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三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第5回「これがハマーだ!」

1963年7月1日 三河2号ロケットはめんどくさい好き者の要求を達成し、無事生還。更に切り離した一段目二段目目のロケットエンジンを「ひとーつ。ふたーつ」と地球に叩きつけペシャンコに。
地表にゴミを叩きつけた後にぶり返す抗議の電話と投書の数々。誰だ海ではなく陸上に向けてロケットを打ち上げたやつ。

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写真:「デブリ0」 ゴミはちゃんと持ち帰ったよ

フルーイド流体力学研究所の要求を達成。そこから得た経験をフィードバックし、成層圏の大気蒐集。成層圏での気温計測と同時に打ち上げ実験が続けられ、多段式ロケットの分離技術も含め回数を重ねることで打ち上げ成功率は向上して云った。

1963年8月1日 次期ロケットエンジンの開発計画RT-Xの具体性が駆け足で見え始める。愛知県という産業圏、基礎工業技術、大手自動車産業から重工業を支える中小企業。人脈と連日積み重ねる工業技術が何層も重なり異なる目的のための製品設計、加工技術が別の形へ具現化され、新たな部品が。新たな部品の塊が機能品として形として表れていく。

1963年8月28日 マーティン・ルーサーキング・ジュニア "I Have a Dream"演説のニュース。
■ワシントン大行進
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3%E5%A4%A7%E8%A1%8C%E9%80%B2

我々にも夢がある。それは成層圏を抜け出し、中間圏、そして熱圏を越え、大気圏を越えて宇宙へ。米ソに劣らず優れた宇宙進出技術を確立することだ。100km上空へ。
「百式計画」
■空と宇宙の境目はどこですか?(宇宙ステーションキッズ)
https://iss.jaxa.jp/kids/faq/kidsfaq09.html

1963年11月23日
RT5 フリー 固体燃料ブースターから次期ロケットエンジンへ。
RT-XからRT-10ハマー 固体燃料ブースターがお披露目と至る。
燃えるバケツことRT-5の蓋を開けてみれば、RT-10は成功体験を踏襲し、容量を増大化させた安定の改修型。
社長室。
「力強いです」と、フォン・カーマン博士は宗弐郎へ伝える。
宗弐郎も社を代表するRT-5の改修型とのことで非常に満足していた。
「では、実際にテスト型で打ち上げた記録映像がありますので、ご確認ください」と、フォン・カーマン博士。

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写真:三河1号 豆粒のようなかわいい奴。全てはここから始まった

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写真:三河1号Σ実験機 RT-10ハマー搭載

三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第5回「これがハマーだ!」 01
https://www.youtube.com/watch?v=d3i7cQsMMKE
「これは・・・」宗弐郎は手に握った湯飲みを握りしめながら映像へ食い入るように座席から立ち上がり見入った。
「二倍以上です。速度。上昇率も」と、フォン・カーマン博士。
「これを使えば」と、宗弐郎。
「ええ。しかし問題があります。テスト打ち上げ映像、搭載した記録装置が上昇時の加速重力により故障し、詳細は不明ですが対流圏内で想定場の加速から摩擦熱による熱爆発が」
「つまり?」
「身重なRT-10は一度火が点けば燃え尽きるか、爆発するまで進み続けます。推進力を減衰し制御可能な値が狭量で、手懐けるまでには至っておりません。怪力な猿が棒を持って暴れているようなもので」
「では、重量を増せばいいじゃないか。質量を増やし、その暴れるさるが持ち上げるのにやっとな状況へ傾ければ、そいつも暴れることが出来ないだろ?」
「その場合、加速率上昇率を抑えることは出来ますが、傾いた重量は倒れ始めると転がるように制御が」と、フォン・カーマン博士が伝えたところでノックが二回。社長室へ彼がやってきた。

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写真:ジーン・カーマンが次の物好きを連れてきた。あのマクソー・ブロック社だ!

