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MTG公式の読み物が面白い【MTGアリーナ】

ある有名なジョークがある。きっと誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
沈没しかけた船の中で、乗り合わせた様々な国の人を海に飛び込ませるよう、船長が以下のように説得を行うのだ。

アメリカ人には 「飛び込めばあなたはヒーローになれます」
ドイツ人には「飛び込むのはルールです」
フランス人には「飛び込まないで下さい
……といったように。

そして日本人には「皆さん飛び込んでいますよ」といって同調圧力を煽るような説得の仕方をするのがお決まりだ。

もちろんこれは古いエスニック(民族的)ジョークであり、昨今の個性尊重主義的な風潮とは相容れず、時として差別的と言われる時もあろう。


……だが。

これほど明確な文化圏の違いを見せられては、やはり「お国柄」というのは一定存在するのだろうと言わざるを得ない。

 《有翼の叡智、ナドゥ》は、デザインに失敗しました。

(中略)

このデッキは人々の時間を独占する可能性があり、しかもその時間は楽しくもなく、干渉しやすいデッキでもありません。このデッキを環境に残すだけの、説得力ある論拠はありません。

 これらの理由から、《有翼の叡智、ナドゥ》は禁止となります。

ある禁止カードの制定を伝える記事だが、これほどオープンに自分たちの非を認め、このデッキが相手に与えうる体験は楽しくないというような主旨の発言をすることがありうるだろうか。

自分たちが発売した(さらに中古市場の存在によって疑似的な資産価値を持つ)カードが運営都合によって突然使用禁止になる以上、これが運営側の本来あるべき姿だと思うのだが、如何せんこういった文章を出せる日本法人は残念ながらあまり存じ上げない。

https://yu-gi-oh.jp/news_detail.php?page=details&id=2055
↑参考までに遊戯王における禁止制限改定リストだ。「なぜその制定がされたのか」の理由すら書かれていない。

文章の中でも、特に「○○はデザインに失敗しました」という強烈な構文はMTG界隈を飛び越え、カードゲーム界隈全体に広く知れ渡った。

今後もしばらくは強烈なカードがブラックリストに登録されるたびにこの構文は使われ続けるだろう。

しかしながら、これほど長文の言い訳めいた文言を並べながら、文中に「sorry」「apologize」「regret」等の謝罪の文字が全く見当たらないのもお国柄と言えようか

sorry:当然ながら謝罪の意。企業公式文書の単語としては少し軽い。
apoligize:謝罪(自分に非があることを認める)上級表現
regret:謝罪の最上級表現らしい。丸太小屋構文でしか見たことが無い。

「反省はしているし、今後はこのようなことが起きないよう○○という手段で対策する」と言いつつも訴訟対策のためなのか、謝罪は決してしない

しかし形式だけの謝罪が先行しない文化だからこそ、これほどまでに清々しい文章が書けるのだろう。


もちろん公式が出す良記事はネガティブなものに留まらない。
こちらは非MTGプレイヤーでも必見の内容だ。

バニラ(筆者注:効果を持たないクリーチャー)は攻撃やブロックができ、新しいプレイヤーにマジックを教える手段として存在しています。それだけでなく、これらは各色で想定されるクリーチャーのサイズの基準を設定し、カラー・パイの原理を教えることを助ける素晴らしい役割を果たしています。

(中略)

 それだけでなく、バニラは新しいプレイヤーがデッキを構築するときにも素晴らしいものです。バニラの完全上位互換のカードを手に入れたときにどれを入れ替えるべきかを理解するのは簡単です。

「MTGにおけるバニラの役割」に関して書かれた記事だが、これもまた興味深い。

ゲーム初期段階の頃からバニラの存在意義を
①カラーパイの説明(色によるサイズ基準の制定)
②デッキ構築習得ロードマップの初期段階

と位置づけ、バニラが実戦的でないことを随所で認めつつもその意義を理解してもらおうとしているのだ。

遊戯王の運営に「レオ・ウィザード」を制作した意義を問うても、答えられる者は誰もいまい

宇宙最弱のモンスター

MTGに限らず海外インディーゲームをプレイする方々ならよくお分かりと思うが、彼らのニュースリリースはとにかく親密的で赤裸々だ。

時にジョークを交えユーモアたっぷりに、まるで友達に推しをプレゼンするかのようなその語り口は真似しようと思っても一朝一夕に習得できる類のものではない。

あとはデザインに失敗するかどうかスレスレのカードを毎段何枚か刷って話題を提供しながら、時折本当に失敗して素敵な読み物をまた執筆してもらえれば嬉しい限りだ。

……まあ、私的にはBO1の赤単アグロの方がデザインに失敗している気がしなくもないのだが。

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