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知識ゼロからMTGを始めました③【MTGアリーナ】

↓前回(②)はこちら

初回の記事で「人が嫌がることは決してするな」という話をしたが、この世界にはそれを守れない輩が多すぎる。

シルバーランクに上がってから「赤単ハツカネズミアグロ」に辛酸を舐めさせられ続けている私だが、もう一つ許しがたいデッキタイプに出会った。

「ハンデス(手札破壊)」――

カードゲームとは多くの人にとってコミュニケーション手段である。
ハンデスとは例えるなら、相手が握手を求めて伸ばしてきた手を叩き落とす行為に等しい

また、心理学者のカーネマンが提唱した「プロスペクト理論(損失回避バイアス)」をご存じだろうか。
簡単に言えば人は心理的に「<得>より<損>を過大評価する傾向」があるという理論のことだ。

マーケの教科書」より引用

例えば、AmazonやSteamの「期間限定セール」で特に必要ないものまで買ってしまったことは誰しも経験があるかと思うが、これも「今買わないと損をしてしまう!」という損失回避バイアスが働いているからなのだ。

このプロスペクト理論をカードゲームに当てはめれば「2枚ドローする喜び」より、「1枚ハンデスされる不快感」の方が上回るということである。

『遊☆戯☆王』における某社長も、予知能力者にピーピング(のぞき見)をされた際にページを跨いで憤慨していたことはあまりにも有名である

漫画『遊☆戯☆王』より
ちなみにこの「イシズ」というエスニックな女性は未来予知というカードゲームにおいて許されざる能力があるのだが、そちらは寛大にも許されている。


使っている側は「マナと手札1枚消費して1~2枚ハンデスしてるから等価交換でしょ🤔」等と考えているのかもしれないが、ハンデスされる方は決して冷静ではいられない。

結論として、人間心理に対して効果的にダメージを与える「ハンデス」という戦術は断じて許されないのである




……ところで、全く話は変わるが。

私はMTGを初めて数日の身であり、ルールやカードプールへの理解はさることながら、そもそもアリーナにおけるカード資産が少ない。

そしてこの「ハンデス(黒単)」というデッキタイプを調べてみたところ、神話レア(最高レアリティをそう呼ぶらしい。おしゃれだ)の数が少なく、始めたばかりでも組みやすいらしい。

そして何より私の目を引いたのはこのカード↓の存在だ。

ちょうど赤単対策を考えながら四苦八苦していた時に、黒単からこのカードを撃たれて目玉が飛び出た

モノによっては相手の2~3マナまで破壊できる割に自分の消費はたったの1マナ。しかもインスタントなので、相手の強化インスタントやエンチャントに重ねれば対象不在の無駄撃ちを誘うことも出来る。

「これだ、私が求めていたものは」

そう感じた瞬間、天使が私にささやく。

「普通にあなたも赤単を使えばいいじゃない。
いつもtire2以下のメタデッキを使って苦労してるのに」

ふむ。至極真っ当な意見だ。
基本的にメタに回る側は特定のデッキには有利に動ける反面、汎用的なデッキパワーは落ちる。
そのためメタを的確に読む環境洞察力とより高いプレイングが要求される

そして初心者たる私にはどちらも備わっていない。
極めつけに赤単は赤単で安いのだ。ワイルドカードの使用量もほぼ同じときている。

MTGで最も人気のあるレギュレーションである「スタンダード」は、最新パックから2~3年ほど遡ったカードしか使えず、それより昔のカードは「スタン落ち」と呼ばれ、歴史の闇に葬られるらしい。

そのような環境で限られた資源を投資するなら、天使の言う通り未来ある若き新芽に託すべきである

となれば、結論は決まったも同然――





F○○k you!!👎

私は獣になるためにカードゲームをしているのだ。
獅子の首を狩ってこそ、真に獣になったと言えよう。

デッキレシピ

威勢よく啖呵を切ったものの、4枚生成に踏み切れていないカードがちらほら見られる。なんとも覚悟の足りないデッキレシピだ

使われて特に不快度の高かった「大洞窟のコウモリ」を4枚採用し、同時に相手のコウモリを咎められる「切り崩し」も4枚採用。先述の通り赤単にも刺さるため、一定の環境適正があると判断しここを軸にデッキを構築した。

他には我慢できずに剥いたパックから出てきた「羽の夜のマーハ」を締めのエースとして採用。

蝶かと思ったらフクロウだった。

ハンデスで消耗させてからの「護法-カードを1枚捨てる」がマーハをより強固なクリーチャーとして君臨させ、特殊能力と合わせた飛行・トランプルでの攻めもいやらしい。
また相手のステータスを固定することで、パワー4以下のクリーチャーを「切り崩し」の圏内に入れることができるというシナジーもあるのだ。

他にも「望み無き悪夢」+「がぶりんご飴」のコンボを搭載。

役割を果たした後、ほぼ無意味に場に残るが……
協約(エンチャント等を生贄にすると効果がより強力になるカード群)効果で活用する。
サスティナブル(持続可能)な取り組みだ。

これらを活用して相手を弱らせ、「懲罰者ケアヴェク」のコピー効果や「新たな血族、ヴァドミル」でゲームをコントロールするデッキに仕上げてみた。

特定タイミングで2点のライフとマナを払えば墓地のカードを発動できる。
相手を対象に取る度に永続+1/+1上昇。
4回発動すれば強力なおまけ付だがまず無理。

<余談>
MTGでは相手プレイヤーや相手パーマネントを対象に取ること等を「悪事を働く」というキーワードで表現するらしい。
冒頭の「ハンデス」等の極めて真っ当な戦術が公式で「悪」と定義されていること(そしてそれを世界観の中のフレーバーに落とし込んでいること)は見事なバランス感覚というほかない。

また、このデッキ自体を長々と使うつもりはなかったので神話レアの生成は汎用性の高そうな「ヴェールのリリアナ」1枚のみにした。

本当は強カードをバンバン生成して勝利数を稼いだ方が効率がいいのだが、それが分かっていてもできないのが損失回避バイアスというわけだ。

結果はというと……

使われてストレスを受けたカードを相手に投げ返していたら、なんと8月シーズンでプラチナランクまであがってしまった

コモン、アンコモンのカードで神話レアをハンデスしただけでかなりのアドバンテージを稼いだ気分になるのは気のせいなのだろうか

我ながら人におすすめできるほど綺麗な構築ではないが、地雷デッキとしてたまに勝てる程度の仕上がりにはなったと思う。

最後に

プロスペクト理論において、損により生じる喪失感は得により生じる高揚感の2倍とされている。

だが私の編み出した理論においては、相手だけに損失を負わせたときの高揚感は2×2の4倍だ

こんな不思議体験はカードゲームの中でしかできない。

仕事でミスをして他者に迷惑をかけたときに興奮している奴がいればそれはただのヤバい奴だ

やはりカードゲームは獣が行う競技なのだ。
人間は大人しく資格取得の勉強でもしているのがよかろう。

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