清華大生が見た最先端社会、中国のリアル(夏目英男・著)
<< 著者 夏目英男>>
1995年7月20日生まれ。東京生まれ、北京育ち。中国現地の高校卒。2013年清華大学に進学。2017年清華大学法学院及び経済管理学院(ダブルディグリー)卒業。中国の若者トレンドやチャイナテックについての記事を「日経クロストレンド」などのメディアにて多数執筆。
<< 本の概要 >>
今や世界第二位の GDPを誇り、AIなど最先端テクノロジー分野でも存在感を増す中国。それだけではなく、ECやモバイル決済、アプリによる配車サービスやシェアサイクル、フードデリバリーなどの普及でも大きく世界に先行している。本書はそんな中国の若者のリアルな「今」を、中国生活 19年目で自身も20代の著者が詳しく解説した一冊。
<< 本書からの抜粋>>
:中国と日本は近年、政治・経済レベルでの交流が活発化している。文化・地理的にも近い。中国人は日本文化特にサブカルチャーが大好き。英語に継ぐ第二外国語は日本語。日本人は中国を(中国人が日本を学んでいるほど)真剣に学んでいない。メディア等が日本国民にバイアスある情報操作。
:中国思想家・梁啓超氏の少年中国説での散文:“少年智則国智、少年富則国富、少年強則国強、少年独立則国独立、少年自由則国自由、少年進歩則国進歩”という言葉があり、直訳すると“若者が賢ければ国も賢く、若者が裕福であれば国も裕福、若者が強ければ国も強く、若者が自立すれば国も自立し、若者が自由であれば国も自由、若者が進歩すれば国も進歩する”。若者は国の未来の縮図であり、今後の社会を背負う人々です。筆者は中国で生活をする中、中国人学生と共に学びを進め、彼らの背中から多くの物事を学んできました。
:80後(バーリンホウ、1980年代に生まれた世代)や「90後」(ジウリンホウ、1990年代に生まれた世代)「00後」(リンリンホウ) など中国でシンプルに生まれた十年紀により世代を名付けている。「80後」に生まれた若者は、他の世代に比べて、多くの社会変化を経験しています。1977年の鄧小平による文化大革命により中国の高等教育が一斉再開。1982年に一人っ子政策。が打ち出され、「80後」以降に生まれた世代は原則すべて一人っ子となりました。「90後」は上記の「80後」が経験した波乱万丈の時代が一段落した後の世代。改革開放の恩恵を一番に受けている世代。計画経済から市場経済(社会主義市場経済体制)への転換が1993年に実施。「00後」はデジタル社会と共に成長してきた世代。国への信頼も厚く最も理性的な世代。
:「四つの現代化」は、工業・農業・国防・科学技術の現代化。鄧小平は1978年に最も重要な現代化は科学技術であり”科学技術が第一生産力である”と述べている。
:アリババは中央集権型で、テンセントは連邦分散型。
:チャイナユースが目指す211(21世紀までに100の大学でレベルアップ)、985(1998年5月に定めた国家教育プロジェクト)と双一流(世界一流の大学と学科建設の国家教育プロジェクト)
:清華大学は2020年のQS世界大学ランキングで16位、US News大学ランキングの工科系大学ではMITをおさえて世界一位となった。ブラックストーンCEOのスティーブン・シュワルツマンが私財を投じて大学院設立。
:清華大学はキャンパスが一つの街。面積は東京ドーム84個分の面積に匹敵する393.4万M3
:2018年のアメリカ大学での博士号の取得者数は、日本が117人に対して中国人は6,182人。海外の現状を知り世界と切磋琢磨した海亀たちは中国のエリートとなり中国の本土で国の発展に寄与している。
:日本が平均点教育に対して中国は成績偏重主義のエリート教育。鄧小平の先富論”一部の人、一部の地域が先に豊かになれ”の影響もあり大都市と地方農村部で教育環境や教育の質の格差が拡大した。それ故に近年ではEdTechにより教育格差が埋まる方向にある。
<< 私の所感>>
未来の国力となる若手に高等教育を与える中国の寛大さと、それに伴う教育ビジネスのスピード・スケール・テクノロジーには感銘を受けると共に私の祖国である日本に危機感を感じました。”海亀”が中国本土に戻り活躍しているということは、中国もしくは中国人自身も海外の大学や大学院と比較して本国の教育が劣っていることを未だに認識しているのでしょうが、今この時点で起きているEduTechや海亀が獲得しているグローバルな人材ネットワークを活用して中国が更に発展し続けることは否めない気がします。逆に日本人はマスメディアなどフィルターの掛かった情報を鵜呑みにせず隣国で行われている進化・発展している教育を見習うべきなのでは?コロナ禍により加速して実施するべきです。