【残念】ドリームシアターのポートノイ復帰への感想【マンジーニ脱退】
ドリームシアターにマイク・ポートノイが復帰か…
マンジーニ体制の13年間
かつてポートノイが脱退した時は、とてもショックだった。
高校生くらいのとき、ちょうどドリームシアターのドラムパートをたくさんコピーしていた時期に飛び込んできたニュースだったから。
でも、ポートノイに代わって加入したマンジーニは、異次元の技術と音楽への理解力を持つ世界最高峰のドラマーだった。
もちろん、ポートノイ時代の曲は今でも好き。
特にドリームシアターを好きになるきっかけになった『Stream of Consciousness』は自分の中で永遠に色あせないと思う。
でも、マンジーニ加入から13年…
振り返ってみると、マンジーニ時代の方が好きな曲が多い気がする。
全曲中でもトップクラスに素晴らしいと感じる『Breaking All Illusions』、
ヘヴィで疾走感あふれるキャッチーな『The Enemy Inside』、
イントロから(特にドラマーは)圧倒される『Pale Blue Dot』などなど…
テクニックと音楽性が高いレベルで昇華された楽曲をたくさん聴かせてくれた。
マンジーニの人間性
それに、マンジーニ先生は、音楽的な能力だけじゃなくて人間性も尊敬できる。
そして、今回の脱退時のコメント↓を見ても改めて人柄のよさを感じる…
だから、今となってはポートノイ復帰は残念な気持ちが強い。
マンジーニのドラムプレイの凄さ
…しばしば見るDream Theaterのドラマー評で賛同できないのは
「マンジーニはロボットみたいでつまらない」
「ポートノイのプレイの方が遊び心がある」
の2つ。
昔、一応どちらのドラマー時代の曲も実際に採譜して分析してコピーしてみた上で言うけど
「…本当に?」と思っちゃう。
もちろん、どちらも素晴らしいドラマーなので比べるのはナンセンスかもしれない。
だけど、個人的にはマンジーニのプレイの方が面白いと思う。
まず、リズムの組み方に非常に知性を感じるし、強弱の付け方も多彩。
しばしば繰り出される圧倒的な片手の連打スピード。
屋台みたいな大規模なセットを、ちゃんと効果的に使いこなすオーケストレーション。
聴けば聴くほど小ネタやアイディアが演奏の随所に散りばめられていて、楽しいし勉強になる。
そして、
「そこのシンバルは右手で叩く方が明らかに楽なのに、左手で叩くのか~笑っちゃう!🤣」とか
「今のところの動作、笑わせにきてるでしょ…😇」みたいな技術的ユーモアもある。
(補足:↑曲の最後 (10:41あたり) 、足の連打を入れているところ。手は空いてるから次のシンバルを叩くために腕を振り上げた方が自然。なのに、ギリギリまで粘って顔芸を入れてくる。→ ドラマー目線では予備動作をズラされると凄さと違和感で面白く感じる。)
もちろん、ドラマーにしか伝わらない部分も多い気はする。笑
だけど、こういう技術的ユーモアこそ僕がミュージシャンズ・ミュージシャンに期待する"遊び心"なんだよね。
さらに、一番マンジーニの驚異的な能力はテクニックそのものじゃなくて、その世界最高峰のテクニックを音楽的に運用できている点だと思う。
かつての発言↓からも分かるように
どんなテクニカルなフレーズも、あくまでその音楽に寄り添うことを最優先に構築されていて
音楽的な流れを無視して「"自分だけが目立とうとする演奏"は絶対にしていないよな」と感じる。
このレベルでそれが実現できているのは、驚くしかない。
あまりにも巧みなオーケストレーションが多いので、一周回って「ドラムパートがパッとしないと感じる人がいるんじゃないかな…?」と思うほど。
反対に、ポートノイは(好きだけど)良くも悪くも"いつも同じ味"なのは否めない。
ポートノイ時代の曲だけでも、かつて20曲以上耳コピ&採譜したから余計にそう感じるのかもしれないけど…
どんな曲もポートノイが叩けば、大体「あぁ~これはポートノイだぁ~😇」となる。
「それが良い」と思う人も多いと思うし、シグネチャーなサウンドを持っているのは優れたミュージシャンである証。
だけど、僕が最もドリームシアターに期待しているのは、新しいアイディアや技術的な高みを見せてくれるところなので。
ポートノイ復帰について
…ポートノイは別プロジェクトや、JPソロアルバムに参加、Liquid Tension Experiment再始動とかで楽しませてくれていたから、それで充分よかった。
というか、JPソロアルバムに参加とかLiquid Tension Experiment再始動なんかはホントにうれしかったし、テンションが上がった。
でも、だからといってDream Theaterに戻るのは違うだろう…と。
「諸事情でマンジーニ先生が脱退した後にポートノイが戻る」とかならまだ分かるけど。
追い出してまで復帰するのかー…っていう…。
3年ぐらい前の時点では、JPは「復帰はない」って言ってたのにね。
10年以上経てば人間の気持ちも変わるだろうし、マンジーニ先生やメンバーが本当のところどう思っているかは知る由もないけど。
マンジーニ先生の加入時の喜び方とその後の誠実な仕事ぶりを見ると、音楽的な内容を抜きにしてもモヤモヤしてしまう。
…もちろん、バンドは色々な要素が絡んでるから、今回の決断も全く理解できないわけじゃない。
年齢的にも「バンドの黄昏時はオリジナルメンバーで…」という気持ちも分かる。
ある意味、マンジーニ先生も『The Alien』でグラミー賞を取った良いタイミングで引いたとも考えられる🤔
でも、やっぱり残念ではあるなぁ…。
余談
…僕が音楽をやる上での一番の目標は「長く続ける」こと。
そして、それに必要な要素のひとつは「作ろうと思えば1人で作品を作れる能力」だと考えてきた。
なぜなら、誰かと一緒じゃないと作品が作れないとしたら、自分のミュージシャンとしての寿命を他人に委ねることになるから。
10代の半ばの頃から、多くの先輩や知り合いがバンドの解散や脱退で音楽を辞める(結果的に辞めざるを得ない)のをたくさん眺めてきた。
もちろん、誰かと一緒に音楽をやる素晴らしさはある。
ただ、こういうバンド関係のヌメッとしたやり取りを見るたび「やっぱそうだよな…」とも思っちゃう。
マンジーニ先生ほどの卓越した技術と人間性を持つミュージシャンでもバンドを去らないといけない場合がある。
(依頼とかサポートとか役割分担とかでなく)バンドみたいに誰かと(少なくとも形式上)対等な立場で音楽をやると、十中八九どこかで「人間関係」と「作品」を天秤にかけなきゃいけない瞬間が来ると思う。
僕はそれが苦手だし嫌なんだな。
どちらを犠牲にするのも、とてもつらい。