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ゼロクレジットの男(第1話)

世は2020年。
大きな災害、経済の凋落、元号が移りゆく瞬間...幼い頃は身の回りで何が起きているのかすら理解していなかった自分も、多くの出来事を経験しようやく四半世紀を生きた実感が湧いている。

本格的に麻雀に触れたのは2013年秋。
今こそ頻度は激減しているものの、各地域のフリーを巡ると共に仲間内でのセット、見知らぬ方々を交えてのセットなど大学生としての生活後半は多くがその割合を占めていたことも否定できない。
読者の皆様の中にも、実際に筆者と顔を合わせ、時間を過ごしたことがあるという方が多いのではないでしょうか。
(この場を借りて、改めて感謝申し上げます)

そんな筆者の多種多様な麻雀人生の中で、ひときわ目立ち、記憶に強く残る一連の事件があった。
自分自身の振り返りと、記録のために、ここに残していこうと思う。

そのロックな男の名は、あっさじーんさんと言う。

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事前情報

発端はTLに流れる噂だった。

「あっさじーんという面白い人がいる」
「マイティセットなどが好きらしい」

以前から知人を通してこの話を聞いていたボクは実際に一目お会いしてみたいな、と考えた。
また、当時ボクの周囲で流行りつつあった「キティ」というマイティ麻雀が刺激的でもあったため、紹介も兼ねて行おうとしたことも動機のひとつである。

今回の本筋とは逸れるので軽く特徴を挙げる程度に留めるが、キティは萬子の奇数がオールマイティになるだけの4人打ち東南戦ルールである。
三色同順が鳴きでも面前でも4翻なのと萬子の混一色が役満になるのが他にもよく登場する特殊ルールだ。(他にも様々ある)
七対子が無いので油断していると誤ロン倒牌してしまうこともあるかもしれない。リーチ後の見逃しやフリテンリーチ禁止なのでこのあたりもやらかしやすい。

マイティが20枚入っているだけの極めて普通なルールだ。
スピード感がありテクニカルな手組みのバランス取りを楽しめるのも醍醐味なので、「4人麻雀全然テンパらなくてつまらんわ!」とか「3人麻雀なのに俺だけクソ配牌とクソヅモでおもんないわ!」と日々叫んでる人がいたら是非1度チャレンジしてみていただきたい。

具体的なセットの様子を以下に貼っておくので興味出たり詳しいルールが知りたい人は是非話しかけて欲しい。

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これは人和(役満)の瞬間である。東1の1打目でゲームセット。
放銃者は当然ツかないのだが、座っていただけで席順3着の-15を食らうこちらもそれなりにツかない。

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こちらは三暗刻か索子の一気通貫が選べる。お好みでどうぞ。

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これは1打目2軒人和(役満×2)の図である。
打ち込んだ方も清々しいまである。

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役満2つ分という意味ではこっちも印象深い。
天和+萬子混一色のダブル役満。
2着のボクですら飛び。というか自分の手牌は白が浮いてるので一発放銃と裏ドラ分得しているかもしれない。

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スッタン人和(ダブル役満)。
自分で和了しといてなんだがバラバラにしか見えない。しかし64000点である。

真面目に麻雀に取り組んでる皆様がそろそろ眉をひそめそうなので本題に入る。


ASJ1号事件

2016年10月中旬。
ボクは勇気を持ってキティセットのお誘いを入れた。
10月中は調整が難しく、11月10日・11月11日の絞った候補日で先方にOKを貰ったことで面子の募集や場所の選定に注力した。

あっさじーんさん(以下あさ)「良かったら、Wくん(かなでの大学の後輩)を誘ってみてもいいですか?」
かなで(以下かな)「大丈夫です。ただまだ10日にするか11日にするか決まってないのでその旨のお伝えはお願いします。」
あさ「了解しました」

1週間後。

かな「連絡が遅くなりすみません。11日でいかがでしょうか?」
あさ「帰宅後日程を確認します。ところで、お気持ち積載と面子はどうなりましたでしょうか?」

お気持ち積載とは麻雀を嗜む人なら皆が注目するお気持ち表明タイムでの度合いである。一般的に高めに設定すればするほど互いの気持ちが競り合う熱い勝負になりやすい。
事前に10気持ちポイント~20気持ちポイント、どんなにいっても30気持ちポイントで設定することは相談していたが、10気持ちポイントでは面子の募集に苦労するだろうとあっさじーんさんが言っていたので、20気持ちポイントの設定で合意となった。

