吹奏楽でポップスをやるときのエレキベース
もういいかな?先日雑誌に文章を掲載していただいたんですが、忖度なし無修正板をここに残しておきます。権利的に問題があれば削除致しますので、ご連絡ください。
吹奏楽のエレキベースのカッコいいところは、大編成のアンサンブルを、ドラムと 2人で支え、グルーヴさせられるところです。クラシック曲の場合、ドラマー(打楽器担当)とベーシスト(コントラバス担当)は舞台の両端に離れて居ます。その場所でポップスを弾くのは、時差があり大変です。ポップスのときはこの2人は固まりましょう。
次にアンプの音量です。奏者の位置では良いバランスがわからないので、指揮者の 位置や客席で他の人に聞いてもらうといいでしょう。目安としては、管楽器全体、 ドラムセット、エレキベース、というのが分離して認識できるぐらい(エレキベー スが管楽器に埋もれない)の感じです。
ポップスをかっこよく演奏するコツは、楽譜にrit.accel.などの指示がない限り、同 じテンポで演奏する事です。これは指導者(指揮者)がわかってる必要があるんで すが、例えばイントロからAメロが元気に始まって、Bメロでちょっと雰囲気が落 ち着いたり調性が暗めになったりという展開がよくあります。その時にテンポ自体 を変えない事です。曲の後半で盛り上がると自然に早くなっちゃうよね!というの もありがちですが、狙ってわざわざ速くはしないほうがいいです。
次は特にベーシストが意識したいことです。指揮を見て合わせたり、メロディを聞 いて合わせたり、というクラシックの時の意識からスイッチして、『俺のベースを聞いて弾け』というモードが大事です。
優秀なコンクールバンドほど指揮者が絶対なので、それは難しいかもしれません。故にポップスをカッコよくしたいのであれば、指揮者が分ってなくてはいけな い部分です。そして、そんなに自信満々に弾くなら、ベーシストは責任を持って バッチリの演奏をする必要があります。他のエレキベースが入るジャンルと比べ て、吹奏楽は編成が大きいです。どこで弾いたとしても端の人とは距離があるので、他のパートを聞いて合わせるのは難しいです。吹奏楽ではない編成のポップスを演奏する現場には、モニターというのがあり、スピーカーやイヤホンで、他の人の音が時差のない状態で聞こえます。それがない吹奏楽でカッコいい演奏をするには、誰かが負担を被らなくてはいけないのです。具体的には「遠くの人のフレーズ がちょっとインテンポより遅く聞こえるけど、ごめん聞こえないふりしてインテンポで突っ張るね!」という感じです。その遠くの人的には、ベースはインテンポで 弾いててもらわないと困っちゃうわけで... でも一番近くに居るドラムを無視してはダメなので、2人でいいグルーヴを作りま しょう。
ポップスでは、クラシックを弾く時より強烈に、休符や、伸びている間の拍を意識 すると、カッコよくなります。悪い意味で『吹奏楽っぽいポップス』を、イメージ した時に、リズムがマイルド過ぎるという点があります。音の立ち上がりはくっき りハッキリ、切るタイミングもバチっと明確にするのがコツです。
更に上を目指すなら、ポップスの中でもどんな種類のグルーヴなのかを理解して表 現したいです。有名どころでいうと、シングシングシングはジャズの4ビート、宝 島は16ビート、エルクンバンチェロはラテンです。ざっくり言いましたが、これら は同じノリではありません。ベースは勿論音楽全体の雰囲気(ノリ)を体に入れて ください。その時、吹奏楽団の演奏を参考にしないように。ジャズならジャズの、 ラテンならラテンの本職の人が弾いてるものを参考にしましょう。
そして、できたら譜面には無い遊びを入れてみてください。吹奏楽ポップスの楽譜 は、あらゆる習熟度の人に演奏してもらえるようにアレンジされている為、そのまま弾くとカッコよくないものがままあります。シンプルな曲だと、8小節単位のフレーズの8小節目にフィルインという「オカズ」のフレーズがありますが、そこは変えても良い部分です。最初のうちは、吹奏楽版にアレンジされる前の元ネタを聞いて、ベースラインを耳コピするのがオススメです。チューバとユニゾンになっている場合は下手に遊ぶと汚くなる可能性もあるので要確認。
とはいえ楽譜通りのあまりカッコよくないフレーズでも、カッコよく聴かせること はできます。譜面から外れたオカズにかまけてリズム、テンポ、グルーヴが崩れては本末転倒です。究極的にかっこいいベースというのは、ベース自体がかっこいい のではなく、バンド全体に「こういうテンポ、ノリで行こうぜ!」というのを提示して全体をカッコよくさせるようなベースだと思います。それが吹奏楽のような大編成で出来たら、尚の事カッコいいのではないでしょうか。