三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第4回「数段上に」
1962年12月14日 金曜
マリナー2号世界初の地球外惑星への到達。
1959年8月27日ケープ・カナベル空軍基地から打ち上げられたアトラス・アジェナBロケットから約3か月後に金星に約35kmまで接近。世界初のフライバイにも成功。
■マリナー2号
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%8A%E3%83%BC2%E5%8F%B7
■アトラスロケットについて (JAXA)
http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/atlas.html
「我が社より常に遠くへ・・・か」と、宗弐郎は溜息に混じった思いを零し、過去の打ち上げ結果資料へ目を通す。
■三河1.1号
・最大到達高度約18km(18162m)
三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第2回「空へ」
https://youtu.be/YV2HoEyCALg
ただ空に打ち上げ、地上に無事戻ってくることがやっと。記録されている最大高度は成層圏の入り口を少し潜ったに過ぎなかった。
「向こうは重力の外に。此方は」 エンジンとコントロールユニットを搭載し、計測機器などの装置を取り除いた上でなんとか到達した到達高度。
その後、打ち上げ回数を重ね大気調査や各種実証経験を重ねたが、アメリカ及びソ連邦の宇宙開発技術と比較すると遥かに劣っていた。
ロケット開発の技術蓄積とテストは続く。
「もっと強力なエンジンが必要だ」
嘆いていても仕方がない。まずは出来ることと。目指す目標の策定。そしてそこへ向けての修正を重ねる日々、やり手の宇宙センターディレクター、ジーン・カーマンがまた世界中の変わりも・・・ものず・・・依頼主を見つけてきたぞ。
「RT-5 フリー 固体燃料ブースターをカービンの上空に運搬せよ」
写真:次の物好きは此方です。フルーイド流体力学研究所さん
豊田宗弐郎。戦中に開発していたロケットエンジン技術を戦後のどさくさに紛れて会社敷地内に埋め、それを掘り起こし開発したRT-5フリー エンジン。一度火を入れると爆散するか、固体燃料を燃え尽きるまで使い尽くしぐたりするかの始動させた後はシンプルな構成。
世界はシンプルだ。動くか止まるか。
打ち上げ成功後、繰り返される実験と成功報道が遠い海の先の団体に興味を持たれ、アメリカ、ソ連意外でロケットを打ち上げる向こうから見たら「モノズキ ノ アジアジン」に依頼が舞い込む。
しかし、ここで問題が。
依頼主はこの豊田宗弐郎のエンジンがどこまでやれるのかを試すつもりなのか、それとも蔑むつもりなのかは知らないが、この「それ以外に選択肢がない」RT-5エンジンに無理難題を突き付けてきた。
A)飛行中
B)高度:41km~46km
C)速度:80m/s(288km/h)~288m/s(864km/h)
今迄に達した最高到達高度の2倍以上。尚且つ指定高度範囲に収まり、速度も指定さてている。
単純に指定高度以上という要求であればエンジンパワーを増せば可能。そのエンジンさえあればだが。しかし、この度の依頼主は範囲していを高度、速度まで要求している。
「成層圏内でしょうね。成層圏内でRT-5エンジンの動きを見たいと言ってますが、我が社がどれ程の技術、エンジンも含め、どれ程の開発運営能力があるか測っているんでしょう」と、ジーン・カーマン。
■成層圏(ファン!ファン!JAXA!)
https://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/103.html
この当時の宗弐郎の日記を読むと「あのバカ。めんどくせえ客を見つけてきやがって」と書かれていた。
世界はシンプルだったはずだが、面倒なことを言い出したぞ。
成功すればまた違った世界が見えるだろう。失敗すれば違約金を支払うこととなる。幸いなことにエンジン生産の資金は前金で十分な額を得れる。
それに・・・。
「研究開発センターからTD-12の実証テストをしたいと上がって来ています」と、ジーン・カーマン。
「は? なんだそれ? TD-12って」と、宗弐郎。
「デカプラーです」と、ジーン・カーマン。
「いや、だからそれ何だよ?」と、宗弐郎。
「分離装置です。あの、アトラス・ロケットでも使われていたブースターと本体を切り離す装置です」と、ジーン・カーマン。
宗弐郎はそれを聞き、両切りのたばこに火をつけ、ガツンと煙を吸い。そして吐き、社長室、応接用のテーブル上の大きな灰皿へたばこをトントンと触れさせ、灰を落す。
「AK250E型」と、宗弐郎。
「はい?」と、ジーン・カーマン。
「D51」と、宗弐郎。
「すみません、何ですか?」と、ジーン・カーマン。
