フットサルには一体どんなスーパースターが必要なのか?を考えてみる
■はじめに
こんにちは、カワナミです。田端大学の同輩である小島さん(田端大学3代目MVP)が唱える「フットサルは儲からないプロ」問題と「スーパースターが必要」論について。セルフ田端大学お題として、なぜフットサルにはスーパースターが必要なのか?どんなスーパースターが必要なのか?を考えてみました。長文ですがお付き合い下さい。またフットサル理解が甘く解釈に齟齬がありましたら容赦なく突っ込んでいただければ幸いです。
■前提:スーパースターの定義
スーパースターですが一般的な定義はこんな感じ。
その人のためにならば、お金・時間などの対価を払っておいいと思うファンが非常に多く、個人だけでなく業界の発展に影響力を持てる人のこと
アイドルはじめ各界のスターがそうですけど、その人のCDを買いたい、握手のために並ぶ、同じ服装をしたいとか、人自体がブランド・価値になって対価を得られるわけですよね。(だから読み手を獲得したいメディアも取り上げる)今回はフットサルプレイヤーがどうやったらこの状態にたどり着くのかを考えていきたいと思います。
■現状把握①フットサルの現状について
まず、自分自身もフットサルのプロって一体どんな状態なの?というのがわからない状態だったのでフットサルの現状を整理してみます。
・ブラジルやスペインでは先行してプロリーグが盛り上がっている
・サッカー同様、ワールドカップも存在
・日本においてはFリーグ創設10年。現在F1:12チーム F2:8チーム
・2014~2015シーズンの25万9687人をピークに観客動員数は減少
・ホーム&アウェイ方式で33節198試合(F1)平均動員 1311人/1試合
・昨年度からabemaTVでの放映開始、1試合10万視聴前後(おそらくユニークではなく、のべ)
・完全なプロチームは1チームのみ。日本代表クラスもアマ多数。
※動員数等の出典:Fリーグ公式HP、東洋経済オンライン
※動員カウントはF1リーグのみ(F2は未公表)
なるほど、小島さんのお話のとおりなかなかに厳しい。自然に動員が増えるという環境ではないように感じます。しかしながらリーグが2部制で、チーム数・試合数というのはなかなか大きい規模に見えます。
次にフットサルプレイヤーの収益構造について考えていきます。
■現状把握②フットサルの収益構造について
プロスポーツの収益構造を大まかに図解してみると以下の通り。なおJリーグは各クラブの決算を公開しており、項目はそこまでズレてなさそうです。
J1の決算をみると、営業収益のうち、最も多いのが広告料収入で4割程度、ついで入場料収入が2割程度の様子。少し驚いたのはJ1でも赤字経営のクラブチームが少なくない。フットサルについては広告料収入・放映権料・グッズ収入などがどこまで取れているかわからないですが、構成はそこまで大きく変わらないのではないでしょうか。(もしかしたら広告主としてリーチできる母数が少ないのでやや広告割合が少ないかもしれない)
動員数はJ1が動員1試合平均約19000人(2017シーズン)に対して、F1が動員1試合平均約1300人と考えると約15分の1。乱暴に単純計算で考えればJ1の平均年俸が2100万に対しF1は平均140万ほどということになります。
■収益構造が生むフットサルの問題点
現状把握の結果、平均年俸の少なさ以上に大きな問題が浮かび上がります。それは「上手くなるだけでは年俸上がらない問題」です。
サッカーや野球などメジャースポーツは”上手い人に巨額の投資をしてチームを強くする”という力学が発生します。ところが、フットサル全体の動員人数の少なさが影響して、突出してフットサルのパフォーマンスが高くなったとしてもスーパースターと言えるほどの年俸が得られない可能性が高い、そのサイクルの断絶をまとめたのが下記の図です。
ちなみに、この図の通りに行くと個人単位でもリーチできるファンの数が少ないのでスポンサーにとってのメリットも薄くスポンサー収入も期待ができない状況も同時に発生します。
フットサル業界としては、サイクルを断絶を打破するために、個の力でファンを連れてくるスーパースターが必要。そして、もし短期で憧れを持てるくらい稼げるプロを産もうとするなら「フットサルが突出して上手くなる」以外のファン獲得アプローチが必要となるというのが現状です。
■フットサルがファンを獲得するための課題とは?
