発毛及びリングフィットアドベンチャー日記 DAY 7.
吾輩は発毛活動中である。
効果はまだない。
効果があれば毎日でも日記を描くのだが、筋トレも発毛も、中長期的視座で取り組むべきものである。中長期的視座において、この日記が更新されて行くということをお許し願いたい。
リングフィットアドベンチャーによる筋トレで男性ホルモンを活性化する一方、ミノキシジルで発毛を促進するという、マッチポンプ的活動を始めて7日が経った。
スカルプD メディカルミノキのアフィリエイトリンクを貼るのは、発毛が達成された日以降にすると、固く心に誓いはしたものの、果たしてその日は来るのだろうか。
メカニズムを理解することが大切
盲目的にミノキシジルに頼り始めた私ではあるが、「脳死状態で発毛に取り組むなど言語道断。脳死で毛根が活かせるか。」とゴーストが囁いたため、論文を読むことにした。
研究室配属を待たずして大学を中退するという英断を果たした私は、論文を探すスキルもなければ読むスキルもない。google検索で世界を見通すスキルだけは高いと自負しているため、まずはgoogle検索に頼った。
その結果たどり着いたのが以下の論文である。どうやら2002年に書かれたものらしい。
ミノキシジルの発毛作用について - 小友 進 大正製薬(株)特別研究プロジェクト
https://doi.org/10.1254/fpj.119.167
大学を卒業していないので、この論文を参照するのが適切かどうかわからないが、「脳死であることを回避するために、とりあえず論文を読むべき」という考えに基づいて、この論文を読めばいいとする。その意思決定こそが脳死である、という点は横に棄て置く。
この論文によると、男性性脱毛症とは以下のように定義づけられる。
毛髪の長さと太さは主に毛包サイクルの成長期毛包の期間の長さで決まる.成長期は VEGF,FGF-5S,IGF1,KGF 等の細胞成長因子で維持されている.しかし体内時計によって設定された時が満ちれば,FGF-5,thrombospondin,あるいは何らかの未同定の因子により成長期は終了し,毛母細胞にアポトーシスが誘導され退行期へと移行する.男性型脱毛症は遺伝的背景の下に男性ホルモンによって,より早期に成長期が終了する事によっておこる毛包の矮小化である.
つまり、男性ホルモンが、まだ成長期である毛包に対して、「もう大人になりなさい」的な毒親的アプローチをもって早期に成長期を終了せしめ、未熟な毛包が毒親によって矮小化させられる事によって起こるというのだ。毒親は悪だ。そんな毒親のもとに生まれてきた毛包は同情に値する。
そしてこの論文はこう続ける。
ミノキシジルの発毛効果は sulfonylurea receptor(SUR)を作動させ,血管平滑筋 ATP感受性 K チャネル開放による毛組織血流改善,毛乳頭細胞からの VEGF など細胞成長因子の産生促進,ミトコンドリア ATP 感受性 K チャネル開放による毛母細胞アポトーシス抑制,のいずれかを誘起し,成長期期間を延長して,矮小化毛包を改善することによると推察される.
待て待て待て待て、「いずれかを誘起し」「と推察される」ってメカニズム解明されてへんのかい!まるでDeep Learningの世界やないかい。
しかしここはまだAbstract。最後まで読めば解るかも知れないそのメカニズム、諦めるにはまだ早い。
男の夢
この論文によると、ミノキシジルはもともと経口降圧薬(血圧の薬)として開発されていたらしい。バイアグラも元々は降圧薬として開発されていたという。降圧薬には男の夢が詰まっている。
男の夢にもう少し深くアプローチしてみよう。
この図と論文中の記載によると、大事なのは以下の2点だ。
・成長期において毛包(いわゆる"毛根"を取り囲む上皮系組織)が大きくなること -> 毛の太さを実現する
・成長期の期間を長くすること -> 毛の長さを実現する
論文前半では、2つが独立した事象かのように書かれていたが、毛包の大きさは上図における(A):成長期の長さによって決定されると読み解けたため、大切なことは一つ、「毛が成長している期間を長くすること」であると結論づけた。
当たり前である。
当たり前過ぎてぐうの音も出ないと思うかも知れないがそれは違う。
なぜならば、我々は常日頃から、抜け毛を恐れ、抜け毛と戦ってきたはずだ。
しかし抜けることを恐れる必要はないのだ。生きとし生ける物はいつか死ぬように、毛もいつか抜ける。抜けた後にはまた新たな毛が生えてくる。その毛が、「満足に成長することが出来ないまま一生を終える」という事実こそが戦う相手なのである。
長くなってしまったが、要は成長期の毛をちゃんと見守りましょうねという話なのである。「早く大人になりなさい」とか、「あなたはこうあるべきだ」というようなMUSTを押し付ける育て方は、決してしてはいけない。毒親ダメ、ゼッタイ。
だとすると、我らがミノキシジルはどのようなアプローチで寄与してくれるのか、そこを知る事こそが、脳死からの脱出である。ワクワクしながら読み進めてみた。
Kurata ら(20)はアミノグリコシド系抗生物質を使わない培養系でベニガオサルの毛組織細胞を培養しミノキシジルが毛細胞特異的増殖作用を示すことと,種々の非毛組織細胞に対しては逆に弱い細胞増殖の抑制作用を示すことを証明した.このミノキシジルの細胞増殖促進作用の毛組織特異性の理由は現在不明のままである
よくわからんけど、毛細胞が増えることには寄与するよってことですね、よくわからんけど。しかし、ここまで論文を読み進めてきた私にも解ることがある。毛細胞増殖もさることながら、大切なのは毛母細胞アポトーシスの抑制による成長期の延長のほうが大切であると。
成長期毛包が退行期に移行するのは上皮系の毛組織に TGFβによって起こるアポトーシスによると考えられている(3).したがってミノキシジルは毛母細胞など上皮系毛組織細胞のミトコンドリア KATP を開放してアポトーシスを抑制し,発毛効果を示すものと推定される.
完全に理解した。
ミノキシジルは、毛母細胞など上皮系組織細胞のミトコンドリアKATPを開放するのである。それはアポトーシスを抑制する。つまり、成長期が伸びて、毛も、毛包も大きくなるのだ。
ここで考慮しなければならないのは、この論文が2002年に書かれたものだと言う事実である。2002年からすでに18年が経過している。この論文と同じ年に生まれた子供はアダルトビデオを借りれるようになっているし、選挙権だってある。
もっと研究は進んでいるはずで、ここで不明とされている作用メカニズムも解明されているかも知れない。知的好奇心というものは沼である・・・
そして、この論文中には非常に大切なことが書かれていた。
ミノキシジルの発毛作用作は直接の男性ホルモン様作用,抗男性ホルモン作用に因るものではない.
これが真実だとするのであれば、友人が私に警告した、「性欲減退リスクを取るのだな」という脅しは荒唐無稽ということになる。この情報を得られただけでも非常に大きな収穫であったと言えよう。
男性ホルモンの分泌を促し得る筋トレをしながら、他方で発毛剤を使うという行動は確かにマッチポンプ的かも知れない。
しかし、本質的作用機構の面においては、マッチポンプではなかったと安堵できたことは、今後の発毛活動における大きな励みとなった。