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【ネタバレ有り】ゲームを通じて感情移入ということが分かった話 メタファーリファンタジオ

※メタファーリファンタジオ(以下メタファー)のネタバレを含みます、メタファーを触っていない方にも読めるようにゲーム内用語を一般的な言葉に変えています。

今までの僕は自分と同じような属性、出立、思想を持つキャラクターにばかり感情移入していた。だから僕は感情移入ということが分かっていると思っていた。
でも、メタファーのルイというキャラクターに感情移入することを通じて、今までの僕が感じていた感情移入は本当の感情移入とは全く違うということが分かった。

このnoteでは、今まで感情移入するという事柄が分からなかった人間がメタファーのルイにどのように感情移入をして、本当の感情移入を知ったのか。ということについて書こうと思う。


 メタファーで受け取ったメッセージ

メタファーリファンタジオとはどんなゲームなの?
8つの種族がおり、3つの国の連合王国「ユークロニア王国」を舞台としたファンタジー世界のロールプレイゲーム。
ある日王がルイの手によって殺害される。王の死によって王の魔法が発動し「次の王は民意を集めた者が選ばれる」という。つまり選挙をしようというのである。
主人公はルイが王になって暴力が蔓延る世界になるのを防ぐため、また主人公が信じる幻想のような世界に近づくため、選挙に立候補して仲間と共に旅をする。

メタファーはメッセージ性が強く、シナリオからもゲームシステムからもしっかりとメッセージを受け取った。
例えば、キャラクターが新しい力を手にするときにささやく天からの母の声、自分を支持してくれる人たちとガッチリと手を掴む支持者システム、そして力の源が人々の不安や恐怖によって生まれており、その不安や恐怖から逃げれば不安や恐怖が暴走してバケモノになってしまう、逆に不安や恐怖に立ち向かえばバケモノを倒す力を手にいれるという設定、シナリオ。
その中で感じたメッセージは、「不安に立ち向かえばその不安は力になる、そしてその不安に立ち向かうのは一人ではなく、仲間がいる」ということ。

いつの間にかルイに感情移入していた


ルイ・グイアベルン
敵陣営で実力主義の思想を持ったラスボス
圧倒的な強者として描かれていてカリスマ性がありカッコいい
バケモノをたくさん作って生き残った人間が進化する世界を望んでいる

クリアした後に最初に出た僕の感想は「人の善性を信じて人は変われると声高に語る主人公たちが、なぜラスボスとしてルイを殺したんだ!ルイだって一人の人間じゃないのか!」だった。
なぜなら僕はルイの圧倒的なカリスマ性に魅了され、ルイに感情移入していたからだった。

もちろん僕はルイのように圧倒的な力を持っていないし、バケモノが蔓延る世界を作って生き残った人間が素晴らしいとする弱肉強食のような世界を望んでいない。

ではなぜ自分と違う、ルイという人間に感情移入していたのか。
最初はルイが持つ裏表のなさ、圧倒的なカリスマ性、そしてある種の運命論者としての立ち振る舞いに憧れていた。
しかし、終盤ルイの悲しき過去が語られる。本当は主人公と同じ人種であり、過去に故郷を焼き払われていたことをルイは語る。
そこで僕はルイに同情をしてしまった。黙っていれば誰もが気づかなかったであろう悲しき過去をルイ自身が話してしまうというルイの弱さに。

だから僕は人は変われると言う主人公がルイのことを救うのではなく、殺したことに憤ってしまった。

メタファーにおけるルイの役割

ただ、メタファーのシナリオ的に考えれば、ルイは確かに殺されなくてはいけない存在でもあった。
メタファーを一言で言えば、プレイヤーが幻想を信じることと実力主義どちらかを選ぶ物語であり、ルイは実力主義の象徴として位置付けられているからだ。

それは王子とルイが同じ幻想小説を持っていること、主人公が青と黄色のオッドアイをしており、王子が青の目、ラスボスのルイが黄色の目を持っていることに表れている。つまり、青の目が幻想を信じることを、黄色の目が実力主義を表しており、主人公(プレイヤー)がどちらの心も持っていることを表している。
最終的には主人公(プレイヤー)は青の目を持つ王子と合一化して両方の目が青の目になり、ラスボス戦直前でのルイとの話し合いでは「幻想を信じる」と宣言する。

ラスボス戦直前のルイとの会話
ちなみに実力主義の選択肢を選ぶとエンドロールが流れ、Fantasy is Dead(ゲームオーバー)になる

プレイヤーは幻想を信じることを選ぶために実力主義としてのルイを殺す必要があった。そうすることでプレイヤーはハッピーエンドを迎えることになる。

気持ちが落ち着いた今では、メタファーというゲームにおいてルイが殺される意味があったことが分かり、主人公(プレイヤー)の選択肢に納得している。
他の人にもおすすめすることが出来る良いゲームだった。

今までの感情移入と考えていたものは自分を投影していただけだった。

今までの僕は、自分と同じような属性、出立、思想を持ったキャラクターにしか感情移入することが出来なかった。
それは感情移入ではなくて、ただ自分のようなキャラクターを自分のように扱っていただけ、ということに気づいた。

自分と同じようなキャラクターが可哀想な目にあって哀れんだり、くすぶっていたりするのを見て安心したり、そういう自己投影、もっと言えば自己憐憫を感情移入だと思って楽しんでいた。

しかし、ルイに感情移入してルイが殺されたことに憤り、納得するために考え、主人公(プレイヤー)として自分がルイを殺したことに意味を見出したという経験を通じて、今までの自分が考えていた感情移入は自己投影していただけということが気づいた。

本当の意味での感情移入を知った僕は、今まで楽しめなかった物語を今ならもっと楽しめるかもしれない!と思って非常にワクワクしている。
これからもゲームを通して僕は旅をして新しい自分のことを知っていきたい。

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