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【映画のお話】誰もが憧れる「地下室のヘンな穴」

みなさん、地下室好きですか?
映画で地下室って言ったら何か封印されてたり怨霊・殺人鬼の類がいたり死体が隠されたりで散々なイメージですが、入る度に若返る穴がある地下室って良くないですか?

と言う荒唐無稽な設定の地下室を買う中年夫婦に巻き起こる作品、それが

地下室のヘンな穴」2022年

この映画、キービジュアルのポスターのポップさと、とっても素敵な若返りのテーマによって、もしかしたらコメディか?
若くなった奥さんが街でモテモテになっちゃう系か??
そんでもって若くなっても今の旦那が良い!な真実の愛系か???
と思わずミスリードしてしまいますが、そんな事はありません。

ばっちり嫌な感じの映画です。

ストーリーは明快で、中年夫婦が家を探し、たまたま見つけた家に
12時間進んで、3日若返る
穴がある事を知ります。
また、ここで面白いのが、不動産の人がその穴の存在をばっちり認識しており、何なら使い方も熟知しているのです。
まさか不動産だけではなく未知の穴まで知り尽くしてるとは、不動産の仕事も大変ですね。不思議解析手当とかあるんでしょうか。

そんな信じがたい話がありつつも、中年夫婦は不思議な穴のある家の購入を進め引っ越しを行います。
ここからこの中年夫婦の明暗がはっきりと分かれ、夫は穴に無関心、妻は穴に執着をし、事あるごとに若返りの穴に入ってしまうようになります。

最初の内は入る度に3日しか若返りが起こらない為、妻の見た目も変わらず夫は妻の思うようなリアクションをしてあげる事ができません。
リアクションがない夫に妻は苛立ち、得体も知れない穴に入り続ける妻に夫は苛立ち、と言うギスギスした関係が続いて行きます。
そんな中、妻も半ば意地になり、確証を得たかったのか、ある日腐ったりんごを手に持ち穴に入ります。

すると腐ったりんごは元通りのハリのある新鮮なりんごに戻ります。
これを見て妻は確信を得たのか、夫に対し穴の効果について語ります。
またそんな話か・・・と落胆しつつ夫がそのりんごを食べると、中は腐っており、から「大量の蟻」が出てきます。

表面だけの、中身が変わっていない事に夫は不安を募らせますが、妻は気にする事もなくそのまま穴に入り続けます。

来る日も、来る日も

妻にとっては一瞬で、3日若返る行為であっても、夫にとっては12時間、1日の半分妻が居なくなってしまう。
せっかく二人でゆっくり過ごす為の家なのに、物理的に「すれ違い」になった二人の溝はどんどん開いていきます。

そんな日がどれだけ続いたかわかりませんが、ある日とうとう中年だった妻は19歳頃の身体にまで戻ってしまいます。
そして夢だったモデルになるために自分の容姿を売り込む事に。
しかし若くなっただけでモデルに採用されるわけも無く、日々夢を追うのに疲労してしまった妻は精神を病んでしまいます。

そんな妻をどうする事もできない夫は、妻を精神病院に入院させる事を決意し、穴については閉じてしまい、誰にも使えないよう封をします。

せっかく妻が理想の年齢まで若返り、穴を使うこともなくなると思ったのに、ここで妻と夫は離れ離れになってしまいます。
一つの不思議な穴のせいですれ違った二人がこれから元に戻れるかはわかりません。

2人のそれぞれの最後のシーン。
夫はすっかり歳を取りましたが、妻がいなくなっても寂しく無いようにか、愛犬を飼い一緒に釣りをしていました。
妻は病院内で密かにグラスを割り、その破片で自らの腕に切り込みをいれますが、腕の中からは・・・。

最後まで妻と夫が見ている物、手に入れたかった物の違いが判るシーンでこの映画は終わります。

ちなみにこの映画には、この中年夫婦以外にも映画の雰囲気をぶち壊すピーキーな友人も出て来るのですが、正直、なんで存在しているのかわからないくらい映画と馴染んでいないので割愛しました。
もちろん、雰囲気に合わない友人を出す事によって中年夫婦達との対比をさせたいとか、作り手側の意図はあるのだと思います。
ただ、この映画は1時間ちょっとと言う少し短めの映画なので、恐らくこの映画を観た人は、そんな友人のシーンに時間使うならもっと中年夫婦を深堀しろよ・・・と思うに違いありません。それくらいピーキーでおバカな友人でした。

この映画を観て思い出したのは、今の記憶を持ったまま若返ったらどうする?と言うような与太話でした。
そう言った話をする時、本当にそうなったらどうなるか、なんてそこまで真面目には考える事が無いかと思います。
もし、もう少し若ければ、そう言い聞かせて悔やんでいた人が、実際に若返った所で、成しえなかった理由が若さだけでは無いと分かった時、人は壊れずにいれるでしょうか。

人生は知らなければ良かった事が多々あります。

妻の若さへの執着を知ってしまっても止められなかった夫
若さだけではどうにもならなかった事を知ってしまった妻

どうかみなさんも、不思議な穴があっても迂闊に入らぬようお気をつけくださいませ。

このレビューが誰かの映画ライフを良き物にしてくれますように。

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