ストリートピアノの闇
街を歩くとどこからか聞こえてくる、ピアノの素敵な音色。
素敵な音色っていいですよね。
まるで空から音色の帳が降りてくるみたい。
一瞬で異世界に誘ってくれる。
それはどんな世界かしら?
くすんだ桃色で栗の花の臭いがする、人の不埒な欲望が、まきぐそのようにとぐろ巻いた世界。
皆様の地元にストリートピアノってありますか?
僕の地元にもあるんです。
場所によっては全く相手にされていないピアノもあるのですが、僕の地元はわりと人気なのです。
人気になって人が集まると何が起こるのか。
混沌
地元のストリートピアノにはちょっとしたグループというか、界隈みたいなものが出来ているんです。
そのメンツってのが個性的な人がちらほらと見られましてね。
通りすがる度に興味深く拝見させていただいております。
いつも昔のアニソンや、昔の歌謡曲を弾く方がいましてね。
僕は幼少期にピアノを習いに行ったことがあるのですが、二回ぐらいで行かなくなったレベルなので、正直なところ上手下手はわからないのですが、その方の弾くピアノは速くて、けたたましいだけでうるさい。
僕よりは上手いんでしょうけど、[俺、速く弾けてて凄いでしょ?]という、大学の軽音学部のハードロックギタリスト的な心のうちが見えてきましてね、頼んでもいないのにイカの臭い漂ってきそうな空間を演出してくださる。
けたたましいだけってのもどうかと思うのですが、上手いんだろうしうるさく無くとも聞くに堪えないピアノを弾く奴がいるんです。
楽曲はどこかで聞いたような、イージーリスニングみたいな甘〜〜いやつ。
本人的には流麗な調べを弾いていらっしゃるのでしょう。
それは弾いてる姿、指使いからして流麗さを体現しており、ヌルヌルとしつこくまとわりつくような気を発しておられる。
それでいて、音符と音符の間から助平な魂胆が溢れ出ていて、イカの臭いか、栗の花の臭いが漂ってきそうです。
間は魔物と誰かが仰っていましたが、このアーティスト気取りの下半身脳は己の助平っぷりを発揮しているのです。
露出していなくても助平さの露出狂、ってところですかね。
不埒な者が奏でるピアノは邪に響き、聞こえが良いだけの旋律に誘惑されるのも不埒な者だ。なんてね、僕には言えません。
そんな感じで、うるさくなくても耳障りで不愉快な旋律を奏でいて、迷惑をしております。
僕がイヤホンで聞く素敵な音楽の邪魔をしているのです。
ストリートピアノには正直なところ、辟易しています。
こういった些細なことから、人の浅ましさや欲が見え、人の本質が剥き出しになっている、エキシビジョニストの掃溜め、痰壺ではないのでしょうか。
露出狂は見つかれば、即お縄に掛かりますが、この類の露出狂、エキシビジョニストは捕まらないどころか、堂々と街中でアーティスト顔をしているという不条理。
そんな汚物が幅を利かせている地元ストリートピアノですが、先日、素敵な音楽に出会えました。
それはお母様に連れられて弾いていた園児ぐらいの児童の奏でるピアノでした。
たどたどしく、明らかに間違えていたのですが、その邪心の無い旋律に心を洗われた気持ちになりました。
本当に音楽って良いものですね。