万引きGメン 捕捉履歴3件目
万引きGメン 補足履歴 3件目
2019年04月08日 月曜日
某スーパー戸田店
捕捉時刻 10時54分
年齢77歳 男性
捕捉 被害品グリーンピース1点
被害金額213円
ズボンの右ポケットに隠匿
この店舗はスーパーとホームセンターが一つの建物の中に存在していてる。
治安が悪い地域柄か子供からお年寄りまで万引き犯が存在する。
この日もいつものように店内巡回中。
平日ということで、客足はまばら。
そんな中でも仕事として、巡回をする。
開店して約50分不審者発見!
警戒モードで注視しながら追尾。
そわそわとしながら、店内物色。かごも持たず、少し足早に移動し商品棚から黒いパックのものを右手で取り、手のひらで隠すように右足の太ももにピタリとつけて、足早に移動していく。
これは「ヤル」パターンだ!
と、直感し追尾、注視。
追尾しながら、商品棚の横を過ぎる時に、手にした物が何か?残っている物で確認すると、黒いパックは豆とひじき煮。どっちかだ。。
対象者が通路内に入る際に左右をチラッと見渡し通路に入る素振りが見えた。
俺は横目で見ながらそっと近づき、対象者が通路に入ると、同時に通路前まできて注視すると。。。
右手がズボンの右ポケットに入っている。しかもかなり膨らんでいる。
これはやったな。。。俺も通路内に入り追尾する。
こちらの追尾がバレて隠匿したものを捨てられてもいけないので、慎重に。
だが目を離すことなく注視。
対象者はそそくさと足早に出口に向かう。右手はズボンのポケットに突っ込んだまま。
基本的に被害商品が1点の場合、声掛け、捕捉はしないで、見逃すことが多いのだが、棚取りから目視現認しており、ポケットに入っているものもわかっている。ポケットから手を出した時に、まだズボンが膨らんでいたら、確定だな。。
と思いながら追尾していくと、レジ横を通り過ぎて、出口に向かっていく。
風防室を抜けガラスドアを出たところで俺は猛ダッシュ!
出入口ドアの前にいる、対象者に急接近すると、対象者は右手をポケットから出して、自転車の鍵を持ち、鍵を開けようとしていた。ズボンの右ポケットはくっきりとパックの形が浮き出ている。
豆かひじき煮だ!
逃げられる前に声を掛ける。
「すみません。ちょっといいですか?」
「なんや!?」
「なんか?お忘れになってることが、ございませんか?」
「なにがや?!」
少し強めに言い返してくる。
「いや。右のポケット。入ってるもの。お会計。お忘れですよね?」
万引き犯は、あっ!と言う顔をして、こちらをにらみつけてくるが、俺が
「やったことは仕方がない。俺、ここで警備の仕事してる万引きGメンなの。わかる?俺も店長に一緒に謝ってあげるから、お父さんも、ちゃんと謝って、許してもらおう!」
と言うと、すんなりとポケットから豆のパックを取り出した。
万引き犯はうなだれている。
一緒に店長に謝ってあげる。と言うけれど、そんなことはしない。
そして謝ったところで許しても、もらえない。だけれど、俺が一緒に謝ってあげるから、許してもらおう!と言うと、万引き犯は、あっ!もしかしたら許してもらえるのかもしれないんだ!と、勝手に勘違いして、事務所まで大人しくついてくる。
逃げ出す奴もいるけれど、俺のポリシーとして、絶対に逃さない!って思ってるので、逃げるそぶりをした段階で、男性ならズボンのベルトを掴むし、女性なら持ってるカバンなどを掴み、体には触らないように捕捉する。
まぁ一度だけ、しぶとい若い女の人は、盗んだトイレットペーパーを投げつけて、走り出したので、受け止めて、投げ返し、よろけたところを捕捉したこともあるが、それはまた今後のお話にして、今回はこの豆のおじいさんの話に戻します。
万引き犯を事務所に連れて行き、店長を呼ぶ。
店長は必ず
「なんでこんなことしたの?」
と聞くけど、ほとんどの万引き犯は何も答えはしない。ダンマリを決め込んでいるから、俺がすかさず
「店長さんに謝って。ちゃんと。」
と言うと、
「すみません」
とひとこと。
まぁこんなもんだ。いつも。って感じ。もちろん俺は一緒に謝ったりはせず、盗んだ状況を店長に話す。
店長は
「警察に電話してくるので。。」
と言って席を外すと、万引き犯はじっと俺の目を見つめてくる。その目には
(許してもらえるんじゃなかったの?)
