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ホームレスにオゴラレテ

高校3年の時にホームレスの方から
温かい缶コーヒーをご馳走してもらったという話です

両親の離婚後、母ひとりで育てられ
そして、母親の精神的な病気

そういった事もあって
高校生の自分は遠足や文化祭の日などは
学校を休んでバイトをするというくらい
とにかく貧しかった

学校では禁止されているバイト

『 賄いは、付きますか⁈ 』が面接で聞き
嘆願してファミリーレストランで平日の部活後に
バイトさせてもらい、日曜日や祝日は
バイト代のいい日雇いの肉体労働で働く


学校は部活だけを楽しみに過ごしていました。

まかない〔まかなひ〕【賄い】

2 料理人が自分たちの食事のために、あり合わせの材料で作る料理。 最近は「まかない料理」と称する、手の込んだ料理を出す店もある。 

ファミレスのバイト中は
ちょくちょく注文分のフライドポテトなどを
多めに作り手早くキッチンペーパーに包み
バックヤードで貪って空腹を満たしていた

今、考えれば
きっとまわりの大人たちは気付いてても
自分の環境を知って見逃してくれたのだろう

料理長など
『新しいメニューの試作を作ったから
 バイト終わりに食べて帰れ』
なんて事も度々あった。

バイトは楽しかった

バイトが終わると
精神的に病んだ母と対面しなくてはいけない

そんな現実を逃避したくて
ボストンクラブという安いウイスキーや
ジンやウオッカをストレートでラッパ飲みしながら
オンボロのチェーンーのギコギコ鳴る
自転車を漕ぎながら
強制的にグダグダに酔っ払い帰宅
真っ直ぐに自分の部屋にこもる。

ほぼ日々、二日酔いで学校は遅刻
それでも部活に出れれば良かったので
それでもよかった

ある寒い冬の日
2日位酔いの中、自転車で学校へ向かった

財布には100円玉すら入ってなかった

二日酔いの自転車漕ぎ
フラついて何かにぶつかりコケてしまった

その瞬間、心がポッキリ折れてしまった

もう、いい。シンドイ。

頭も心もその想いに支配された

大型旅客船の停泊する港に向かい
人気の無い防波堤に
ひとり背中を丸めて腰掛けていた

冬の寒空、あまりの寒さに耳が痛い

もういい、シンドイ。

なんて思いながらも寒い海に飛び込む勇気さえ無く
ただただ身体も心も冷え切っていた


しばらくすると
誰かが1メートル離れたくらいの左側に
同じ方向を見て腰掛けた

うとましく思った

どうでもいいやと気にも留めることなく
視線すら動かさずに無視するように
ただ荒れる海を無気力に眺めていた

お隣にすわった人の右手が伸びて
何かを置いてひと言も告げずに去っていった

気配は感じたが無視することしか出来なかった

30秒くらいの時間が経過したのだろうか

ようやく自分の横に置いている
1本の缶コーヒーに気付いた

目線で追うと数十メートル先には
自分から遠ざかるボロボロの服と着た
ホームレスのひと

まさか、あの人が⁈

目を疑ったが視界の中にあの人しかいない

缶コーヒーを手で握り締めると
まだ温かかった

缶コーヒを何度か凍えた両手で握りしめた

まだ温かみの残るコーヒーが喉を通ると
すこしだけ身体が温まった

飲み終えた頃には
心まで温まっていた。

『 仕方ない、また、がんばろ 』

海を背にオンボロな自転車を漕ぎ出した


あのホームレスのひと、
大事なお金で買った缶コーヒー
きっと自分のただならぬ様子を見て
どこからか駆けつけてきて何も言わず
横にただ座って差し出してくれた

優しさとがんばれ

あの人は神様だったのかも知れない

あの時も想った、
今でもそう、想っている。


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