「機関車」と、宗弐郎は言い、またたばこをがつんと吸った。
「ああ、機関車」と、ジーン・カーマン。
「ああ」と言い、たばこの煙を吐き「じゃねえよ。お前いきなり型番を相手に伝え、ああデカプラーねってならねえだろ。AK250型。取引先で聞いたが、何のことかさっぱり私は覚えちゃいない。いいか、コッチヘ判るように伝えてくれ」と、宗弐郎。
ジーン・カーマンはデカプラーを説明し、非力なRT-5と言うと宗弐郎の機嫌がかなり難しくなるため、指定高度に達するために「我が社のロケットエンジン」と伝え方に注意を払いながら2段式ロケットの開発実験を行いたいと、相手の機嫌を探りながら上手いこと自分が引っ張って来ためんどくさい物好きのオーダーを達成し、責任が自己に及ばないように尽力した。挑戦という形に角度を変え、実績という方向へ軌道修正し社長を説得した。
年明け、正月休みを開けてからの打ち上げ開発予定がジーン・カーマンによって計画される。
「ええ、そんなのやってみないと判らないよ」と、ロケット組立棟の主宰ヴェルナー・フォン・カーマン博士。兄のジーン・カーマンからの無理な要求に憤りを漏らす。
「頼むよ。そこを。出来ないことより出来る方法で悩んでくれ」と、兄であるジーン・カーマンはここでも自分の責任を回避すべく相手へ抱えている時限爆弾に似た見えないボールを渡す。
「打ち上げるだけならなんとかする。ただ高度制限と速度制限、どっちかにしてくれ」とフォン・カーマン博士。
「両方だよ。両方。障害はあってこそ乗り越えれる」と、ジーン・カーマンは上手いこと良い話にしやがる。「ウソハッッパク」という訛りは「嘘八百」という問題のない、問題のあるニュアンスで発音することが出来るほどにまでに至っていた。
実際の物を造り上げる弟のフォン・カーマン博士は現実的であった。まずは目標高度以上に到達できることが必要と考え、RT-5フリーエンジンをタンデム式2段に設計。無人ロケットを建造し、打ち上げ。TD-12の動作確認。そして到達高度と速度のテスト。得られるデーターから有人型によるコントローラブルに陥る要素を焙りだしていく方式へ。
テスト結果
三河1.9号 RT-5エンジン タンデム二基
高度:59km
速度:999m/s(3.596km/h)
これでRT-5 フリーエンジン。通称燃えるバケツを二段式で41kmを突破することが証明された。
三河1.9α号 RT-5エンジン タンデム二基 ベーシックフィン7枚変則搭載型
高度:55km
速度:960m/s(3.456km/h)
ロケットへ変則枚数のベーシックフィンを搭載することで重量増を意図的に狙い、また翼面積にかかる抵抗値と打ち上げ時の姿勢安定化、落下中安定を図る。結果最高到達高度、最高速度は目標である
高度:41km~46km
速度:80m/s(288km/h)~288m/s(864km/h)
両目標を大幅に超えることが判明。
社長は自分の創ったエンジンを二つ組合した結果に満足をしたが、フルーイド流体力学研究所の要求を上回ってしまう結果をどうにかしないと会社信用度と利益に関わる。
そこでジェバダイア・カーマン飛行士。苗字がカーマンだが赤の他人である枯れ次第だ。
「上でなんとかしろ。ガンバレ。じゃあな」をジーン・カーマンが上手く変換し、飛行士へ押し付ける。
流石にそれは不憫だとフォン・カーマンが初の我が社有人型ロケット成功時の方法、RT-5ロケットエンジンの推進力を気持ちばかり弱めときました方を踏襲。
これで打ち上げ時に飛行士の負担が多少減る。
高高度打ち上げに向け、トラッキングステーションも万全の態勢で追跡。
写真:トラッキングステーション
写真:「嘘八百」 今迄誰もここに来てなかったので施設を本格的稼働は最近になってからです。暇なので何もない日はここで賭け麻雀をやってます
ジーン・カーマンが電話を一本入れる。相手は株式会社伊能光学営業部へ。
「今度オゾン層を抜けて飛行するので、成層圏飛翔時の温度を測ろうと思ってます。なるハヤで来てね」と。流石ジーン・カーマン。温度計ならばそれほどの重量にも空気抵抗にもならないと踏み、打ち上げと同時に科学実験もやる。飛行士の負担は増えるが、まあガンバレ。
写真:三河2号 伊能光学の営業マンが丁寧にも温度計を搭載してくれた
三河2号
遂に有人型の多段ロケットだ。型番を繰り上げ第2号。失敗したら骨は拾えたら拾うぞ。その前に粉々になってそうだけど。
1)RT-5 フリー 固体燃料ブースター タンデム二段式
2)2ホット温度計
高度40km 飛翔時の温度計測
「これで飛ぶの?」とジェバダイア・カーマン飛行士。
それで飛ばしたんです。
三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第4回「数段上に」
https://www.youtube.com/watch?v=XxQ6wsHE7Co
次回予告『これがハマーだ!』