エネルギー管理士不要論
電験三種取得後に挑戦する方を多く見かける"エネルギー管理士"
この資格について私が思うことを書きます。
はじめに
私はエネルギー管理士を取得しています。
取れなくて不要と喚いているわけではありません。
また、採用関係に関わることがあるため、企業からみて資格がどのようにプラスになるかもわかります。(n=1)
当たり前ですが、あなたの状況によりこの資格の価値は変わります。
あなたの職場でエネルギー管理士が必要となり、会社から取得するように命じられたような場合では勉強してください。そのような状況では当然資格の価値は高いです。
このnoteで話をしたいのは、
"仕事で使わないけれど、転職とかで役に立つかもしれないし取ろうかな~"
と考えているあなた向けです。
ほんとに必要ですか?という主旨で書いていきます。
試験まであと1ヶ月もないと思いますが、
これを読んでいただき、あなたのモチベが上がるといいなと思います。
資格の価値は主に下記の通りです。
・業務上の必要性
・能力の保証
※趣味とかは除外します
業務上の必要性
工場および事業場がエネルギー管理指定工場に指定されれば、エネルギー管理士が必要となります。労働者として業務で必要となるのは、これに選任される場合ですね。
需要はあるのか
そもそもエネルギー管理士が必要な工場・事業場はどれほど存在しているのでしょうか。
資源エネルギー庁では下記の情報が公開されています。
(令和5年7月末時点)第一種及び第二種エネルギー管理指定工場等指定状況https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/004/data/2023fy_kojo_shitei.xlsx
こちらでは14,452箇所の工場および事業場が指定工場等に指定されていることが分かります。
第一種は7,502箇所
第二種は6,950箇所
です。
第一種は規模により1~4人、第二種は1人、有資格者を選任する必要があります。第一種の規模が不明なので、仮に2人として計算すると全部で21,954人となります。
これがエネルギー管理士の必置資格としての需要です。
果たして多いのでしょうか。
転職先を考える時に、「日本ならどこでも」という人は少ないでしょう。
自分の住んでいる県で探す方が多いのではないでしょうか。
地域による分布の偏りがあり、工業地帯といわれる場所のほうが件数が多く、一方で田舎のような場所では少ないという傾向があります。
実際にデータをグラフにするとその通りです。(上位3つと下位3つを着色)
多いところでは1,200件以上の工場があるのに対し、少ない県では47件しかありません。
電気主任技術者(電験)と比較してみると…
電気主任技術者が必要となる設備数は、経済産業省によると
2021年時点で再エネだけみても30,000件程度あり、2030年までに約50,000件まで増加見込みであることが分かります。
(これにコンビニ・ビル等の高圧受電設備を足せば、10万件以上になる見込み)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/008_02_00.pdf
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/008_02_00.pdf
これらのデータを見て分かるように、電験三種の需要のほうが圧倒的に多いです。
この章のまとめ
エネルギー管理士を必要とする工場・事業場は、電験三種に比較して少ない。エネルギー指定管理工場で選任する有資格者の需要は少ないと考えられ、転職者が単純にこのポジションを求めてもその数は限られる。
したがって、この視点から見ると資格を取るメリットは少ない。
能力の保証
では、もう一つの視点。
資格による能力の保証とはつまり、
"私は試験合格に値する能力をもっています"ということです。
※例外のある資格もあります(後述)
この資格の特徴
エネルギー管理士を持っているとはどういうことでしょうか。
ざっくりいうと"エネルギーの使用の合理化に関する知識"を持っているということです。
エネルギー管理士は電気主任技術者とは少し違う特徴があります。
それは、免状申請の際に実務経験が必要である点です。
免状を持っているということは、少なくともこれらの設備において該当する業務に携わっていることを示しています。
実務経験をアピールできることがメリットのように思えます。
ですが、実務経験は職務経歴書で足ります。
逆にいうと、専門外の方が受験しても免状はもらえません。
免状をもらえないのに勉強するくらいなら二種の勉強をしましょう。
エネルギー管理士の勉強は職場で必要になってからでいいです。
エネルギー管理士の難易度
資格が能力を保証する。
つまりその資格が難しければ難しいほど、能力を示すには適しているということになります。
実際のところ、この資格の難易度はどうでしょうか。
よく電験2.5種のような表現がされます。
個人的には、三種より少し難しい程度だと感じました。
三種と違い、記述のような出題もありますが、解答させるための誘導があり2種の二次試験とはレベルが違います。
よって、これを取ったからといって転職市場における評価がそこまでよくなることは考えにくく、電気設備の知識をアピールする目的なら三種を所持していれば十分です。
戦略として中途半端である
電験二種取得のために勉強している方ならば、エネルギー管理士はついでで取得できる程度のものです。
かといって能力的に三種でギリギリな方が、三種取得後に上乗せでエネルギー管理士を取りに行くにしては、必要な労力と得られる価値が見合っていません。
将来、あなたが二種の取得を考えているなら通り道としてエネルギー管理士受験を検討するかもしれません。
ですが、電験二種に合格できればエネルギー管理士は陳腐化※します。
つまり、二種受験者が挑戦するには簡単だが、電験二種取得により効力が失われるという非常に中途半端な立ち位置です。
※資格の能力保証の視点
この章のまとめ
能力の保証としての視点で考えると中途半端である。
それは
・二種受験者にとっては将来的に意味がなくなる
(電験二種を取得してしまうと陳腐化する)
・二種取得を考えていない人にとっては上乗せする労力と価値が見合わない
という理由による。
したがって、この視点から見ると資格を取るメリットはない。
余談
実務経歴としてアピールするためにわざわざ17,000円も使いますか?
試験に2日かかる電験二種よりさらに高額な試験手数料…
・エネルギー管理士(試験1日のみ)
17,000円
・電験三種(試験1日,CBTも選べる)
7,700円
・電験二種(1次,2次試験)
13,800円
免状申請の手数料は以下の通り
・エネルギー管理士
3,500円
・電験三種、二種
2,350円
全体的に高い。
フォロー
あまり貶す一方でも良くないので、精一杯フォローを考えます。
外部委託と省エネ関連の業務もある
エネルギー管理の業務は、外部委託が可能であり、電気主任技術者のように単純な設備数以上に有資格者の需要がある。
また、保安業務と合わせてエネルギー管理支援業務を行うような会社もあります。
そういう会社を目指すのであれば価値があるかもしれません。
実務経験の公的な証明になる
職務経歴書は、内容を誰かが証明しているものではありません。
したがって転職活動などで提出する職務経歴は、極端にいえばウソの可能性もあります。
エネルギー管理士の免状取得の際は、実務経験があることを会社の証明付きで提出しなければなりません。
そのため、実務経験の信憑性を高めることが可能です。
二種をあきらめた人向け or 保険として
二種取得に挑戦していた方が諦めるとき。
結局、履歴書上は第三種電気主任技術者までしか書けなくて、
二種まで勉強していたあなたがそれでもなんとか差別化を図りたい。
そういったケースでは、取得してもいいかもしれません。
もしくは、二種に挑戦している最中で途中で諦めることを考えてしまう後ろ向きなあなたにはメリットがあるかもしれません。
さいごに
以上です。参考になりましたか?
そもそもの話、
あなたが本当に必要なら取ればいいのです。
自分の人生は自分で決めましょう。
しっかりした軸を持つあなたにとってはこんなnoteはノイズだと思います。
この記事を読んでモチベが下がることはないでしょう。
一番重要なのは自分が必要か判断して勉強することです。
受験されるあなたの合格を祈ります。