Greetings & 再出発 ― 「チベット問題」再考
2007/05/23
Greetings!
旧知の方々、「御無沙汰致しました」。他の方々、「初めまして、今後、宜しく御願い致します」。 Anyway, I'm back.
チベット難民を描いたドキュメンタリー作品・『チベット難民~世代を超えた闘い』 (『Tibetan Refugees: A Struggle Beyond Generations』(英語版))を制作してから 早、5年以上が経つ。単独でかなり苦労して作った作品だが、御陰様で多くの人々に御覧になって頂き、国際映画祭(Himalaya Film Festival)にも選ばれた。ベルギー議会でチベット難民の現状を知る参考映像として使用されるなど、更なる広がりを見せている。 作品の詳細、制作過程、(これまでの)コラムなどは公式サイトを御覧になって頂ければと思います:www.10system.com
この数年、諸事情で意図的に「チベット問題」とは距離を置いていた(諸事情〈"心の葛藤"〉については 後日記す)。しかしながら、チベット難民の親友たちとは連絡を取り合っている。
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さて、その後、チベット難民を取り巻く状況は改善しただろうか? いわゆる「チベット問題」は進展したであろうか? 残念ながら、答えは「NO」だ。
一部の難民を除いて大多数は経済的に非常に貧しい状況で今も変わらず主にインドで暮らしている。裕福な生活を求めて欧米に移住する者は後を絶たない。「俺は、最後までインドに残りチベット解放のために頑張る」と言っていた北インドに住んでいた若い友人(インドで生まれ育った“難民第三世代”)は、親戚を頼ってカナダに移住してしまった。インドで暮らしていても将来の見当など全く立たず夢も持てない状況では、致し方ないのかもしれない。彼を責める気になど到底なれない。
一方、「チベット問題」も相変わらず停滞したままだ。否、状況は悪くなっていると言った方が正確だろう。依然として、ダライ・ラマ14世をリーダーとする「チベット亡命政府」を公式にチベットの代表と承認する国は一つもない。急成長する経済力を背景に国際的地位と発言力を着実にアップさせる"大国"・中国を前に誰も正面切って「チベット問題」を持ち出すことは出来ないし、しない。アメリカも国連も然り(唯一、人権的な側面からアムネスティが健闘している)。
最近もダライ・ラマはブリュッセルの訪問をキャンセルせざる負えなくなった。中国政府がベルギー政府にダライ・ラマの入国を脚下するよう圧力をかけたのだ。その状況を察したダライ・ラマがベルギー政府に配慮して自ら取り止めた。こんなことは、他国でもこれまで何十回と繰り返されている。
中国の統治下に置かれているダライ・ラマの祖国・チベットに目を転じよう。多数のチベット人がヒマラヤ山脈を徒歩で越えてインドにいるダライ・ラマに謁見しに行く、或は、人権侵害によりネパールへ逃げてくる状況も相変わらず。昨年9月、国境の中国兵士がチベット人の一団を襲い、17歳の尼僧を射殺。この一連の様子は偶然現場近くに居合わせたルーマニア人クライマーによって撮影された。その映像を「Youtube」で見ることが出来る。_________________________
大きく変わった状況もある。中国本土とチベット(ラサ)が遂に鉄道で結ばれた(青蔵鉄道)。この鉄道開通をダライ・ラマを初めとする難民たちは長年非常に懸念していた。
「一つ」には、鉄道が与えるチベットの自然環境・伝統文化へのダメージ。
もろく傷つきやすいチベットにはチベットガゼルなど希少野生動物が生息している。鉄道開通によるチベット観光化がこの自然環境に何をもたらすか。中国政府は“環境に優しい鉄道”を標榜しているが、欧米のみならず中国人専門家も「慎重に調査する必要がある」と釘を刺している。
チベット人は「霊性(spirituality)」を民族の伝統としてきた。それは、チベットの深遠で広大な自然・大地と密接に結びついているものだ。ゆえに、「霊性」の伝統を維持するには手つかずの自然、少なくとも人を容易に寄せつけない自然環境が必須。今、チベットの「霊性」の危機でもある。チベットの聖人・ミラレパもきっと嘆いているはず。
しかし、そんな状況は少しも顧みられず、鉄道開通により“商業主義”が確実に動き出した。中国政府は一大観光キャンペーンを打ち上げ、世界各国の旅行会社はこぞってツアーを組む。マスメディアもこれに便乗し“旅行番組”を製作(正月に放送されたNHKの番組は恰も中国政府のPR番組の様だった)。更に、アメリカの企業がポタラ宮殿の側に高級ホテルを建てるという(一泊、US$400!)。
以前、アメリカの友人(中国歴史学の教授)が冷ややかに予想していたのを思い出したー「鉄道がラサに敷かれたら、早晩、“世界最高所”のディズニ-ランドが出来るよ」彼の言葉がいよいよ現実味を帯びてきた。
ダライ・ラマは、かねてより、チベットを世界最大の“自然公園”にする構想を公にしている。この危機的状況に対する彼のささやかな抵抗なのだ。
「二つ」めの懸念は、鉄道による中国人(漢(民)族)の移住である。
いわゆる“チベット自治区”において、ラサなどの都市部で中国人(漢族)とチベット人(族)との人口比率は逆転している。鉄道開通によりその状況が更に加速し周辺地域へも及ぶとの懸念だ。これは、ダライ・ラマ曰く、"cultural genocide(文化的大量殺戮)”。ラサだけではなく、チベットの至る所が年々”中国街”の様に成っている有様からも、彼の嘆きの意味が理解出来よう。
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”初ブログ”なのに些か長くなってしまった。
さて、ことここに至り「チベット難民(問題)」に関する活動を”心の葛藤”を超えて本格的に再開することにした。
1999年、3ヶ月間のチベット難民コミュニティー (ダラムサーラ〈インド北西部〉)での取材を終え街を去る際、知り合いの老婆が話しかけてきた。私たちは、300キロに及ぶチベット問題を訴えるピースマーチ(平和行進)を寝起きを共にしながら歩いたのだ。彼女は130人のメンバーの一人、私は取材者として。胸の前で手を合わせて、彼女は今にも泣きそうな顔でこう言ったー「どうか、チベットの現状、難民の思いを世界の人々に伝えて下さい」
自分に何が出来るか分からない。しかし、以前と同様、出来ることを淡々と確実にこなしていくだけだ。もとより、マスコミ(TV局)の協力など当てにしていない。マスコミ(特に、TV)では、「チベット問題」は今でもタブーなのだ(マスコミの状況等については拙者公式サイトにて:www.10system.com)。
善意と意志のある方々の輪が広がり、それが一つの「力」となって「チベット問題」の解決への囁かであっても確かな礎になることを願ってやみません。
I'll surely do my best from now on.
拙文にお付き合い頂き有り難うございました。
今後とも宜しくお願いします。
Take care!