新たなエリザベート像/TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート
2021/05/05
開幕後、とんでもないという噂を聞き続けていた『エリザベート・ガラ・コンサート』千秋楽を配信で感激しました!
配信で3万6千人、ライブビューイングで6千人は観劇していたそうです。映画館は、大阪や東京では開いていないと考えると、それ以外の地でも相当動員されていたのだなと。すごい!😆
私の初めての生エリザベートは、2018年月組版でした。翌年、帝劇版HPにも何度も足を運んだので、2018-19年はなかなかにエリザベート漬けだったなという思い出が。(本当は2020年もエリザ漬けの予定でした。大阪初日のチケットを事故って5枚くらい取ってしまった思い出…)
今回、観劇したスペシャルver.は18月組版の方はメインキャストにはいらっしゃいませんでしたが、なんとも懐かしくなる顔ぶれでした。(特に家臣の方々が、スーパー月組TIMEでしたね。嬉。)
新たなエリザベート像
1幕は夢咲ねねさん、2幕は明日海りおさんがシシィでした。
ねねちゃんシシィは〈変化〉の人。
冒頭〜結婚してすぐは、ちょっと気が強いけれど可愛らしくていつも誰かに守られていなければいられないような女の子。周りの人間を疑うということを知らなくてふわふわっとしていました。
"私だけに" 歌唱後に急に目つきが変わっていましたね。周りの人間すべてを敵として見ているようでした。自分を守るための硬い殻をつくり上げて、怯えながら孤独と戦っているような。そんな中でも、「その美貌が役にたつと」気づいた瞬間の気高い表情に鳥肌が立ちました。
1幕ラストの"私だけに リプライズ"で、登場したときにはまたガラリと変化していて。この時にはもう硬い硬い殻で自分を守っていなくても、強く生きていけるような逞しさと自分の生き方への確かな革新のようなものを感じました。トート閣下の歌にあるように「生きる意味をみつけてしまった」がしっくりくるラストシーンでした。
みりおちゃんシシィは〈慈悲〉の人。
表面上はとっても柔らかくてあたたかい。強さとかある種の傲慢さが前面に出ることは決してなくて、目の前の相手を包み込むような大きさが感じられる。
けれども、どこか一線を超えるとそのあたたかさが失われて急に冷たくなるような印象でした。それは、陛下の浮気が発覚したときや精神病院で孤独を実感してしまったとき、ルドルフからすがられたときにすこし垣間見えたような。
どんなに悲しいことがあっても、もう泣き方さえも忘れてしまったからうまく悲しめないんじゃないかなって思ってしまうような、あたたかくて哀しいシシィだったように思います。
ただ、それは対自分についてであって、他者に対してはあたたかな印象を受ける。不思議な感覚でした…!
ニヒリスティックなルキーニ像
現役中から大好きだった宇月颯さん。再び男役のお姿を見られて大感激でした!
としさんのルキーニは、狂気的ではなくてニヒリスティック。
決して狂っているわけではなくて、この世の全てが彼の目にはきっと正常に映っていてそれは我々と全く変わらない見え方、むしろより正確に捉えられてさえいるのではないか、と思わされるお芝居でした。
いい意味で、感情の急な上下がなく、その言い回しわかる!と思うような台詞回し。トート閣下に対しても、盲信的になっているというより、そこに冷静さが見えるんですよね。
新しいルキーニ像、これまでの中でもかなり好きな方だなと思っていたら、最終答弁でナイフを受け取ると一変。それまでの落ち着いた目はどこにいったんですかってくらい急に何もかも見えなくなる、というか見え方が変わってしまったというか。ナイフを手にした瞬間に、彼の持つ狂気が鋭く現れてきていました。視界が急に狭くなってしまう感じ。
としさんの歌唱力・舞台を回す力は現役中から、大好きで仕方がなかったですが、やっぱりこの方のお芝居大好き!と心から思わされました。いつかとしさんルキーニで全編観てみたいです。きっと今までにみたことがないものになる!
