相手のホンネを引き出すには、したたかさとズル賢さが必要なこと
皆さんは、職場で「相手のホンネが分かればいいのに」と思ったことはありませんか?
相手にホンネで話してもらうには、ただ聞いているだけではなく、したたかさと、ズル賢さが必要です。
日本人は良くも悪くも、内気で静かなことを好む人が多いという特徴があります。そのため、あまり自分の良いところを、積極的にアピールしないという傾向もよく見られるでしょう。
思い出して下さい。学校の授業で積極的に手を挙げて答えていましたか?
「いいえ」と答えた方が多いのでは。
目立ってしまうと、他者から反感を買う可能性があるという考えが、根底にあるからこその特徴です。
この特徴が悪いとは言いません。日本人らしさだと思います。でも受け身のままだと、さすがに相手のホンネを引き出すことはできません。
ホンネを引き出すためには
相手に本当は知っているのだが、あたかも知らないような素振りで質問する。
わざと誤った発言をして、相手にそれを訂正させることで、いい気持ちにさせる。
全然、そんなことは思ってはいなくとも「なるほど、本当にそうですよね」と目を輝かせながら上司の意見に相づちをうつ。
とはいうものの、こんな引き出し方は、ゴマすり野郎みたいでイヤだ!余計イライラして不満が溜まる方もいると思います。
ホンネを引き出す前に、まずは自分のイヤな気分について理解しよう
私はイヤな気分の落ち込み、イライラ、ゆううつ、不安について、その正体を知ることが重要だと考えています。
なぜなら、正体を知れば自分のなかに湧き起こる、すべての感情と向き合う必要がなくなるからです。
このイヤな気分というのは、私たちをむしばむ、意外とやっかいな感情とされています。
さらに、自分に対しての感じ方が否定的な人ほど、イヤな気分になりやすいのは、相手の言動を、自分が自分を見ているように否定的に捉えてしまうからです。
たとえば、おせっかいの人です。
親切のつもりでしてあげたことなのに、相手からちっとも感謝されなかった。それどころか、かえって気分を害されたという経験はありませんか?
混雑している電車であなたが座っていたとします。その前に70代ぐらいの猫背の男性が立っていました。席を譲ろうとしたら「余計なおせっかいだ」とはねつけられた。
もし「譲らなかったら周りの人からどんな目でみられるか」といった気持ちがあれば、それは相手の誇りを傷つけることになるでしょう。
あるいは、あなた自身も人の親切を受け入れられず、「放っておいて」と拒絶したことがあったのでは…
そのときの気持ちは、いったいどうだったでしょうか?
たぶんイライラされたと思います。
多くの人が他者によってイヤな気分を生み出し、エネルギーを消耗しています。
そして物事の捉え方によって、自分に自信が持てず、自分には何の価値もないように思えるとき、気分はゆううつになり、引きこもりがちになります。
自分だけが深く悩んでいるように思え、うっとしい自意識だけがどんどん大きく膨らんできます。
自分が何者なのかもわからず、心の奥では劣等感にさいなまれ「自分はダメ人間なのかも」と思いを抱きながらも、自分の才能が認められないのは、周りの人間が皆欲物で、自分のような個性ある人間を無視してると思ってきます。
まるで自分は善で、他人は悪だという「二極原理」になりかねない。
私たちは日々こういった感情を抱き、気分が上下します。じつはあなたを振り回すのは「イライラ」と「ゆううつ」のふたつしかありません。
なぜなら、イヤな気分とは、つらい気持ちや悲しい気持ちというものではなく、「他者からのリアクションや、物事の捉え方からくる不快な感情」のことなのです。
だからイヤな気分となって、あなたを振り回してしまうのです。
一方、「落ち込み」「不安」は、内省したときに生じる感情であり、あなたを振り回す感情ではありません。
たとえば、新しく配属になった上司が優しいかどうか。隣に引っ越してきた人が気さくな人かどうかなどは、不安に思っていいのです。
いきなり高圧的な態度をとったり、挨拶をしなかったとすれば、関係性が悪くなります。不安だから慎重になるべきなのです。
先が見えないときに生じる不安感情は、あなたを助けはしても振り回すイヤな気分にはなりません。内省力として、あくまでも自分自身のなかで時間と共に完結されます。
しかし、上司に叱られてゆううつだ。家族が言うことを聞いてくれなくてイライラする。これは、他者の存在によって生まれた感情であり、これがあなたを振り回し、エネルギーを奪い続ける原因となっています。
他者から、自分のエネルギーが奪われそうになったら、「自分と他者は違う」と知ると感情が豊かになります。
「あの人はこう言った」けど「自分はこう感じている」や「ほかの人はこうしている」良い、悪いではなく「気づく」です。
人間は偏見を認められず、正当化ばかりするので、自分だけが持っているものはなにか?と自問自答してみることが大切です。
「この人と自分の共通点はなんだろうか?」
「いかにその人と自分とが違うのか?」
原因究明として
「どのあたりからうまく、いかなくなったのか?」
「なぜ、それを止めることができなかったのだろう?」
と質問することが大切です。
イヤな気分の正体を知ったら、あとはうまく自分の感情をコントロールし、相手のホンネを引き出しましょう。
ホンネを引き出すためには、お人よしになってはいけない!