スポンサーの要求仕様を読みこむ三名。
A)RT-10 ハマー固体燃料ブースターを搭載
B)飛行中
C)高度:13000m(13km)~1800m(18km)
D)速度:320m/s(1.152km/h)~470m/s(1.692km/h)

「冗談じゃない。こんな低高度、こんなの対流圏じゃないか。我々は航空機メーカーじゃないんだぞ」とフォン・カーマン博士。
「そんなことは判っている。米ソに対抗出来る技術としてアピール出来るいい機会だと考えれないのか? 彼らは高い所へ既に到達したが、我々は低い高度でも制御できることを世界へ証明できるチャンスだと」とジーン・カーマン。得意の屁理屈をかますが、社長もその甘言へ思考の質量を傾け始める。
「とてもじゃないが無理だ。高い所へ向かうために実証実験を重ねてきた。それの真逆じゃないか。空気の壁を突破するための制御に難が残る中、空気を薄めた高さで制御なんて」とフォン・カーマン博士。
「やってみよう」と宗弐郎。
「実はさっきフォン博士と話していたんだが、RT-10 ハマー。あれの制御方法についてだが、重さを減らすことを考えてきたが、その反対に重さを増すことで推進力を制御できるんじゃないかと」と宗弐郎は重ねる。
「滅茶苦茶です。先ほどの話しは上昇、空へ向かっての話しじゃないですか」フォン・カーマン博士。
「あー、一応向こうは『変形して欲しい。ダメならAパーツとBパーツを空中で合体でもいいです』に、そんなこと出来るわけないじゃないですか。とは断ってるんだよね」とジーン・カーマンは飽く迄も自分は協力的に物事を建設的に進めて話を持ってきたという主張にこの社長室の角度を変えてきやがった。
「もう知らん」とフォン博士は思った。
「是非やってみて欲しい。博士」と宗弐郎。
世界はシンプルだ。止まるか、進むか。
時間はもっとシンプルだ。刻み続けられる一方向性。

1964年2月7日 金曜 午後1時30分 三河3号 完成

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写真:三河3号 玩具メーカーのデザイナーが書いたラフプレイなスケッチを元へ近づけた力作。今までの鉄塊と比べキッズの心を掴むデザインが見え始まる。プラモ化も目指してパテントだ!

三河3号
1)RT-5 フリー 固体燃料ブースター4基搭載
2)RT-10 ハマー 固体燃料ブースター1基搭載
3)Mk12-R ラジアル型ドラッグシュート2基搭載

1)について
RT-5を左右に二基。計4基搭載。二段式。重量増と推進力を図り。
「もうハマーを積んどきゃいいんだろ?RT-5で打ち上げた後、低進飛翔させ、高度、速度を達成させたあと、徐々に上昇」とフォン博士。
2)について
「だから抱えとけばいんだよ。お客さんの要求を達成のために。ジェットエンジンとロケットエンジンじゃ求める対象が違うんだから。小松崎茂の世界に現実世界は追いついてねえよ」とフォン博士。
■SFメカニック・ファンタジー 小松崎茂の世界
https://www.amazon.co.jp/dp/4947752939/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_nbWBEb79SYZBN
3)について
人命優先。安全対策のためにドラッグシュートを搭載。
パラシュート解放限界速度以上の場合に備える。

空力は風洞実験では大枠では問題無しとは判断したが、実際には「あるに決まってんだろ」とフォン博士。

「これで飛ぶの?」とジェバダイア・カーマン飛行士。

「すまんな。それで飛ぶんだ。ヤバくなったら直ぐに脱出してくれ」とフォン博士。

1964年2月10日 金曜 午後7時30分
三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第5回「これがハマーだ!」
https://www.youtube.com/watch?v=BUBm2CDPOFk


■ハイフンの見落としで打ち上げ失敗… NASAの教訓
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/17/121100020/020200005/

次回予告『地脈』


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市川 にこ
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