「Back To The Future」の憂鬱
BSで「Back To The Future」を放送していた。
言わずと知れた80年代SFコメディーの代表作ともいえる一本だ
この作品には、主人公役を務めるマイケル・J・フォックスが、クライマックスでチャック・ベリーの「Johnny B.Goode」をプレーするシーンがある
この映画の大きな見どころの一つであるシーン。これまで何度見ただろうか
ところがなぜか、今日このシーンを見て泣けてきた
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80年代、マイケルは僕らの憧れの一人だった
トム・クルーズなんかの「完全無欠」なイケメンに対して
カッコイイけどどこか抜けているところがあって、何でも自信たっぷりに語るけど
どこかに弱いところがある。ユーモアもあって、思いやりもある
この「Back To The Future」もそうだし、「摩天楼はバラ色に」もそうだった
人気だったドラマ「ファミリー・タイズ」だってそうだった
彼の演じた役柄が披露するユーモア、苦悩、そして最後には成功する姿
その彼の姿を見て、僕らは「マイケルになりたい」と思った
そう思っている自分の心の内には、どこかに何か光っているところがある気がした
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映画でギターを荒々しくかき鳴らし高らかに歌う姿は、まさしくあの時の輝きの源流だった
だけどその後、彼はさまざまな困難に直面した。最も大きなものは病気だったか
そして昨年2020年、彼は自身の回顧録で俳優業引退を宣言した
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その意味で、今日見たあのマイケルのシーンは、今まで見たあの場面とは何か違う気持ちになった
彼の輝きは、何物にも屈しない魅力があると思っていた
夢から現実に引き戻されたということなのか
あの時彼に猛烈に魅かれた、あの気持ちはいったい何だったのだろうか。
未来を強烈に輝かせてくれる希望を見せてくれたあのシーン
いや、あれは単なる幻影ではなかったはず。あの時からこれまで、そしてこれからまだ生きていく自分には、何か必要なものだったんじゃないか
それが何か、結局見いだせずに今もこうして生きている
何か自分を大きく動かした、だけど結局自分を同じような道には引っ張っていってくれなかった
マイケルがこの世界から去ったという事実と、対照的に永遠に生き続ける映像
その一方で僕は諦めの気持ち、そして諦めきれない気持ちのはざまに、未だに立っている。