かな「面子はこちらで1人来れるかも、ということで現在確認中ですがWくんは来れそうでしょうか?」
あさ「20気持ちポイントは高いので無理とのことでしたw」

正直、意外だな、と思った。
Wくんは中々刺激的な生活を送っている後輩で麻雀に関してもガツガツなのでむしろ二つ返事で来てくれると踏んでいたのだ。

かな「わかりました。確認中の子もいるのでとりあえずもう1人募集かけますね。」
あさ「10気持ちポイントなら、Wくんも参加してくれるかも...」
かな「とりあえず20で探してみて、ダメそうなら10で検討してみます。」

個人的には10気持ちポイントは少し渋くはあるが、新しい交流のため。
自分勝手ばかり言うのは男らしくない。
ボクの麻雀サークルの創設者である神芝居先輩も「麻雀は思いやりのゲームだ」と勉強会や検討会の度に口にしていた。

あさ「僕は10気持ちポイントの方が歓迎ですよ(´艸`*)」

Wくんに話を通すこととはあまり関係無さそうな変化球が飛んできた。

かな「ボクの方で確認中の方は20気持ちポイントの方が好ましいそうです。どうしましょうか?」
あさ「それなら、20気持ちポイントで大丈夫です(*´ω`*)」

流石人生の先輩だ。ワガママを押し出した自分が少し恥ずかしくなった。

かな「了解です。募集かけてみますね。」
あさ「よろしくおねがいします。ヤクザが釣れなければいいが(笑)

仮にも自分のセットに合わせて来てくれるかもしれない人に対し随分な言い分である。


翌日。
大学のサークル活動でWくんと顔を合わせる機会があり件のセットを話題に出してみた。

かな「おっ、W久しぶりじゃん。元気?」
Wくん「ウィッス。」
かな「あっさじーんさんからキティの誘い来たじゃん? 1回断っちゃったかもだけど来てくれたら嬉しいんだけど...。」
Wくん「いや、来てないっす。何すかそれ? 完全に初耳っすw」
かな「バケバケのモン」

お気持ち積載どころか声すらかけてないことが判明。突然落とし穴に突き落とされたような衝撃に襲われながら、急遽もう1人来れそうな人を探すことにした。

また1週間が経ち、11月に突入。
何とかサンマ好きの後輩Sくんを誘うことに成功し、目途が立ったところだった。

あさ「面子はどうなりました?」
かな「遅くなってすみません。SくんとP先輩が来てくれます。後ほどグループを作って詳細について共有します。」
あさ「了解です」

幸いにも誘った面子はそこそこ近い地域に住んでおり、場所も決めやすかった。一悶着はあったものの、来週に楽しみができたぞと安堵していた。
...が、そのわずか10分後に驚愕のメッセージが受信された。

あさ「すいません、先程急に11日に仕事が入ってしまいました^^;」

意味が分からない。頭文字Dのドライバーも驚きの急ドリフトっぷりにボクの頭はフリーズした。
「了解」という言葉は「NO」という定義だったのだろうか?
最近国語辞典に滅多に触れていなかったせいかボクの言語能力が下がっているのだろうか?
そもそも、先月から予定を入念に確認してもらった上で進めてきた話だ。
最も理解できない点は、「先程」だ。たった10分の間にそんなことが起きるのか?
というか、「了解」したのであれば元々空白だった時間をキープしたわけなんだから後からの予定を優先するのはおかしくないか?

大量の「?」で脳内が埋め尽くされたせいで気を取り直すのに時間がかかった。とはいえ当時社会人経験皆無なボクだ。社会は理不尽とよく聞くしそんなこともあるのだろうか、と何とか自分を納得させた。
ようやく返信できたのはその日の夜だった。

実際のやりとりがこちらだ。

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こうして、一緒にキティを楽しもうと発案したセットは苦心して組み上げた結果、一瞬で叩きつぶされた。
今回は縁がなかったと割り切り、またいつかお誘いしよう。
そう誓い、「またの機会にお願いします。」と残した。

第2話へ続く...


追記

後に仕事が入って云々の箇所は「完全に嘘」であることが判明した。
当然、本人が「あのときのは嘘でした、ごめんなさい...。」と直接謝罪、

するわけもなく、自身の著書で明かしていた。

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さらには、「仕事という名目で上手く誤魔化せたんだよ」と言わんばかりのpostも見られている。

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こんな大人もいるんだ、と子供心に感じた。
大人になった今、自分がこれからどんな人間として後輩たちに見られていくのだろうと思うと、少し背筋が寒くなった。

成人して、社会に出て、重ねていく年月や経験は「責任」なんだな、と今でも感じている。

第2話→こちら

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かなできゅん
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