【展覧会感想】ファッション イン ジャパン 1945-2020―流行と社会
ふだんはあまり美術館などに行かないわたしですが、ファッション系の展覧会は華やかで明るい気持ちになれるので好きです。
というわけで、のんびり平日に行って参りました、新国立美術館企画展、”ファッション イン ジャパン 1945-2020 流行と社会”
展覧会のタイトルには1945〜とかかれていますが、実際には大正時代に洋服の着用が始まった頃から展開し、戦後、昭和バブル、バブル経済崩壊後、現在に至るまでを丁寧に追っています。
2時間くらいでさらっと見れるかな〜、と思って中でお茶してから14:30ごろに入ったのですが、気がついたら閉館近くなっていて、後半は駆け足でした!
内容の濃い展示で、もっとゆっくり見たかった!
5時間くらいみておけばよかったな・・・・。
プロローグ 1920年代-1945年
和装から洋装へ
子供のころはぼんやりと、日本は明治の開国から段々豊かになっていって戦争でしばらく凹んで、80年代のバブル期あたりで豊かさの絶頂を迎えた、と思っていたのですが、15年ほど前に祖母が死に、大正時代に青春を過ごした彼女の遺品を見るに至ってその考えが大きく変わったのを覚えています。
めちゃくちゃ古いロレックスやカルティエの時計、結婚披露宴のメニューにはキャビアやフォアグラ。
大正の人たちはカルティエをつけてたのか!と驚きましたし、それまでキャビアやフォアグラは戦後豊かになって、やっとバブル期ごろから輸入されるようになったものだと思っていました。
展覧会に展示されている当時の写真の人々も体にぴったりとしたオーダーメイドの、現在とは全く異なる服を着ています。
今の服は、より多くの人のサイズに合うように袖ぐりが緩めだったり、袖や裾も長めに作ってありますが、やっぱり自分だけのために作られた服って素敵ですよね。
なにかすごく豊かな、バブルのような時代が大正にもあったんですね。
1945-1950年代
戦後、洋裁ブームの到来
モンペとか昔は社会科の教科書で見ると、なんだか貧乏臭くて情けない気持ちになったものですが、ストリートファション全盛のいま見るとけっこうかわいいです。
楽とかわいいが同居しています。
戦後の物資のない時代に中原淳一の考案したパッチワークの着物とか、とても完成度が高くてかわいかった。
おしゃれしたい気持ちって大切・・・。
まだオーダーメイドが主流だったようなのですが、同時に洋裁学校に通って、自分で服を作るのが流行したそうです。
そういえばわたしが小さい頃は、縫製パターンを載せた雑誌がいっぱいあった!
1960年代
「作る」から「買う」時代へ
この頃からすでに大丸にディオールとかが入っていたそうで、とても驚きます。
既製服が台頭してきたのもこの頃だそうです。
あと長沢セツさんのスタイル画がめっちゃよかったです。
え、ロック?ミック?という感じです。
1970年代
個性豊かな日本人デザイナーの躍進
バブル前夜でしょうか・・・・、わたしが80年代に憧れたDCブランドが、すでにこの頃からあったということを展覧会で初めて知りました。
こんなふうに青山でブティックを開業して、芸能人の衣装を作ったり、とか、そういったストーリーがとても面白かったです。
当時はなんかわからんけど突然降って湧いた〜、という感覚で捉えてました。
あと、いまとなってはなぜ有名なのかわからないような人も、世に出てきたときの作品を見ると確かに天才だと思える斬新なものや素敵なものばかり。
この時代はホントに前夜です、前夜祭!!!
