続・腰椎ヘルニアのSLRの話
この間書いた腰椎ヘルニアのスペシャルテストのSLRの話です。
少し内容を振り返ると、SLRは腰椎ヘルニアのスペシャルテストですが、陽性率が約6割、10人いたら4人はヘルニアがあってもSLR陽性にならないというショッキングな話でした。
じゃあどうするのよ?
ヘルニアどうやったら分かるのよ?
簡潔に、答えは総合的に診る。
これに尽きます。
病気を診ずに人を診るという言葉があります。
まさにそれです。
総合的にその人の症状を診てヘルニアの可能性を見極めます。
具体的に何をするのか?
筋力テストと腱反射、そして患者さんの症状の訴え方です。
順番にいきますね。
1、筋力テスト
診るべきは、足関節背屈力と母趾背屈力、足関節外反し力。
腰椎ヘルニアの好発部位は?
下部腰椎。
つまり、L4、L5、S1の椎間板に好発しますよね?
その高さから出る神経の運動神経支配は、前脛骨筋と長母趾伸筋、長短腓骨筋。
つまり、足関節背屈力と母趾背屈力、足関節外反し力をチェックして、左右差がない、しっかりとMMT5であれば上記の筋肉は障害されていないことから、対象の神経も障害されていないと判断できます。
2、腱反射
腱反射を診るための専用のハンマーを使います。(決してトンカチじゃないですよ?)
診るべき腱反射は、膝蓋腱反射とアキレス腱反射。
膝蓋腱反射はL4レベルの神経に対応し、アキレス腱反射はS1レベルの腱反射に対応します。
ちなみにL5の腱反射は存在しませんので腱反射は行いませんというか出来ません。
それぞれの方法はググれば出てくるのでそちらに譲るとして、腱反射で現れる反応は、反射が無い、弱い、強い、異常に強いを見極めます。
反射が無い、弱い場合は末梢神経症状、つまり脊柱から末梢にかけて神経が障害されているとこういった反応が出ます。
つまり、ヘルニアですね。
しかし、腱反射で最も気をつけなければいけないのはむしろ、強い、異常に強いです。
これは中枢神経が障害されると出現する反応ですので危険です。
脳、頚椎から腰椎までの脊髄神経の問題だからです。
この場合は患者さんに説明の上近医を受診してもらいましょう。
3、最後に患者さんの訴え方の特徴です
ヘルニアが突出した場合、まず主に左右どちらかの下肢に神経症状が出るのがほとんどです。(稀に中心性ヘルニアといって両下肢に神経症状がでる場合がありますが、僕も今までで数例しか診たことがありません。)
ここでいう神経症状で多い訴えは腰から足にかけて、痛い、痺れるの両方もしくはそのどちらかです。
主に坐骨神経領域(殿部〜大腿後面、下肢外側にかけて)が多く、稀に大腿神経領域(大腿部前面〜下腿)に出ることもあります。
坐骨神経領域の場合はL4,L5,S1、大腿神経領域の場合はL2,L3レベルを疑いましょう。
また、重症度によって違いはありますが、いわゆる普通の腰痛症よりもかなり痛がります。
歩く姿も、腰が伸びずに曲がっていたり、とにかく普通と様子が違うので遭遇したら分かると思います。
以上のことを踏まえて、改めて診察のフローチャートを整理すると、
1、SLR,WLRテストの実施
神経症状が出現したらブラガードテストを実施しヘルニアである可能性を高める。
2、下肢筋力検査の実施
抵抗運動を行い健側と筋力の比較をする
3、腱反射検査の実施
この時のポイントはいかに患者さんに脱力してもらうか。
ただでさえ痛みを感じている患者さんなので余計な力が入っていたら正確に反応が出ません。
このせいで陽生が陰性にならないように気をつけます。
ここまででおおよそヘルニアの有無がはっきりしてきますが、この時点でまだはっきりしない場合は追加でケンプテスト、下肢の知覚検査を追加するといいでしょう。
最後に実際に腰部の視診と触診で見極めます。
触診の際はヘルニアが存在する部分、つまり棘突起のすぐキワを患者さんの様子を見ながら少し強く押すと痛みが誘発されます。
これでほぼヘルニアの有無ははっきりすると思いますし、SHINは現場でこの手順で診ています。
しかし、完璧にヘルニアの有無を知るためには残念ながらMRI検査しかありません。
MRIを取れない我々が現場でヘルニアの存在を知るには僕のやり方を参考にしてもらうといいかなと思います。
ちなみに、柔整師はヘルニア(内科的疾患)を治療は出来ないので、あくまで来院した患者さんがヘルニアなのか腰部捻挫なのかという鑑別としてトライしてみてください。
鍼灸、あん摩マッサージ指圧師などの資格やカイロプラクティックなどで自費治療なんかの時にも鑑別方法として知って置くとプラスになりますし、リスク回避にもなりますのでぜひトライしてみてください。