モラリティーの日
モラリティーの日。
なんだそうな。今日は。
それは2月の中旬のこと。前のめりに、あっという間に及川光博さんに転がり落ちてから、毎日毎日新しい知識が増えていく。
子供の頃に経験した、授業の度に初めてを知って好奇心を躍らせるような…そんな感覚。まだまだやわらかい感性が身体に残っていたのだと思うと、少しこそばゆいけれど、うれしい。
一生にそう何度もない改元のタイミングで。平成の終わりから令和のはじまりを、まさかこんなに「及川光博」というコンテンツに心奪われたまま過ごすことになるなんて。やっぱり人生は何があるかわからないから面白い。
そんな中で…彼の23年、そして24年目へと経るタイミングにも立ち会えるのだから、不思議な巡り合わせだ。
1996年5月29日「モラリティー」でメジャーデビュー。
だそうな。
20代後半である私。世代…というには幼すぎる。1996年という時代は、物心がついているかいないか定かではない。
けれども勿論王子時代のミッチーは知っているし、ドラマも見ていたし(マンハッタンラブストーリーがとても好きだった)、好きか嫌いかといえば当然好きの部類だし、相棒に出演が決まった時はとても驚いたけど、嬉しかった記憶もある。
でも、それだけ。
好きだけど、それは便宜上の「好き」で、何も知らない。音楽活動をしていることすら、ここ2〜3年で初めて知った。
それが今や、ステージに立っている本人に向かって「愛してまーす!」と叫ぶような状態になろうとは。
金と行動力と根拠のない自信をありったけ詰め込んで動く成人のパワー。我ながら困惑している。だけどそんな今が無茶苦茶楽しくて、そんな生き方を選べる環境に感謝もしている。
さて、先日の仙台公演。
結城公演であまりにも多幸感に満ちてしまい、余韻で気が狂いそうになった。身体よりも心が先走ってついつい参加公演を増やしてしまった。
今思えば、そんな衝動だけで行くことを決めたために、今回のツアー唯一のライブハウス公演だということも、23年目最後のライブだということも、すべて会場に入ってから知ったのだから、やはり心が先走っている。
中に入ると緞帳がなく、開演前からステージングが丸見え。心なしか「PURPLE DIAMOND」の文字も詰まって見えて。
後ろベイベーのはずなのに、ライブハウスだから距離感は近くて昂ぶる心。パイプ椅子なのも、ライブハウスの醍醐味を感じて気持ちが逸る。
開演したら、やっぱり違う。
ホール公演は「ショー」の毛色が強い。圧倒的なエンターテインメント。そんなホール公演とセットもセットリストも何一つ変わらないのに、ライブハウスというだけで、熱気が違う。
「ショー」なのだけど、やっぱり「ライブ」。そう感じたのは仙台が初めてで。会場ですら演出のひとつになり得るのだと思わずときめく。
そして、どうやらステージに立つ本人も同じようなことを感じていたようで、やはりどこかテンションがおかしい。
今回のツアーはどこの公演も違ったはしゃぎ方をしているミッチーだけれど、ライブハウスのミッチーを見るのは初めてだったので、こういうはしゃぎ方をするんだ…と知ることが出来て、無性に嬉しくなった。
「原点」「初心」
…そんなことを繰り返し語っていたミッチー。ベイベー歴3ヶ月程度のド初心者ベイベーにだって、当時の想いが伝わるような熱量で。
そんな中でのダブルアンコール。ココロノヤミからの「モラリティー」は、全くもってそんなド初心者ベイベーには展開が予想できなくて、思わず声が出た。
イントロが流れてから鳥肌が止まらなくて、4月に市川で初めて彼を生で見たときの感覚を彷彿とさせた。唖然となって、身体が動かなくなって、音楽に打ちひしがれるあの衝動。
「光博歌合戦」や「FUNK A LA MODE」の映像でしか見たことの無かった景色が目の前に広がっているのは、すぐにはちょっと信じられなくって。
この楽曲がミッチーやファンにとってとても大切で特別なことは前々から聞かされていたので、そんな「特別」を自分が体感していることが夢みたいだった。
あのどこか民族めいたイントロからの、刹那。すっと照明が彼だけを照らして、シャウト。相反した緑と紫のライティングに心の叫び。何度も繰り返してみた映像と、全く同じ光景が今目の前に広がっていて。
一方サビで人差し指を天高く突き上げる光景があまりにも美しくて恰好良くて、今まで見た映像だけでは気付かなかった迫力に圧倒されて。
指先に想いをこめて、もっとステージに届け!届け!と、腕にもぐっと力が入った。
「もうみんな気づいているでしょう 明日には死ぬかもしれない」
仙台の地でこの咆哮を受け取る重み。
自然と涙がこぼれて、この瞬間を、一生で今しかないこの時に立ち会えてよかったという想いで胸がいっぱいになった。
東日本に住んでいる人間は多かれ少なかれ、あの日を境に変わったものがある。
私の場合は「後悔せずに生きる」ことを優先するようになった。
あの日以降、行きたい・見たいと思ったものは躊躇せず足を運ぶようになった。突然日常が切り離される恐怖を知ってしまったから。
「行きたい」と強く思って足を運んだ仙台公演で、モラリティーに出会えた。それは自分の信念や生き方と、不思議とひとつに繋がったような…そんな運命めいたものを感じるには十分すぎて。
そんな幸せに包まれたまま、今日という日を迎えている。
私にとってははじめてのモラリティーの日。
久々の公式LINEも嬉しかったし、Twitterを検索するとただただお祝いムードでいっぱいなのも、ほほえましくて嬉しかった。
及川光博さん、本当におめでとうございます。
平成ラストと令和スタートを共に迎えられたように、23年目ラストと24年目スタートも、共に迎えられることに感謝します。
これからも素敵な日々を過ごしていけますように。心から願って。