あとアイビーとかが流行っていて、これはわたしもリアルタイムでなんとなく覚えているのですが、ブレザーがめっちゃ流行ってました。
ポケットに紋章みたいなのが貼り付けてあるやつです。
当時は不良が着て街にたむろしていた、と展示で説明されていて、「いやあんた、ブレザー着て不良ってなによ」ってつっこんでしまいました。
1980年代
DCブランドの最盛期
わたしは80年代に高校生だった「オリーブ少女」ドンピシャ世代なのですが、当時はバブルでNICOLEやBIGIなどのDCブランド全盛期でした。
特にオリーブ少女に人気があったのは中野裕通さんで、彼がデザインしていたVIVA YOUやヒロミチナカノはとてもかわいくてかつ洗練されていて、喉から手が出るほど欲しかったです。
(でもすっごく高かった)
当時オリーブで見て、すごく憧れたバルーンスカートのスーツがあったのですが、その号の雑誌が展示してあってとても感激しました。
世の中はバブルで魅力的なモノがたくさんあるのに、自分は高校生でお金がない・・・少しでも似たものを身につけたくて、やっすいベレー帽を探し回ったり、西友でちょっとでもDCブランドっぽいタートルネックを探したり、はたまた手作りしてみたり、とものすごいエネルギーを費やしていました。
欲しいものが手に入らないことについて、当時は「お金さえあれば!」「うぅぅ、くやしい〜」と思っていましたが、すっかり物欲が失せた今となっては、その強烈な渇望と切望感が宝!と思います。
物欲は生きる燃料ですね!
あのころの気持ち、懐かしい〜。
1990年代
渋谷・原宿から発信された新たなファッション
バブルの崩壊とともにわたしのファッションに対する興味も崩壊したのか、当時の流行などよく覚えていないのですが、展覧会で確認したところ、ソックタッチとルーズソックスが流行っていたと!
確かにありました、そういうの。
そういう流行って、年代が少しずれると全く関係なくなってしまいますよね。
ギャルとかも。
80年代はあんなに物欲の塊だったのに、90年代になるとお店に行っても欲しいものがない、と感じるようになりました。
でも世の中的には新しい世代のデザイナーたちが裏原にショップを連ねたりと、面白い時代であったことを知りました。
個人的には、急速に流行が変わって感覚がついていけなくなったのと、自分が歳をとって「自分が着たい服=似合う服」ではなくなってきて、なにをどう選んだらいいのか戸惑いが大きかった年代でもあります。
過渡期で苦しかった〜。
2000年代
世界に飛躍した「Kawaii」
この頃になると、わたしは「無」です。
展覧会を見ながら初めて勉強する感じでしょうか。
同じ地球にありながらなんも知らんかった!
ロリとかゴスとかギャルの変遷とかストリート系雑誌とか。とにかく勉強になる。
2010年代
「いいね」の時代へ
「くらし系」なんて言葉も聞いたことがなかったです〜。
リラックスした服装が主流になった素地を分析していたり、ユニクロのヒートテックの歴史が紹介されていたり、本当に勉強になります。
いまは服作りのテクノロジー自体が変わっているし、SDGsとかもあるしで、デザイナーや服の流行だけでなく、社会的な取り組みリサイクルなどにも焦点が当てられています。
未来へ向けられたファッション
えっと、2020年前後となりますが、じつは、このあたりになると個人的には90年代あたりで発生したストリート系ファッションが、すっごく大衆化してやっとわたしにも届いた〜!
と感じていたのですが、実際には2010年代に大きな変革があってのことだったんですね。
まさか自分がナイキやアディダスを着る日が来るとは思わなかったYo!
SNSのおかげで雑誌が大きな流行を作る感じでもなく、みんな思い思いに楽で好きな服を着ている感じがする今が好きです。
展覧会は未来のファッションの可能性を示唆してまとめています。
すごく充実した企画展でした。
誰がキュレーターなのかな〜、と思ったのですが特に記載はなく。
新国立美術館の館長は逢坂恵理子さんというキュレーターの方だそうですが。
こういった展覧会のビハインドとかも面白そうですね!
さらっと見て、帰りも館内でお茶してのんびりしようと思っていたのに、結局のんびりできませんでした。
それくらい面白かったので、みなさんにもぜひおすすめします!