WEBディレクターズガイド#10&11「テストアップ・修正」
まえがき
6月にスタートしたWEBディレクターズガイドもようやく10回目となりました。ヒアリングからプレゼン、受注、設計・デザイン、コンテンツ整備、デバッグと書いてきましたが、今回はテストアップ・修正の回になります。
もちろんここまでの工程で、随時お客様とは打ち合わせを重ねて作業スコープや仕様などを握り合った上で進むのですが、ディレクターズガイドではあまりその辺りには触れず、どちらかというと各工程でWEBディレクターとして抑えておくべきポイントにフォーカスを当てて書いてきました。
もちろん、WEB制作工程においてディレクターが留意すべきポイントを届ける連載なので主目的は外していないのですが、まだここに行きつくまでの工程ではプロと見込んで発注をしているお客様はどちらかというと「きちんと進んでいるかどうか?」に意識が行っていることが多く、進捗とスケジュールがずれていないか?の方を重視しているケースが多いのではないでしょうか?つまりは社内や上司に対する報告材料がきちんと手元に届いていれば大きな支障はない段階であると言い換えることが出来なくもないです。
ですが、この工程辺りからお客様との人間模様が本格的に始まってくる頃になるかと思います。今回は、その辺りも交えお届けしていきたいと思います。
では本題です。
テストアップとは「予め設定した開発領域にコンテンツがアップされた状態で、仕上がりをお客様に確認して頂く工程です。サイト規模によりテストアップの回数を分けるケースも多いです。」
定義的な書き方をするとこういう事になります。公開前に、WEBサイトの仕上がりを確認する工程です。以前プロトタイプの回を書きましたが、あれはまだ試作品、印刷でいうところのサンプルに近い状態です。なので粒度も様々ですが、今回は校正、色校の段階になります。
つまりお客様側に、これでOKを出せば、業者はこのサイトを公開してしまう。という意識が初めて芽生えると言っても過言ではないのです。
そうなってくると大体のお客様は目の色が変わってきます。自分の返答一つで会社に影響が出る、と良くも悪くも実感値が伴ってくるのです。
ちょっと特殊なケースですが2つほど経験談を紹介します。
こんなことがありましたケース①「コンテンツ」
とある大学のサイトをリニューアルで作っていた時の事でした。このガイドでお伝えしてきた通り、仕様を組んで、要件定義もやって、都度打ち合わせして確認を取ったうえで進めてきていました。原稿もこれ使います、デザインについてもフィックスし、CMSも組みつつテストアップを1回、2回…と行い公開が1か月前に近づいてきた頃。
「大学サイトのコンテンツを今作ってる今年度の大学案内の内容に書き換えるから修正。」
…え?となり、とりあえずそうですか(工程巻き戻しか…これは追加費用が要るな…orz)…と返答し、公開日には間に合わない事と追加費用の話もこちらからさせて頂いたところ…
「公開日は絶対にずらさせない。お金もダメ。」
ある種ちょっと○○○っぽいことを言い始め、「一緒にやってるんだから大学の人間と思ってやんなさい」とある種無理が通れば道理が引っ込む、みたいな状態になりまして、結局重ねて説明することで何とか、こちらの要求は承諾いただけた。と言うことがありました。
ですが、こちらの要望を聞いた営業担当が金曜の15時に会社を出たはいいけれど、待てど暮らせど戻ってこず、電話をしてもつながらない状態の中、翌0時に半泣きになりながら電話をかけてきて「まだ大学…帰らせてくれないんだ…た、助けて…」と半分監禁に近い状態だったこともあったりで、もうお客様の本気というかその辺りの熱を思いっきり感じた事がありました。
ただ、ここで非常にありがたかったのは、コンセプトをブラしたり自分たちの気分でデザインがどうこう言わず、中身(コンテンツ)に徹底的に焦点を絞っていたことでした。この本気度であったからにはこちらもある程度の覚悟を決めてダメージが最小限になるよう、当たったという事例でした。
いくら事前に詰めていても、実体がないのでなかなかイメージが沸きづらいんだなと改めて感じました。
こんなことがありましたケース②「仕様変更」
WEBシステムなどが絡む案件ですと、必ずと言っていいほど当たる壁が仕様変更です。これは仕様変更を受け入れるという事ではなく、仕様変更に関わる要求が出てくるという意味です。
中にはわかっているけどわからないふりをして、仕様変更にかかわる要求をしてくるお客様もいたりなど、このフェーズになってくるとどんどん人間の本性が明らかになってきたりで一つのドラマが生まれたりします。
まだ直のお客様であれば、あらかじめ打ち合わせの内容なども把握した上で望むことができるのでいいのですが、商流的に代理店的な会社を挟んでいる場合、突如として予告なく打ち合わせで要求されたりするケースもあります。
そんなとき、便利そうではありますがリスク大なセリフが「技術的には可能です」。これにつきるかと思います。こちらとしては、技術的には可能だけど、出来るとは言ってない。。ですが、そこで技術的な説明をしても通じるわけがない。。。そんな時つい口に出そう…なんですが、エンド様+代理店担当者の耳には「可能です」だけが残るのです。
これは後で「できるっていったじゃないですかあー!」「いや、技術的には可能だとしか言ってません」みたいな押し問答になります。(あとタチが悪いのが「もうお客さんに出来るって言っちゃったからなんとかして」みたいな事ですね)
なので、どれだけ無言の、第三者的な、圧力をかけられたとしてもここは「技術担当に確認させてください」と言い張ることが正解なんだなと思います。そうなると「いつ分かりますか」「いつ分かりますか」「いつ分かりますか」…のつぶてになってきますが、その場で可能といってしまうよりよっぽどいいので、ある種強引にでも持ち帰りましょう。
持ち帰れさえれば、周りに相談したり、上司に掛け合ったり色々な対策が取れます。ある種、ベテランであろうと、新米であろうと、お客様の前に出ている以上、自分の口が会社の口であることを意識することが大切かなと思います。
つまるところは
予めお客様との間でしっかりと合意が出来ているか?フェーズごとに定義ドキュメント(エビデンス)が提出されているかどうか?これに尽きるのです。なので、前半に曖昧さが残っているとどこかでその曖昧さのツケが回ってくるので、具体的に取り決めをしておきましょうという話でした。
ただ、お互い信頼関係で仕事をしているところもあるので、飲める要求は飲みつつ、持ちつ持たれつでやっていく事(そうお客様に思わせる事)もディレクターとしては大事なことかと思います。
次回は#12「ユーザーテスト&調整」に関して書いていきます!主に公開する前の短期的な評価の話になります。
ありがとうございました!