エアジョーダン5〜憧憬〜
エアジョーダン5を初めて見たのは高校生の時で、たぶんファッション誌の小さい写真入り記事だった。当時の値段で15,000円だったと記憶しているが、見た瞬間そのシューズのフォルムに釘付けになった。
折しも時代はバッシュブーム。北陸の片田舎に住んでいる僕たち高校生はみんな単なる通学用にしては明らかにオーバースペックでボリュームのあるスニーカーをこぞって履いていた。
僕はアディダスのシュータンがデカいやつを買って何度か履いていたが、身長とのバランスが悪くまったく似合わなかったというダサくて苦い思い出がある。結局高校時代のほとんどをコンバースのオールスターで過ごしていた。
そんな悶々とした中で見つけたエアジョーダン5。これはかっこいい!と近所の靴屋やスポーツ店を探し回ったが、1990年代初頭、北陸の靴屋にそんなものがあるわけない。国道沿いの靴流通センターやショッピングモールにはスノトレしかないのだ。エアジョーダン5は手の届かない高嶺の花だった。
エアジョーダンはその後もモデルチェンジを重ねていき、僕も高校を卒業して歳を重ねていった。大人になり、使えるお金は少し増えていったが、エアジョーダン5もその価値を高騰させていき、通販では信じられない価格で取引されていた。
一度、20歳くらいのときにユーズドのエアジョーダン7を手に入れた。履き心地は素晴らしかったが、やはりエアジョーダン5が欲しかった。憧れはより強くなっていった。
時は流れ、その間エアジョーダン5は幾度か復刻品がリリースされた。インターネットが発達し、少しずつエアジョーダン5との距離は近くなってきていたが、プレミアがついていたり即完売したりとその人気は衰えることがなく、手に入れられないまま歳月が流れた。
「このまま俺はエアジョーダン5を履くことなく人生を終えるのかな」
40歳も過ぎ、静かにそう思うようになった僕に
出会いは突然やってきた。
続きます。