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2023−11-14 メドレー FY23-Q3 決算コメント

はじめに

ワシントン州の秋も色づき、今年も残すところ1ヶ月半となりましたが、今回は最初の投稿の通り、決算説明会でお伝えするようなことを掲載します。

当社の決算説明会では、CFOの河原が決算説明資料に沿って説明を行い、私は本投稿のような発言と質疑応答を担当しています。企業規模拡大による投資家層の変化も踏まえ、来期以降の決算説明会ではCFOパートも含めて正式な書き起こし(日/英)を行うことを検討していますので、今後の決算関連のnoteの方針は未定です。本投稿は、メドレーを応援いただいている長期投資家の皆様、メドレーへの入社を検討している皆様に推奨します。


決算コメント

本日、株式会社メドレーは、23年度第3四半期決算を発表しました。Q3の売上高は前年同期比39%増、EBITDAマージンは6%となり、先日の上方修正した業績予想を上回る推移をしています。顧客事業所数及びARPUも引き続き堅調です。

FY23-Q3 決算説明資料より抜粋。当社はストック性のある事業(継続的な需要が見込まれる領域)を好み、顧客事業所数の最大化とARPU改善を基本方針としています

人材PF事業セグメント

Q3の人材系PFは、前年同期比47%の増収と、引き続き堅調です。USでの最初の事業であるJobleyは、将来的に日本のジョブメドレーを規模の面で上回る可能性を持っています。Jobleyは業務効率を改善した後に大きく投資する方針で、現在はオフショア拠点の詳細検討をしています。US事業に関するよくある質問については、2023−10-14 海外展開に関するFAQs をご参照ください。

こんなポジションの強化がしたい(人材PF)
データ関連職:データを用いたプロダクト/事業の改善機会が一層増えていく。グローバルな事業展開では、地域間のユーザ体験やオペレーション効率を比較する機会も増えていく
プロダクト/事業責任者:来期も挑戦機会が増えていく
セールス:成果を出しながらプロダクトを磨くことにも貢献できる方は慢性的に不足。セールス自体がオンライン研修事業が特に足りていない。増えれば+20%程成長率出せる
英語人材:ほぼ全ての職種で、英語/日本語がほぼネイティブの方を若干名求めている。東南アジア勤務はもちろん、日本勤務の方も募集している。部門レベルでの意見交換の機会を積極的に作り出したい

医療PF事業セグメント

FY22通期決算において、医療PF事業セグメントの経営方針として「利益ある成長」へ向かうことを報告しました。上期の業績超過を踏まえ、下期は成長率を鈍化させ、売上総利益改善策(後述の「CLINICSカルテのサーバーコスト削減)の山場に取り組んでいます。その結果、前年同期比21%の増収に留まりましたが、FY24-Q1より成長率の改善を予定しています。

また、医療PF事業では、エイチームウェルネス社が運営する「ラルーン」を2024年2月1日付で承継することを発表しました。短期的な業績への影響は軽微ですが、多くのユーザーに愛されているサービスですので、中長期的には、女性向け医療を提供する医療機関と生活者との強い結びつきへの貢献を見込みます。
生物学上の両親の遺伝子調査による先天性疾患のスクリーニングや、性別選択など、国内外の妊娠分野は技術的には進化しています。
これは妊娠分野に関係なく言えることですが、各地域で受けられる医療(制度や標準治療)は地域の人々が持つ死生観や医療資源に左右されるため、技術的に可能なことがその地域で受けられるとは限りません。私は世界中の人々が世界中の医療を使いこなせるような世界を望んでいます。

上場時の成長可能性説明資料より抜粋

本投稿を読んでいる方の中に、CLINICSアプリをお使い頂いたことがある方はいるでしょうか。CLINICSアプリを始めた際はオンライン診療のみのアプリでしたが、継続的な改良を重ね、オンライン服薬指導、対面診療の予約、お薬手帳などを一元管理できる医療アプリへと進化しています。FY24も実用的な機能アップデートを計画しており、最高の医療活用サービスを目指してまいりますので、応援頂けると幸いです。
これらは、インターネット企業として医療機関向けSaaSを広めてきた当社ならではの提供価値です。今後もSaaS接点を活かし、これまでになかった価値を創造していきます。

こんなポジションの強化がしたい(医療PF)
プロダクト/事業責任者:CLINICSアプリや今後展開していくラルーンなど、「実用的なBtoC」の領域で幅広く募集している。SaaS領域も機会がある
セールス:特に有床病院向けのプロダクトのセールスを補強したい。業界知識がある方は勿論、特定領域の専門性を身につけたい方の応募も歓迎

