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経済・物価見通し実現なら利上げ、正常化継続の方針-氷見野日銀副総裁
はじめに
日本銀行の氷見野良三副総裁は1月30日、都内での講演で、日銀の経済・物価見通しが実現すれば利上げにより金融政策の正常化を継続していく方針を改めて示しました。昨年7月以来の追加利上げが行われたばかりですが、今後も経済・物価の動向次第で政策金利の引き上げが検討される可能性があります。今回は、氷見野副総裁の講演内容を中心に、現在の日銀の政策スタンスや今後の見通しについてご紹介します。
日銀の政策方針:「経済・物価見通しが実現すれば利上げ」
氷見野副総裁は、日銀の経済・物価見通しが想定通りに進展していけば「それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」方針を示しました。これは、1月24日に決定された政策金利0.5%への引き上げに続く追加利上げを視野に入れたものであり、金融政策の正常化に向けた姿勢を明確にする発言といえます。
一方で、今後の利上げ時期やペースについての具体的な示唆はありませんでした。これは、今後の経済・物価・金融情勢を注視しながら柔軟に対応していくことを示すものです。
「成長と分配の好循環」を目指す
氷見野副総裁は、日本経済の理想的な姿として「成長と分配の好循環が進み、緩やかな物価上昇が定着していく」状態を挙げました。消費や投資が活性化し、賃金や企業収益が成長につながるというこのサイクルは、日銀が目指すインフレ率2%に近い水準での安定した成長を象徴しています。現状については「徐々にそのような姿に近づいている」との認識を示しました。
実質金利と緩和的な金融環境
今回の利上げ後も、実質金利は依然として大幅なマイナス圏にあります。日銀は、予想インフレ率の上昇や需給ギャップの縮小によって、段階的に緩和の度合いを調整していると説明しています。氷見野副総裁も「実質金利のある世界」にはまだ距離があるとしながらも、「デフレ的な要因が解消された状態であれば、実質金利の大幅なマイナスがずっと続くのは普通の姿とはいえない」と述べ、今後さらなる政策調整が行われる可能性を示唆しました。
企業・家計の変化
また、企業や家計のバランスシートがかつてとは大きく異なる点にも言及。無借金や実質無借金の企業が増え、家計の保有金融資産も拡大しているため、「名目金利がある世界」と「かつての名目金利があった世界」とでは状況が異なると指摘しています。これは、金利上昇に対する影響が一律ではなくなっていることを示しているともいえます。
今後の利上げ観測:エコノミストの見方
ブルームバーグが1月27日にエコノミスト45人を対象に実施した調査では、次の利上げ時期を「7月」と予想する回答が56%で最多となりました。次いで「9月」が18%、「6月」が9%となっています。さらに、今回の利上げ局面における政策金利の最高到達点(ターミナルレート)については1%と予想する声が中心的です。ペースとしては「半年に1回程度の利上げ」を見込む向きが多い結果となりました。
まとめ
氷見野日銀副総裁の講演では、日銀の経済・物価見通しが実現していけば、追加の利上げによる金融政策の正常化を継続する考えが改めて示されました。成長と分配の好循環が続くなかでの緩やかな物価上昇という理想像に徐々に近づいているとの認識を示す一方、実質金利の大幅なマイナスが今後どのように修正されるかが注目されます。企業や家計の資産状況の変化も踏まえ、引き続き日銀の政策運営の行方を注視していきたいところです。