銃・病原菌・鉄(Guns, Germs, and Steel)

著者:ジャレド・ダイアモンド カリフォルニア大学 社会科学部地理学科 教授。進化生物学者、生理学者、生物地理学者、ノンフィクション作家。


:ピューリッツァー賞やコスモス国際賞など受賞した名作(人類史)

:ヨーロッパの人たちは何故南北アメリカやオーストラリアなど植民地支配できたのか?また、ユーラシア大陸民族(ヨーロッパ人)が富と権力を支配している一方で支配された側は政治的にも経済的にも平等とは言えない状況です。なぜ、このような不平等が起きたのか?突き詰めると必ず”遺伝的な優劣”という主張がある(人種差別)

:”民族間に生物的な差は無い”と述べているのが著者のダイヤモンド教授。そして、教授は上記両者を分けた原因は3つあると主張 - ヨーロッパ人は銃(テクノロジー)、病原菌(医療)、鉄(資本) だと。但し、ここでミステリーは、なぜヨーロッパ人は上記3つの兵器を持っていたのか?である。

:15世紀に入って人類の生活が変わった→ 大航海時代:征服者(コンキスタドール) コロンブス、コルテス、ピサロ を突き動かしたのは3G(Glory, Gospel, Gold)だと。アステカ帝国やインカ帝国を亡ぼした原因の1つは病原菌。天然痘などへの免疫が無い。生物兵器。ピサロ(旧大陸代表)とインカ帝国の皇帝アタワルパ(新大陸代表)がペルーのカハマルカ高原地帯で衝突。 1532年に168人のスペイン人が8万人にも及ぶインカ帝国に挑む。700年以上もヨーロッパで闘い続け世界でも最新鋭の武器を持った最強のスペイン軍側で死者はゼロだったと。一方でインカ帝国軍は1日で7,000人が戦死したと。

ヨーロッパ人の勝利を決定づけたのは、銃と病原菌と鉄の3つの兵器を持っていたから。但し、著者が主張したいのは、圧倒的な兵力の差を伝えたいのでなく、”なぜ”3つの圧倒的な兵器を持ち合わせるようになったのか歴史を振り返り、地理的な観点から経緯を分析・解説している。

:ユーラシア大陸の優位性

>病原菌:家畜が多い(地球上に200万種に及ぶ生物がいるが家畜化されたのは14種類のみ。 草食の大型哺乳類のみ。生後1~2年で繁殖する生産性の高い動物。社会性も必要。群れの中に序列をつくるのが良い。そして人間に慣れるかどうか。14種類中13種類はユーラシア。主要は牛・豚・馬・羊・山羊。一方で南米はラマ・アルパカのみ)農耕が発達しやすい。植物が多い。→ 病原菌と免疫が育つ環境

>中東の三日月地帯で生まれた農業は同じ緯度の東西に広がる→ エジプトやギリシャ 豊かで安定した食料供給が、芸術家や発明家を支えた。現在のアメリカも食料と家畜に豊富(富と権力は牛と麦がから生まれたと言っても過言でないと)

>高度な技術の発展(技術・情報の伝播)

:人口の多さ。東西に延びた横長の大陸。緯度に差がないから気象状況が同じ。家畜や植物の拡散が容易。食料生産力の向上。故に農民以外の産業を政治活動や武器製造などにリソースを使えるし文字の発達により拡散も容易となる。

:結論は、環境の違いが両者の違いを生んだ。ダイアモンド教授は、思い込みや不確かな二次情報で間違った人生を過ごしてもらいたくないとの本心から本書を仕上げました。”多様性への免疫”造りの本です。世代・人種・性差・宗教・価値観・働き方など多様化する世の中で、自分と他者の違いをウイルスと思わずに多角的に観察し判断し行動に移していこうとの主張です。


<自分の気づきなど>

:地理的な条件の違いにより文明の違いが生まれたとなると、その違い、つまりアービトラージを見つけて資金や技術で解決すれば、持たざる国や地域に富や権力をつくってあげることが可能でないか?

:太陽光発電による分散電源により分散されたコミュニティーに力を与える(都市部への人口集中を分散させる。インフラ整備は極力抑える。もしくはリープフロッグにより資本の効率化)→ 安定的な配水・浄水が可能→農作物や家畜の安定→農業に偏っている(現在は例えばSab Safarian Africa地域では人口の60%がGDP30%の農業に従事)労働力を他産業にシフトできる。例えば製造や輸送やIT産業だろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?