CLINICSカルテのサーバーコスト削減

前述の売上総利益改善策について、決算説明会後のnoteですので、まずは業績影響の観点からご説明します。下の図を見てお分かりのように、CLINICSカルテは売上高に占めるサーバーコストの割合が約30%と、一般的なSaaSと比較して突出していますが、要因はレセプト・コンピューター(レセコン)によるものです。このサーバーコストは、今回の施策が完了すると5%程度にスリム化されます。
売上の25%に相当するコスト削減は、そのビジネスにとってGame-Changerです。これは単に利益が増えるだけでなく、さらに安い価格を提供したり、顧客獲得コストに充てたりすることができることを意味します。
また、これまではシステムの構成上、医療機関ごとに環境を用意するコストが高く、他社のような無料トライアルが困難でした。複数のプロダクトを比較した場合にCLINICSカルテの優位性をご理解いただける開業医が大勢いることは、これまでの商談から確信しています。来期以降はCLINICSカルテの普及を加速させていきたいと考えています。

FY23-Q3 決算説明資料より抜粋

最初のパートナーに選んだレセコン

地味な話をします。当社では、2016年からオンライン診療システムの提供を開始しました。医療機関がオンライン診療を業務に取り入れることで、今までになかった患者との接点がオンライン上に生まれます。そのような時代に、医療機関がより効率的に業務を行えるよう、「患者とつながるカルテ」を作ろうと考えました。
医師は診療中や診療後にカルテに情報を入力します。そのカルテ情報をもとに、主に医療事務が診療報酬を算定します。そのためのシステムがレセコンです。
当時は、開発期間短縮のため、サードパーティのレセコンを採用することにしました。いくつかの選択肢の中から、ORCAというオープンソースソフトウェアを採用することにしました。サードパーティのレセコンを使いながらも、カルテとレセコンの連携を工夫し、カルテを入力すれば自動的に診療報酬が算出されるUXを目指しました。

新たなレセコン開発のきっかけ

ORCAのオープンソースは、COBOLで開発され、2002年から提供されています。しかし、レセコンという特殊性から開発者が少なく、島根県のNaCl社が大部分を担っていました。(NaCl社は、Ruby言語開発者であるMatzさんをはじめ、凄腕のコミッターがいることで有名です)
2018年、私はNaCl社の井上会長(現同社顧問、OSS-Vision代表)から相談を受けました。相談内容は、NaCl社のORCA開発体制が、他のCOBOL開発動向と同様、開発チームの高齢化という課題を抱えており、早急なシステムの刷新が不可欠というものでした。
ORCA開発には、COBOLに象徴されるように、現在一般的なシステム開発で使われている技術(フレームワーク / 自動テスト / バージョン管理 など)を活用することが困難でした。我々は、NaCl社と一緒に関係各社へリニューアルのための協業を提案しましたが、その時点で投資判断いただける企業や団体は見つけることはできませんでした。2018年、当社は今より遥かに小さく、実力も信頼も不足していました。
当社は長期的な視点で、ミッションと産業界での卓越した成果の両立を目指していますが、上場申請期にコスト先行となる決断をすることは大きな挑戦でした。投資家への相談も含めた検討の結果、持続可能でスリムなレセコンを作ることは社会に必要であり、当社の顧客にも新たな価値を提供できることに繋がると考えたため、上場前後のP/Lを痛めることを受け入れ、開発投資を決断しました。
2019年に島根県松江市のNaCl社の医療チームがグループに加わり(後に合併)、メドレーからもメンバーを補強して開発を進めてきました。複数年に渡るレセコン開発を経て、実用レベルに達したものが「SRIM」です。ユーザー移行は機能のリリースに合わせて段階的に進めていく予定です。今後、メドレーのnoteでもプロダクト/事業サイドからの補足がある予定ですので、よろしければフォローをお願いします。

松江チームと初参戦した2022年の松江市民レガッタの写真です。同年は入賞を逃しましたが、今年は3位入賞することができました!

おわりに

レガッタで着実にタイムを縮めているメドレー勢ですが、後発ながらクラウド電子カルテ市場でも善戦しています。現段階のシェアはおそらく2番手でしょう。安全にサービスを提供できる限り、事業の推進は早いに越したことはありませんが、焦る必要はありません。たとえ時間がかかっても、最も多くの顧客に選ばれるプロダクトを作り、最も普及させたいと思っています。

こんなポジションの強化がしたい(コーポレート)
採用:ハイレイヤー採用を強化したい。採用責任者と経営陣等で何とかしている状況であり、毎月募集ポジションが膨らんでいく…
人事企画:今期は強化が進んだものの、全社影響が大きいポジションであるため、観察力/思考力重視の採用。このポジションはビジネスレベルの英語力も必要

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