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【電験・技術士】電力系統の中性点接地方式

電力系統の中性点を設置する目的

  • 地絡事故時における健全相対地電圧上昇の抑制による送配電設備の絶縁レベル低減

  • 地絡保護リレーの事故検出性能の確保

  • 地絡過渡電圧・電流の抑制、鉄共振・アーク間欠地絡などの不安定現象の抑制

中性点接地方式の種類と特徴

(1)非接地方式

 文字通り中性点を接地しない方式。33kV以下の系統に適用される。
変圧器をΔ結線できるので、単相変圧器3台のΔ結線の場合1台故障してもV結線で使用できる。
 中性点を接地していないので、地絡電流が小さく、故障時に電磁誘導障害が発生しにくいため、高圧線と弱電を共架することが多い配電線では大きなメリットとなる。
 デメリットとしては、地絡時の健全相の対地電圧上昇が大きいこと、長距離線路の場合はフェランチ現象により電圧上昇のおそれが挙げられる。

(2)直接接地方式

 中性点を直接接地する方式で、187kV以上の超高圧系統に適用される。1線地絡事故でも、健全相の電圧上昇がほとんどないため線路・機器の絶縁レベルを抑えられる。電圧が高いほど絶縁レベルを高めるためのコストが大きくなることが超高圧系統で使用される理由となる。
 地絡電流が大きいため過渡安定度が低下するが、保護リレーの動作が確実なので、高速遮断器との組み合わせで0.1秒以内に地絡事故を遮断することができる。
 デメリットとしては、通信線への電磁誘導が大きくなるために架空地線のアルミ電線化といった電磁誘導障害対策が必要となる。

(3)抵抗接地

 1線地絡事故時の電流が100A~500A程度となるような抵抗で接地する方式である。22kVから154kVまで広く採用される。地絡電流を抑制することができるが、健全相の電圧上昇は大きいため絶縁レベルの軽減はできない。
 地絡電流を抑制するため、地絡継電器の事故検出機能は直接接地方式よりも低下する。これを補うため地絡継電器として零相電圧と地絡電流を組み合わせて動作する方式のものが多く使用される。

(4)補償リアクトル接地方式

地中ケーブル系統に抵抗接地方式を適用する場合に、接地抵抗と並列に補償リアクトルを設置する方式である。6kV~154kV系統に採用される。
ケーブルの静電容量に対してそれを補償することで、静電容量が大きい系統でも地絡電流の抑制が可能である。

(5)消弧リアクトル接地方式

商用周波数において、対地静電容量と直列共振するようなリアクトルを設置する方式である。直列共振させることで零相インピーダンスを無限大にして地絡電流を流さないことが目的である。地絡事故が発生しても、当該送電線を遮断せずにアーク電流が自然に消弧する。このような特徴から、雷の多い送電系統(66kV~154kV)に採用される。 
この接地方式では通信線などへの誘導障害は小さいが、1線地絡時の健全相の電圧上昇は抵抗接地方式と同程度である。
 また、系統条件の変化すると静電容量が変化するため、消弧リアクトルのリアクタンスを合わせる必要がある。


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