エネルギー白書を読んでみる【vol.3】
第2部 部門別エネルギー消費の動向
第1章 国内エネルギー動向
第3節 一次エネルギーの動向
より
再生可能エネルギー
再生可能エネルギー(再エネ)は、化石燃料以外のエネルギー源のうち永続的に利用することができるものを利用したエネルギーであり、代表的な再生可能エネルギー源としては太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等が挙げられる。
太陽光発電
太陽光発電には、天候や日照条件等により出力が不安定という課題がある。導入が進展する地域においては、午前の残余需要減少及び夕方の残余需要増加の度合いが以前より急激になっており、系統運用上の課題となっている。太陽光発電導入量が多い九州エリアではこの問題が特に顕著であり、太陽光の出力変動に対し、火力、揚水等だけでは調整が困難になり始めたため、2018年10月に計4日、離島を除き国内で初めてとなる太陽光の出力抑制を実施された。
太陽熱利用
太陽エネルギーによる熱利用は、古くは太陽光を室内に取り入れることから始まり、積極的に利用され始めたのは、太陽熱を集めて温水を作る温水器の登場からである。太陽熱利用機器はエネルギー変換効率が高く、新エネルギーの中でも設備費用が比較的安価で費用対効果の面でも有効であり、現在までの技術開発により、用途も給湯に加え暖房や冷房にまで広げた高性能なソーラーシステムが開発された。
太陽熱利用機器の普及は、1979年の第二次石油危機を経て、1980年代前半にピークを迎えたが、1990年代中期以降は石油価格の低位安定、競合するほかの製品の台頭等を背景に新規設置台数が年々減少している。
(2020年では新規設置台数は17千台程度)
風力発電
風力発電は風の力で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えて電気を起こす発電方法である。2020年末時点での導入量は、2,554基、出力約444万kWであるとともに、未稼動分を含めた固定価格買取制度による認定量は1,558万kW、そのうち約3割は東北に集中している。これらの案件が順次稼動すれば、太陽光同様出力変動の問題がより大きくなり、出力変動に応じた調整力の確保や系統の強化が課題となっていくことが予想される。
他方、日本の風力発電導入量は、2020年末時点で世界第21位であり、これは、日本は諸外国に比べて平地が少なく地形も複雑なこと、電力会社の系統に余裕がない場合があること等の理由がある。そのような課題に直面しつつも、再エネの中でも相対的にコストの低い風力発電の導入を推進するため、電力会社の系統受入容量の拡大や、広域的な運用による調整力の確保に向
けた対策が行われている。
バイオマスエネルギー
バイオマス(生物起源)エネルギーとは、化石資源を除く、動植物に由来する有機物で、エネルギー源として利用可能なものを指す。特に植物由来のバイオマスは、その生育過程で大気中の二酸化炭素を吸収しながら成長するため、これらを燃焼させたとしても追加的な二酸化炭素は排出されないことから、「カーボンニュートラル」なエネルギーとされている。
日本において2020年度に利用されたバイオマスエネルギーは原油に換算すると1,766万klであり、一次エネルギー供給量46,395万klに占める割合は3.8%である。
いずれの類型・原料種についても、原料バイオマスを長期的かつ安定的に確保することが共通の課題となっている。
水力発電
2021年3月末時点で、国内には未開発地点は2,660地点(既開発・工事中の約1.3倍)であり、その出力の合計は1,916万kW(既開発・工事中の約3分の2)に上る。しかし、未開発の一般水力の平均発電能力(包蔵水力)は7,203kWであり、既開発や工事中の平均出力よりもかなり小さい。開発地点の小規模化が進んだことに加えて、開発地点の奥地化も進んでいることから、発電原価が他の電源と比べて割高となり、開発の大きな阻害要因となっている。今後は、農業用水等を活用した小水力発電のポテンシャルを活かしていくことが重要になります。小水力発電は、地域におけるエネルギーの地産地消の推進につながる。
地熱発電
地熱発電は、地表から地下深部に浸透した雨水等が地熱によって加熱され、高温の熱水として貯えられている地熱貯留層から、坑井により地上に熱水・蒸気を取り出し、タービンを回し電気を起こす発電方式。二酸化炭素の排出量がほぼゼロで環境適合性に優れ、長期に安定的な発電が可能なベースロード電源である地熱発電は、日本が世界第3位の資源量(2,347万kW)を有する電源として注目を集めている。
地熱発電の導入にあたっては、地下の開発に係る高いリスクやコスト、温泉事業者を始めとする地域の方々等地元の理解や、開発から発電所の稼動に至るまでに10年を超える期間を要するといった課題がある。
未利用エネルギー
「未利用エネルギー」とは、夏は大気よりも冷たく、冬は大気よりも温かい河川水・下水等の温度差エネルギーや、工場等の排熱といった、今まで利用されていなかったエネルギーを意味する。
具体的な未利用エネルギーの種類としては、
①生活排水や中・下水・下水処理水の熱
②清掃工場の排熱
③変電所の排熱
④河川水・海水・地下水の熱
⑤工場排熱
⑥地下鉄や地下街の冷暖房排熱
⑦雪氷熱等
がある。近年、地方自治体等が中心となった雪氷熱利用の取組が活発化しており、農作物保存用の農業用低温貯蔵施設、病院、介護老人保健施設、公共施設、集合住宅等の冷房用の冷熱源に利用されています。
また、清掃工場の排熱の利用や下水・河川水・海水・地下水の温度差エネルギー利用は、利用可能量が非常に多いことや、比較的に都心域の消費に近いところにあること等から、今後さらなる有効活用が期待される。