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三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第9回「テストフライ」

1964年10月12日 月曜
LV-T45 スゥイーベル液体燃料エンジンを使用する三河4号Σロケット 実験機へのFL-T200 液体燃料タンク組み付け作業を開始。
作業は順調に進むが、ロケット組立棟内で流すラジオ、オリンピック中継に一喜一憂し作業員の手が止まる。そこにフォン博士からの失跡が飛び、やや遅滞化した進捗。
1964年10月16日 金 午前
オリンピック中継中のラジオが中断され速報を知らせる。
「中華人民共和国 原爆実験を成功」と。
世界に五番目の核兵器保有国が誕生した。
社長室の内戦が鳴り、そして次にロケット棟の内線が鳴る。
「ロケット棟。フォンだ。何か?」
「今すぐ大気中調査に上げれるロケットはあるか?」とジーン・カーマン。
「無理だ。次の打ち上げに向けて建造中のしかない」とフォン博士。
「くそう、ラジオは聴いたか?」
「ああ、聞いていた。世界に五番目の奴が産まれたらしいな」
「伊能光学から『大気調査用にGoo格納ユニットを提供するので調査してほしい』と。無償らしい」
「残念だよ」とフォン博士。
「まったくだ」
「また破壊のためのエネルギーが誕生したことが」とフォン博士。
「ああ、まあ・・・そうだな」とジーン・カーマンは自分の考えと異なる暫時足る思いに合わせるような相槌を打ち内線を切る。
「平和の祭典開催中に、強烈な熱線の冗談かよ」と零し、ロケット棟内のオフィースから立ち上がりつつあるロケットを見るフォン博士。
■世界の核実験 ロイター
http://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/rngs/NORTHKOREA-MISSILES-LJA/010050ZS28L/index.html

「世界が強烈な核兵器、生物兵器、化学兵器で自滅するのか。猿による猿の集団自滅行為になるかは私は未来を見ることが出来ないので知る由もない。ただ地表から空へ人を載せ打ち上げることしか出来ない」とこの日、彼の手記にはそう書かれていた。

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写真:ジーン・カーマンが次の依頼主を見つけて来たぞ。ステドラー・エンジニアリングから依頼が舞い込む。実現可能な指定高度だ。トレイエット・カーマンの占いってすっごく示唆的だね。それとストイックだけどふんづまった企業が多いんですね。

1964年10月24日 土曜 東京オリンピック閉会式
アジアで初の開催となった平和の祭典、東京オリンピック閉幕。


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写真:三河4号Σ 初の液体燃料エンジンを使用した実験機。これであの一度火が点いたら燃えっぱなしのでくの坊バケツと違い、燃料を燃やす量を調整出来るぞ。

三河4号Σ
1)LV-T45 スゥイーベル液体燃料エンジンを搭載
2)FL-T200 液体燃料タンクを三基搭載

「これで飛ぶんですか?」とジェバダイア飛行士。
「1)についてだが、ジンバル角度を最大角15°に制限している。が、安定制御を考えると打ち上げしばらくは真上を向いておけ」とフォン博士。
「しばらくってどれくらい?」
「しばらくだ。2)についてだが、第一段のFL-T200のタンクが空になってからあたりから操作を始めてみてくれ。いいか、燃料が刻々と減っていく。つまり、重量、重心が比例して変化する。最大噴射のままで姿勢を急激に変えることは危険だ。何事も徐々に動かしてみてくれ。燃料噴射量が今回は調整出来ることをお忘れなく」とフォン博士。
「何か今日の説明って『1)や2)について』って変わった口調で話すんですね」とジェバダイア飛行士。
「説明的要約化だ。気にしないでくれ」とフォン博士。

1964年10月26日 月曜 午後5時
三河4号Σ
https://www.youtube.com/watch?v=U91dl6DpZZI

次回予告『安定と不安定の往来』

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市川 にこ
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