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ビリー・ワイルダー          サンセット大通り1950


ビリー・ワイルダーには、「深夜の告白」という古典的なフィルム・ノアールの名作もあるが、こちらはよりディープな世界を堪能できる。
実際にサイレント時代の名女優だったグロリア・スワンソンが、この映画中でも、サイレント時代の名声が忘れられない年老いた女優を鬼気迫る姿で熱演している。映画中でも本人のサイレント時代のムービーが映しだされ、その美しい容貌との衰えた現在との違い、変化が残酷なくらいだ。妄想的に今でも自分に当時同様の人気があると思い込んでいて、若いウィリアム・ホールデンに激しく執着する。
現実と虚構が交錯するつくりになっており、淀川長治風に言うならば、「まぁ、こわいこわい、こわいですねぇ、皆さん」といったところ。
グロリア・スワンソンのサイレントを本当に撮影したセシル・B・デミルが本人の監督役として出演している。大変品格がある。
グロリア・スワンソンのカード仲間として、なんとバスター・キートンまで本人役で出てくる。
なによりも、あのエリッヒ・フォン・シュトロハイムの執事役が目をひく。監督としても性格俳優としても比類のないキャラの強さがこの映画でも圧倒的。そのシュトロハイムにストーリー上で、監督の真似事をさせていて、なんという遊び心だろうか。
初対面時にワイルダーがシュトロハイムに対して「偉大な監督」と賞賛したら、「いや、もっとも偉大な監督だ」と「正確に」訂正した。さらに押しが強いシュトロハイムに監督権まで奪われそうになったという。
映画自体はビリー・ワイルダーらしい隙のない完成度の高いフィルム・ノアールだとしか言いようがない。
ラストでグロリア・スワンソンが、カメラに向かって歩んできてどんどんアップになるところは、こわくて美しくて切なくて仕方がない。


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