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堀辰雄『風立ちぬ・美しい村』
この本には「風立ちぬ」と「美しい村」という二つの作品が収録されているが、決して別物ではなく、「美しい村」から「風立ちぬ」へ続く、二作合わせて一つの物語となっている。
読むに至った経緯
昨年末にジブリ映画の「風立ちぬ」を鑑賞し、その映画の元となった堀辰雄の『風立ちぬ』に興味を抱いた為、読んでみることにした。
美しい村
この本を読み始めてまず感じたことは、風景描写がとても美しく、克明に描かれていることである。山や植物などの自然物だけでなく、建物の佇まいや村人の仕草に至るまで、軽井沢という場所を知らなくても容易に想像できるほど、風景が丁寧に描かれている。
主人公の「私」は、この軽井沢の豊かな自然の中で、絵を描いている一人の少女と出会う。
風立ちぬ
「私」は軽井沢で出会った少女(節子)と晴れて婚約する。しかし、節子は当時不治の病であった結核を患っていた。節子は症状が芳しくないために、山奥のサナトリウムで「私」の付き添いの元、療養することとなる。
節子の病状は日を追うごとに悪化するが、二人の愛はそれと比例するかのように深まっていく。「皆がもう行き止まりだと思っているようなところから始まっているようなこの生の愉しさ」(123頁)とあるが、まさしく節子自身が、もしくは愛する人の人生が終わりにかけているからこそ感じる愉しさなのだろう。そして、節子という女性は強い人だと思った。
「私」の肩書は小説家で、節子の死後3年が経った冬、節子との別れを描いた日記形式の作品を完成させた。
まとめ
主人公である「私」は堀辰雄自身であるとされ、節子のモデルとなった女性も存在したとされている。この作品は「私」の一人称で書かれていて、さらに時系列ごとになっている為、小説ではあるが、自叙伝に近いものだと思われる。
私はこの本を読んで、生きるとは、そして死ぬとは何かを考えさせられた。また、かけがえのない一日一日を大切に生きたいと思った。