼に「もう会えない」と告げました。
彼にとっても唐突だったと思います。しかし、彼にとったら私なんて些細な存在に過ぎず、ただ遊び相手が1人減るだけのことだろうと思っていました。最後に彼に言われた、「そんなことなら最後に会ってから終わりにしたかった」なんて言葉も、そんなに本気に受け止めていませんでした。
それからまた半年が経ち、私と彼が出会ってから1年の月日が流れました。別れを告げてからの半年間は、まったく連絡すら取り合いませんでした。私は別の場所に引っ越し、転職もし、違う人に恋し、愛する気持ちを思い出し始めていました。
なのに、彼から突然連絡が来たんです。
半年前、まだ彼と会っていた時期からブランクなんてなかったかのように、当時からタイムスリップしてきたかのようないつも通りな感じで、いつも通りのメッセージが来ました。
私は動揺しました。一度好きになってしまった相手。自分から振り切って別れを告げたものの、そのときは涙が溢れて仕方なかった相手。そんな彼から、また会いたいというメッセージが入っていました。
封印したと思っていた恋心を急に思い出してしまった私は、またつらい関係が始まることはわかっているのに、返信するために手を伸ばしてしまいました。
そうしてまたやりとりのラリーが始まり、先日その彼とまた会いました。それまでは恋仲であるという意識もまったくなく会っていましたが、半年ぶりに会うことになってから、こんなに胸が高鳴りドキドキしたことがないというくらいの感情が湧き出てきて、自制が効かない自分にも嫌気がさしながらも、弱い心に流されてしまいました。
久しぶりに会った彼。これで会うのは何回目かわからないくらいなのに、はじめて心拍数が上がっているのを感じました。とても新鮮でした。「恋」の中にいる感覚を、とても久しぶりに感じました。
頭ではわかっています。この関係は、ほめられるものではないと。でも、半年前泣く泣く関係を断ち切った彼への想いが、会わない期間を経た分ますます大きくなって、私の心の全体積を占領しようとしていて、自分でもどうすれば良いかわからなくなっています。
いずれ、この関係には終わりがきます。必ずそうしなければならないと思っています。でも、それまで、ほんの束の間でもいいから彼との時間を長く持ちたい、そんな思いと、もう終わりにしなければならないという気持ちが交錯して、心の中の整理が自分でもつかない日々を過ごしています。