人間関係の多くは、ホンネの探りあいによって決まります。
相手のホンネをつかんだほうが、心理的に優位に立つことができ、会話をリードすることができます。逆に、ホンネを読まれたほうは、相手のいいように振り回されてしまいます。
相手のホンネを読む一方で、こちらのホンネは読ませないということは、相手を制するためにとても大切だからです。
漫画のスラムダンクでゴリが、「リバウンドを制するものは、試合を制する」という名言があります。失礼ですが私なりの解釈としては、リバウンドって泥臭く地味なプレイですよね。
うちのチームは地味なプレイしかできません。守るしかできないと相手に強くイメージをつけさせ、相手に油断させて、焦りを生み出し、スキをみつけて、一気に攻め込む。みたいなイメージです。
でもこれって消極的だから、ダメなんじゃねえのって思い、お人よしになっては、いつになっても相手からゴールは奪えません。
たとえば、仕事でお人よしになって
「本当は、イヤなんだけど、残業してやれば、なんとかできないこともないな」
「約束は約束だから我慢しなきゃ」
などと、考えてはいけないということです。いつでも、だれでもいい顔をしていると、あなたが疲れるばかりで、相手はどんどんつけあがります。
これは心理学的に「コントラスの原理」と呼ばれる法則があります。
いつでも親切でやさしく振舞っていると、相手に感じさせる「親切さ」の度合いが相対的に弱くなっていきます。そのため、少しくらい親切さを高めても、相手は気づかなくなってしまうのです。
親切さばかりをアピールすると、相手のトラップにかかってしまうので、自分のホンネ、自分の望みは、最後まで隠し通すことが必要になります。ホンネを読まれると、言いやすい人、とるに足りない人だと思われてしまうからです。
自分のホンネを隠すためにも、怖い人だと思われることも必要です。
相手の考えは、何でもお見通しだという素振りを身につけ、圧倒的な威厳を感じさせましょう。
「こういう人物には、小手先の方法は使ってもダメだ」とか、「隠し事をしても見抜かれるだろう」と相手に諦めさせるからこそ、相手もホンネを語ってくれます。
手ごわい人物であるという評判が高まるほど、あなたにウソをつく人は少なくなってきます。
なので、怖い人だと思われることを、ためらってはいけません。なぜなら、下手に出れば出るほど、相手はつけあがっていくので、そうさせないことが重要だからです。
そのために必要なのは、「笑顔を見せずに、何を考えているかを読ませないようなポーカーフェイス」に徹することが大切です。
イタリアの思想家マキャベリは「君主論」の中で、
信義を守って、奸策を弄せず、公明正大に生きることは称賛に値しよう。だが、現実の世界を見ると、信義など露ほども意に介さずに、奸策を用いて相手の頭脳を混乱させる人のほうが、大きな成功を成し遂げている。結局は、ズル賢く立ち回っている人のほうが、信義に基づく人を圧倒できるのだ。
と述べています。
ズル賢く立ち回るためには
自分の意見と反対であろうが、とにかく「同意」を示しておく
人と人の意見が、すべての点で一致することは、あまりありません。
たとえば肉がキライだとか、仕事が好きであるとか、髪の毛がショートの女性は好きになれないとか、いろいろな点で、少しずつお互いの意見が違っているのが、普通です。
そこに人間関係の面白さがあります。すべての人間が、まるでクローンのように同じ意見だとしたら、それはそれでつまらないと思います。
部分的に反論したいところがあっても、たとえ気に入らない点があっても、そういう否定的な感情はグッと飲み込み、少なくとも表面的には「同感である」と伝えておくほうがいいです。
たとえば「○○さん、コロッケが苦手なんですか、いや、実は僕もなんです」
このように、同意を示しておくことが、相手との心理的な距離を近づけるために役立ちます。
「ほう、こいつは私と同じモノの見方をするんだな、気持ちのいいヤツだな」と思わせることができるでしょう。
相手の意見に同意を示すということは、人間関係を悪化させないための、いわば「予防接種」のようなものです。
「そうじゃないんだよな」
「あなたの考えには、大きな見落としがあるんですよ」
「その考えは、いささか古い」
などと反対されたら、ムッとしませんか?
