
フリアン・アラウホはFCバルセロナに何をもたらし、彼の移籍はLAギャラクシーにとってどんな意味を持つのか
「ヨーロッパに行くことを心に決めている」昨年フリアン・アラウホがそう発言した。
ミッション完了。しかし、簡単にはいかなかった。
1月の移籍期限から18秒契約関連書類の提出が遅れた事で2週間以上いざこざが続いたが、21歳の右サイドバックはようやくFCバルセロナへの移籍が許された。この移籍でLAギャラクシーはクラブ史上最高の移籍金の$400万を手にしたこととなる。
しかし、アラウホの移籍が移籍市場が閉鎖してから成立したこともあり、彼は次の移籍ウィンドウが開くまで登録されない。どちらにせよ、アラウホはトップチームに帯同するまではバルセロナBとトレーニングをすると、現バルセロナB
監督を務めるラファ・マルケスが伝えたようだ。
色々と難しい状況は続くが、それでも元ギャラクシー時代のチームメイトのサシャ・クリエスタンは、ツイッターで、この移籍はアラウホにとって「一生に1度の出来事」とつぶやいている。ギャラクシーにとっても、高い移籍金を手にしたうえに、U22枠を空けられたので、とても良い移籍となった。
では、アラウホはスペインに何をもたらすだろう?なぜFCバルセロナは彼を獲得したかったのか?そして、LAギャラクシーはこの後どうなるだろうか?
細かく見ていこう。
フリアン・アラウホとは何者?
アラウホはバックラインの右サイドの複数ポジションをこなせる。ギャラクシーでは、4バックのサイドバックや3バックのウィングバックとして活躍した。現監督のグレッグ・バニーが就任する前はウィングでも使われたが、彼のベストポジションではないことがわかった。
メキシコ人であるアラウホは、メキシコ代表で3試合に出場している。当時代表監督であった、タタ・マルティーノに招集され、初めてメキシコ代表としてプレイする前に、2020年12月にはアメリカ代表として、エルサルバドルとの親善試合に出場している。最終的には、メキシコ代表としてプレイをすることを選んだ訳だ。
クラブでは、2019年にLAギャラクシーでのデビューを飾っている。2020年にはチームのレギュラーメンバーになり、以来、右サイドを上下動し、相手のチャンスを潰す姿はMLSで知れ渡り、2度のオールスターメンバーに選出されている。
どのようなプレイをする?
右サイドから攻撃する経験を十分に持ちながらも、彼の特徴はディフェンスだ。積極的で力強く、1対1を好む選手だ。アメリカの分析レポートによると、2022年の彼は、タックルやブロック、インターセプト、リカバリー、ヘディングなどのプレイを中断させるアクションで、自身の価値を見出したとのこと。
穴が無いディフェンダーではないが、MLSではたくさんの印象的なプレイを見せてくれた。例えば、2022年8月に行われたトロントFCとの一戦でロレンツォ・インシーニェとの場面だ。
イタリア代表アタッカーが左サイドでボールを受けるとすぐさまアラウホは距離を詰める。元ナポリのスターが中に切れ込むことを好む事を知っていたアラウホは、彼を左サイドのタッチライン際に追いやる。インシーニェもスペースを探そうとするが、距離を離せず、最終的にコーナーフラッグ付近でアラウホがボールを奪い取る形となった。
アラウホは戦うこともでき、足の技術も備えているが、凄まじいスピードも持っている。セカンド・スペクトラムによると、彼は最高時速ではMLSで上から33番目に位置しており、上位5%に入る強者だ。このスピードがあるため、守備で舞い戻り、攻撃ではサイドを駆け上がることができる。
そして、彼には素晴らしい右足がある。
彼はそこまでピッチ中央に入ってボールに絡むわけではない。しかし、攻める際はファイナルサードに侵入し、チャンスを作る。FBrefによると、アラウホは2022シーズンのMLSに在籍するサイドバックでは、90分間でのアシストの数はリーグの上位18%、90分間でのアシスト期待値は21%以内のパフォーマンスを発揮していたとのこと。ペナルティエリア内へのクロスの数では上位20%に入っていた。
そのクロスこそが、アラウホをMLSでも目立った存在にしたといえるだろう。以下に紹介する、チチャリートに合わせた完璧なクロスも、オースティンFC相手に止めのゴールへのアシストとなっている。
You knew he was gonna get on the scoreboard.@CH14_ scores his 7th (!) of 2021 💚🖤 pic.twitter.com/FilTYvQm1K
— LA Galaxy (@LAGalaxy) May 15, 2021
まだボールを持っている時とオフザボールの動きに改善の余地はあるが、彼のスキルとポテンシャルは否定しようがない。
彼を例えるなら誰?
アラウホのプレイはヨーロッパで活躍する多くのサイドバックから見ることができる。その中でもわかりやすい例えはチェルシーのリース・ジェームズだろう。
ジェームズの方が1対1で仕掛けることは多いだろうが、2人ともスピードがあり、右サイドで複数ポジションがこなせ、パスやチャンスメイクの数値が似通っている。ジェームズは3バック時には右センターバックもできるが、アラウホもそのポジションで問題なく活躍できるだろう。アラウホはまだジェームズのように1人で試合の流れを変えられないかもしれないが、いくつか重なる要素はあるということだ。
アラウホがファイナルサード以外でボールを持った時により脅威になることができれば、バックラインの右サイドでまた一つレベルを上げることができるだろう。
次のステップは?
アラウホにとって、答えはシンプルだ。バルセロナBでハードワークをし、夏の登録期限までに、FCバルセロナのコーチ陣にいい印象を残すことだ。簡単なことではない。バルセロナにはたくさん守備の名手がいるが、トレーニングを怠らず、自身を分析していけば、上達は間違いないだろう。
バルサにとって、今できることはあまりない。アラウホは、来シーズンUEFAチャンピオンズリーグ、コパ・デル・レイ、そしてラ・リーガを戦うシャビのチームにとって一つのオプションとなることだろう。何より、彼が完全に環境に順応するまで焦って彼を使うことはないだろう。
LAギャラクシー
LAギャラクシーにとって、アラウホやバルサほどことは明確ではない。
アラウホは今月25日に開幕するMLSレギュラーシーズンにおいて、右サイドのスタメンを張ることがほぼ確定していた。ケルビン・リールダムがチームに残っている唯一のサイドバックだが、この32歳はスタメンになるために加えられた訳でもないだろう。マルティン・カセレスも右サイドバックを試したことはあるが、彼は昨シーズン加入して以来、センターバックとして力を発揮している。
最もロジカルなのはギャラクシーが移籍市場が閉じる前に、レギュラークラスの右サイドバックを獲得することだ。そのウィンドウは4月24日まで開いており、2019年の移籍をめぐって処分を受けているLAは、夏の市場で海外からの選手と契約ができない。
ギャラクシーがどのようにこの穴を埋めるのかが興味深い。そして、ロースターが柔軟に構成できることをどのように活かすのか。右サイドの候補を探しつつ、アラウホのスペインでの活躍は常にモニターすることになるだろう。