圧倒的支配者であり、恋するただの一人の青年
望海さんのトート閣下は、私にはこんな印象でした。
明日海さんとのお写真で改めて思いましたが、確かこれってフルコスチュームではない…はず…なのに望海さんだけフルコスチュームしてて好きです。これは、トート閣下=主演だからなのか、それとも望海さんご本人の強すぎる思いみたいなのが顕在化したのか…後者だったらなんかもう!って感じです。
歴代一、闇を広げる歌声と圧倒的なパワーの振り幅を感じました。基本的に、触れたら一瞬で凍ってしまいそうなくらいの冷たさを感じるんです。でも、一度感情が昂ぶると触れたら燃えてしまうような熱さも感じる。そして、その感情の昂りは一瞬ですーっと引いていく。これもまた新たなトート像ですね…
シシィに「待って!」と声をかけられたときの動揺が凄まじいし、フラれるたびに昂りすぎてしまった感情をどうにかこうにか抑える様子がたまらない。「死ねばいい!」のエネルギーが、この一声で劇場中を包んでしまいそうなほどの大きさで、"トート閣下の力すごい!"と思うと同時に、"望海さん、このセリフ言えて超嬉しいだろうな"と謎目線を発揮しました。
望海さんはルキーニ最高だったから、そっちこそハマり役だろうと勝手に思っていたんですが、トート閣下やらせたら拗らせ度が右に出るものはいないみたいな感じに仕上がりそうで、こちらも最高にハマるだろうなと思いました。全編みられないのが惜しすぎる…!
懐かしの個性豊かな面々
89期推しの私にとっては、まさに89期の方々や付近の期の方ばかりで、楽しすぎる公演でした。
フランツ役の鳳真由さん。
まだ組子の皆さん全然把握できてなかった初観劇の『ME AND MY GIRL』で一度拝見していましたが、きちんと意識しては今回が初でした!
優しさと諦めとが常にせめぎあっているような印象でした。シシィに拒絶されるたびに壊れてしまいそうで。彼女の一言で、多分内側は崩れ落ちてしまっていて、でも皇帝としての義務と戒厳とかそんなものによってかろうじて外側だけは保たれているような。常にギリギリ自分をなんとか保っているようなフランツだったなと思いました。
優しくて切なくてくるしくて、すごく好きなフランツ像でした! ビジュアルも!好きです!!!(強め)
ルドルフ役の七海ひろきさん。
七海さんは、退団後の『舞台刀剣乱舞』や声優をされたアニメ作品、配信番組等を視聴させてもらったりしているので、勝手に身近な感覚があります(笑)
やっぱりこのお方は、「潤いとときめき」を与え続けてくださるのだなあと☺️
まずですね!お衣裳がすんばらしいのですよ。
軍服ぽいジャケットは勿論なんですけど、その中のシャツが罪…ナナメ開襟のジャケットより長めのシャツ。上から下までじゃなくて、下の方にだけボタンがついているデザイン。そしてロングブーツ。
(素晴らしすぎて自分用にmemoでイラスト描いてあるんですけど、ちょっと載せるに値するものではなかった)
えーと現役でしたっけ?と思うほどのばちばちの男役でした。すばら。あのお顔で「パパ」「ママ」はずるいです。
(ひとこと呟きコーナー)
咲希あかねさんの女官さんが怖い。ちゅーちゃん大好きなんですけど、女官怖すぎて泣きました。結婚式翌日の、ゾフィについてシシィの部屋を訪れる場面。ちょいちょい映ってたんですけど、映るたびに表情が怖すぎて。眉がピクって動いたり、「あり得ない!」というような目をしたり。他の女官たちの中でもトップオブ怖いしてました。新卒であの部隊に配属されたら30分ももたない気がする。
終わりに
挨拶で明日海さんがおっしゃっていた「それぞれのエリザベート像」というものがあることをまさに実感させられた公演だなと思いました。
この作品、何度も上演されているし贔屓組でもやったから飽きるほど観たし、なんなら多分一人エリザベートできるけれど、それでも毎回観てみたい!と思わされてしまう奥深い魅力を感じます。
この先、この作品がどんな役者に出会ってどんな化学変化を巻き起こしていくのか楽しみでなりません。
小柳先生が「すべてのお稽古をみていたけれど、舞台稽古と配信公演では全く違った。お客様の思いは届いていますよ。」と仰ってくださっていて、なんだか少し救われたような気持ちになりました。
配信があって、届けられて良かったと皆さんが口々におっしゃっていて、そのシステムに感謝をしながらも、こんなに素晴らしい作品が上演されているのに、あの広い劇場には誰もいないのだとういこと、感動の拍手が届けられないことに、埋めようのない寂しさを感じる公演でもありました。
どんなに技術が発展しても、やっぱり生で観ることには叶わないと思うのです。勿論それぞれ良さはあるし、今のような状況下ではこの技術がある現代だからこそ公演が成り立っているわけだけれども。
どうかはやく安心して、当たり前に公演ができる日が戻りますよう。
なつ。
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