もし、そうやって反対してくる人がいたら「もうつきあいをやめよう」とも思いませんでしたか?
自分の意見に泥をなすりつけてくるような人間に対しては、心を開きません。その人を恨み、感情的な反発を覚えるからです。
とにもかくにも、最初の段階では、「同意」を示し続けることが大切です。
相手の存在をそのまま、受け入れているよというサインを送ることで、相手も嬉しさを感じずには、いられないでしょう。
身近にいる、めったに反対しなく、人の話を聞きだすのがうまい人たちがカウンセラー、弁護士、各種相談所の相談員、予備校の先生は、例外なく、相手の話をそのまま受け入れられるのがうまい人たちです。
だからこそ、相手に信用されやすく、他の人なら聞き出せないようなプライベートな情報までも、引き出すことができます。
わざと間違えて相手に「訂正」させる
わざと間違えた発言をする。あるいはウソの発言をして、相手に「訂正」させるというテクニックがあります。
俗にいう「カマをかける」という方法であります。相手もついうっかり、大切なことをしゃっべってしまうことも少なくない。聞きにくい内容なども、このテクニックを利用すれば、簡単に聞き出すことができます。
自分「あれ、総務の○○さんって、たしかバツイチだったんですよね?」
相手「ちがうよ、2回離婚しているよ」
自分「ああ、そうか、そうだったんですね」
とぼけるところに多少の演技力は必要があります。
人間は、間違いを訂正したいという心理が働くので、大変に有効なテクニックです。
カマをかけると「私はあなたの秘密を少しは知っている」というアピールができ、相手も口を割りやすいのです。「あれ、この人も知ってるんだ」と思うからこそ、安心してしゃっべってしまうのです。
相手の頭の中には、自分が重要な情報をもらしてしまったという意識は残らず、ただ、誤った情報を「訂正」したという認識が残るだけなので、なおさら好都合だといえます。
他人に置き換えて質問してみる
相手がなかなかホンネを明かしてくれないタイプである場合、一番の理由は「こんな意見を述べたら、笑われるじゃないか」とか「失礼なんじゃないか」とか、要するに自分のことを守ろうとする意識があります。
そういう守ろうという意識を弱めることができれば、相手のホンネを知ることができます。
そのためのひとつの方法が「投影法」です。
だれか別の人の意見として、その人のホンネを引き出しましょう。
「あなたの個人の意見ではなく、一般人はどう思うと思いますか?」
「あなたの会社の人たちは、どう思っているでしょうか?」
「あなたのような、若い女性の皆さんは、こういう製品をどう思うと思いますか?」
他人に投影させた形で質問してみると、相手も返事がしやすい、自分の意見ではない、という免罪符が得られたような気持ちになるからです。
心に悩みを抱えている人たちは、自分を守ろうという意識が強い。そういう相手に面と向かって「あなたは、どう考えていますか?」と質問をしても、かえって抵抗が起こされるのが普通です。
たとえば不安の強い交渉相手などは「こちらの条件について、あなたはどう思いますか?」と聞くと、ホンネを読まれまいとして、ウソをついたり、黙ってしまいます。
そういうときに「こちらの条件であなたの上司は、納得いただけるでしょうか?」と投影法で聞いてみると、すんなりホンネがわかることもあります。
「別の人」の口を借りると、なぜか責任をとらなくともいいという気持ちになり、素直な意見を述べるときがあります。
自分を守ろうとする抵抗意識が強い人、不安感の強い人などのホンネを探るときに有効です。
ショッピングリスト法を使って、自分のホンネを隠す
最後に、自分のホンネの隠し方です。
ホンネを隠すために「ショッピングリスト法」というテクニックがあります。
たとえば、果物がたくさん入ってるバスケットから、あなたはメロンがほしい。
こんなとき「メロンをください」と言ってしまうと、あなたがメロンを狙っているとバレてしまうので、あえてほしくない果物であるイチゴ、オレンジ、パイナップル、マンゴーなども、あわせてほしいと頼んでみることが効果的です。
人間というのはあまのじゃくなところがあって「Aをくれ」といわれると、とたんにそれが惜しくなってしまうのです。
しかし、「AとBとCをくれ」といわれると、Aだけをあげるときに比べて、悔しさが残らないからです。
まとめ
叱られるのが怖く、親切さや受け身のままだと何も変わらない。
自分のイヤな気分の感情を理解し行動する。
相手にまずは同意し、知らないふりをして、他人に置き換えた質問をし、相手のホンネを探る。
さらに、自分のホンネを読まれないためにも、相手に強く見せることも必要。そのためには、ポーカーフェイスになって、心理的に相手より優位に立ちましょう。
ショッピングリスト法を使って自分のホンネを隠し、ずる賢く相手のホンネを引き出しましょう。
それでは、また。