「あんた!一緒に謝ってくれるって、言ってたやん!)
と言いたそうな無言の目で、訴えかけてくるのが、ひしひしと伝わってくるけど、無視。
警察を待つ間に、身元の確認。
氏名、住所、連絡先、など書いてもらい、身分証明書で確認をしておく。
嘘を書く人もいるから。
無駄に万引き犯と、言葉も交わさない。ただ逃げられないように、事務所内ではドアから奥の椅子に座ってもらい、こちらは出入り口の前近くにいるようにしている。
この間、反省の弁を言う人もいるし、言い訳をする人もいる。
「万引きしたことはいままでに何回あるの?」
と聞くと、必ず誰もが
「初めてです。」
と答える。
「捕まったのも、じゃぁ、初めて?」
て聞くと
「はい。捕まったのも初めてです。」
と言う。
うそだ。
初めてやって初めて捕まるなんて、よっぽどのドジ。
大概は、初めてやってうまくいったから、またやる。で、2回目もうまくいったからまたやる。の、繰り返しで、毎回繰り返し、ボロが出て捕まる。っでパターン。
中には初めてだと言っておいて、警察が来ると
「またお前か!」
と、警察官に言われてる人もいる。
わかってるけど、絶句。そして笑いが込み上げてくる。
この万引き犯もそうだった。
被害金額¥213-
こんな少ない金額の商品一点なんて、俺も見逃してやればいいのに、そうはいかず、捕捉したけど、この補足で、この万引き犯のこの先の人生、家族関係や人間関係、世の中からの視線、世間体など、大きく変化していくことになるだろう。
そして前科、前歴が残り、一生ついて回ることになる。
でも、やったことはやったこと。
俺から見えるところでやったことが運の尽き。運が悪かったと思って、諦めてもらおう。
次もまたどうせやるんだろうけど、俺のいないところで、やってくれ。それなら捕まえはしない。
ただ、他のGメンに捕まるだけだ。もう俺には関係のないこと。
警察官に腕を取られ、トボトボとうなだれて連れていかれる、おじいさんの姿がとても小さく見えた。
万引き犯が連行されてから、俺は鑑識の人と現場検証。
どこで、どうやって、何時、何分に商品を取り、どこを通って何分に
店を出て、どこで、どう声を掛け、事務所に連行したのか?
棚取り、隠匿現認、未精算、退店、声掛け、捕捉、連行までの流れを、分単位で報告して、順次写真を撮り、証拠として残していく。
店内に他のお客さんがいても、写真撮影は行われるので、そこです、ここです。の場所に俺が立って指をさす。
まるで俺が、何か悪いことをした犯人かのように、見えるだろうな。。
と俺は思う。
俺は人相も悪いし、ガラの悪い格好で仕事してるから、余計だな。。
一見俺も不審者だもんな。よく言われる。。笑笑笑
バタバタと現場検証も終わり、一仕事終えて、車に戻ってタバコで一服。
開店1時間以内で1件捕捉を、会社にメッセージしておき、今日は一日のんびりやろう。
と、ほっとしてまたタバコを一服。
うまいね。
夕方まで、まだ時間はある。少し休んで次の不審者を探そう。
と、鏡を見たら、俺が一番不審者に見えた。。
俺は万引きGメン。不自由な生活を送っていたGメン。こんな奴に捕捉されたくなけりゃ、俺の前で万引きはするな。
見逃さないから。
万引きGメンのお話は、まだまだ続きます。
不定期ですがどんどんアップしていきますので、楽しみによろしくお願いいたします。
万引きGメンひでぶ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?