見出し画像

ラジオ『ジャズトゥナイト』 正月放送後後後

写真は「ゴゴゴ」

 刮目せよ。ゴゴゴだけではない。ニニニもだ。そう、ダブルだ。ダブルといえば年明けのラジオ番組『ジャズ・トゥナイト』正月特番。大友良英 菊地成孔 両名の対談は放送2回に別けるてんこ盛り。発見と学びあり。そういうことで各回毎をかいつまみ思うことを記載したい。

 時系列は前後いたしますが、まずは此方から。
・2024年1月13日『菊地成孔再び&ブギウギとジャズ』
 この回は楽曲提供を入り口に、文化関連の労働環境に踏み込み、時代と作成環境、開かれた世界に挑む切り口が面白かった。
 菊池成孔曰く、劇伴から楽曲者のストレスが伝わってくる。その要因にコンピューターが出来た事が関係する。監督ががっつき、求められるM数も多く、(曲数のことだと思われる)消耗し、結果音楽にそれが滲み聞こえてくるとのこと。
 そこでギルド(工房や集団作業を指す)制を導入し、ストレスを誘引するエゴを踏破するというものの考え方が面白い。
 通常依頼を受けて制作するのが「ギルド」であるが、請負のワークフローから脱し、提案営業のように楽曲を展開し、ステム(楽器パートごとのレイヤーのようなものだと思う)別けに応じるユーザビリティーを導入するのもエゴ脱却がなせる技か。
 意外だったのは大友良英 菊地成孔 両名が「音楽に関するAI導入に肯定的」だったこと。「リズムボックス」「ドラムマシーン」「サンプラー」が音楽家の仕事を奪うと言われてきた過去を鑑みて、技術革新の一環として捉えているそうだ。
 集団作業及びAIの導入を行い、知財のように楽曲データを販売展開していく姿に、音楽家ならではのスタートアップ企業というものを思う。

 音楽に限らず、日本はなんだかんだである時点からAIを率先して取り入れてそうな気がする。何故なら構造維持が目的化しているため。
 難易度「日本」は文化関連に限らない。職人や小売サービスの労働環境も長年酷い。賃金、休日、労働時間、全て駄目だ。これらは成り手の継続を阻害し、外国人労働者が従事し維持されている環境といっても過言ではなくなりつつある。
 林業の100年先を見据えるようにAIを使う側の人間が育ってなければ、AI導入後も内向きの姿勢が続けられるかと推察いたします。
「使い減り対策」と「制作の楽しさ」この二軸は大きい。内向きな文化活動は経済にも繋がる。経済が先か文化が先か、バブル崩壊前後遅滞後退の末に経済も文化も縮退し続いている。
☆そもそも国立博物館が予算不足からクラウドファンディングに頼るとはどういうことか。

 内向きの経済は縮退し、海外に工場は残った。というのがこの数年を表す言葉になるかと思う。宿題は縮退していることを誰も気づかないふりを続けていることではないだろうか。
 方や集団作業に損耗することを苦手とし、方やギルドという組織論を語る両者の対比。両音楽家が社会にどのように接してくかの違いが浮き彫りになり、音楽という根幹で繋がるが、互いに違うことが面白い。

「消耗し甲斐のない制作。こなすことしか考えてない不毛な制作環境」作り手からの重要な訓戒が胆管に突き刺さる。

 ここまでが前半。
 後半は『ブギウギとジャズ』 往年の楽曲が選曲されている最中に速報が入る。14日未明鹿児島県の諏訪之瀬島すわのせじまが噴火。
 懐かしのジャズと交互する速報に、特撮映画の始まりを思う。
 2024年1月1日の地震といい、連日巻き起こる年初めは何かとドラマじみていますが、そんな中でもどっこい生きてく放送でございます。
 私も今年も無理せずやれることをやりますと思います。
☆ラジオアーカイブを1月14日に聴いた際に耳に出来たが、以降速報は削除されている。

 じゃあ次。

・2024年1月6日放送『新春ジャズ放談』
 この回のMiles Davisが若い世代からケツを叩かれ回春したという話が、音楽学校の運営と、異なる世代と共に楽曲制作をする菊池氏のギルド制導入と繋がっているように思えます。
☆"Miles Davis - Pinocchio"選曲前の話し

 選曲された"Miles Davis - Rated X"にド肝を抜かれました。
 始まりはペラいオルガンで「うわ……俺の嫌いな音だ」と思うやいなや、ドラムの入りがべらぼうにかっこいい。なんか不穏です。鬱積しているというか。邪心を孕むというか、初めて耳にし、不気味な笑みが浮かび上がり我ながら薄気味悪く、繰り返し聞きました。だってこういうの好きだもん。
 Rated Xこの曲がMiles Davisではなくとも私は好きです。というかこれのどこがMiles Davisと思えるのか。
 似たような匂いを感じていたのですが、……思い出した! バンド"Super Numeri"だ。アルバム""The Welcome Table"を思い出しました。
 検索チェキ。するとアルバム"Great Aviaries"のレビューにMilesの旦那が邪悪な実験的な頃を思わさせられるようなことが書いてあり、邪悪な実験とかは私の方で盛ってるので正確ではないんですが、兎に角素敵です。
 ということでRated X素晴らしいです。耳管に突き刺さる。
 良い!だもんでCD買った。レコード欲しいです。

 最後に、NHKラジオ番組制作陣営には出来れば毎月、無理であれば4ヶ月毎に両氏の放送回を願いたいです。

 私からは以上です。

バイクを買うぞ!