さて、試合以外でファンを獲得するアプローチが必要になるわけですがそもそもフットサルが自然にファンを獲得しにくい理由は何でしょうか?それはズバリ「サッカーとの違いが分かりづらい・理解されづらい」のに集約されると感じました。
おおよそ、ファンの数や動員規模というのは競技人口・競技の経験期間に比例していきます。これ自分が経験していたことによってルールや魅力がよくわかっているからというのが大きな理由でしょう。自分は大学まで体育会でバスケをやっていましたが、やっぱりバスケが大好きですし、試合を見に行けば派手なプレイだけではなくて、オフェンス・ディフェンスそれぞれの戦略や隠れた好プレーでも十分に楽しめます。ところが、フットサルが本格的な登場機会が大学生以降。それまではサッカーの流れに乗ることになる。もちろん、フットサルの独自の魅力というのはたくさんあるはずなのですが、すでにサッカーに染まり・様々な魅力を感じ楽しみ方を見つけている人々にとって、フットサルの違いは「大差なく感じる」ため、あえてフットサルの優先順位を1番にする選択がされづらいということが課題になります。
もちろん、両方好き!という人もいるとは思うのですが、お財布と時間に限りがある以上、シーズンの期間もほぼ一緒、観戦料もそこまで大差ないとなるとどちらかを選ぶなら、魅力の理解・愛着のある、なにより盛り上がりを直感的に感じられるサッカーを選んでしまうというわけです。それでは、フットサルの魅力が伝わりやすい・際立ちやすい相手はいるのか?を次に考えていきます。
■魅力が伝わりやすいターゲットはだれなのか?
二択になるとサッカーが選ばれやすい中で、誰にならフットサルの魅力が伝わりやすいのか探るために、まずは田端大学の大先輩、3代目MVP小島さんに聞いてみました。
なるほど、開催可能場所がサッカーより豊富、選手との距離が近く、接点についての自由度がある。要するに観る側との距離を縮められるスポーツなのだなと。では距離が近いと誰が喜ぶんだろう…
そう考えたとき、ふともしかしたらこの人喜ぶかも頭に浮かんだ人がいました。それは5歳になる長男です。それはなぜか?
彼は過去に2回、Jリーグ観戦@埼玉スタジアムに連れて行ったことがあります。ともにルヴァンカップ(旧ナビスコカップ)で観客も多い試合だったのですが、期待よりも楽しんではくれませんでした。どちらかというと「よく見えない」「ゲームやっていい?」「いつになったら点が入るの?」「帰りたい」と散々。渋滞にも巻き込まれ、寒い思いをした割に喜んでもらえず、サッカーの魅力がわかるにはまだ早いのかトホホ…と残念に思った記憶があります。今思えば、彼にはサッカーがこんな風に写っていたのかも。
■子供にとってのサッカー観戦
・競技への経験や理解が少ないうちは凄いシュートが決まる・ドリブルでどんどんかわす、早く走るなどわかりやすい魅力にしか目に止まらない
・魅力を感じるポイントが少ないので、試合時間のうちに魅力を感じる回数が少ないと飽きてしまう
・寒いとか遠くて見えないとか環境が少しでも悪いと、もともと少ない魅力が更に薄れてしまい満足度低下
・選手との接点も少ないので、憧れとかも生まれない
・だからまだサッカー観戦はそこまで楽しめない
となるともしかしたら、フットサルは…
■フットサル観戦に抱いた期待
・攻撃回数が多くて、わかりやすい魅力が目の前でたくさん起こる
・室内かつプレーが目の前なので環境の悪化が起こりにくい
・遠くのメッシより近くのプロ。接点の量が憧れを生む
だから喜んでもらえるかも!と考えたことが、ふと子供の顔が浮かんだ理由だったのだと思います。つまり「子供が飽きない、魅せるサッカー」こそがフットサルの強みなのだと。
そう考えると魅力が伝わりやすいターゲットとは、わかりやすいプレーのほうが人気がある、キッズ(幼稚園~小学校中学年くらい)。
よくよく考えれば幼少期はコートも小さいし、戦略を求められることも少ないので、ミニサッカーと呼ばれることが多い曖昧な時期。たぶん本人たちもよくわかっていないでしょう。
仕掛け方次第でミニサッカーではなく「フットサルをやっているのだ」と認識させて、競技人口と経験年数をもらってしまってもいいんじゃないか?とも思うわけです。
一見、小学校低学年や幼稚園児というターゲットはお金にならなそうに感じますが、ちゃんと「親」という出資者がいます。子供が見たい・やりたい・習いたいと本気で求めてきたら試合観戦やレッスンなどにお金を払う。
また、スポンサー獲得観点でも1万人のフットサル好きをファンとして抱えているだけでなく、1万人の子供をファンとして抱えているが掛け算になる方がマーケティングとしては価値があり、キッズ向けマーケティングをしたいスポンサーの獲得がしやすいのではないでしょうか?
次はこのキッズを獲得していくためにはどんなことが求められるのかを考えていきます。
■フットサルのスーパースターには何が求められるのか?
小島さんとのフットサルの魅力はなにか?問答を振り返って気づいたことがあります。それははたから見るととても魅力的で価値があることに、まだまだフットサル選手が競技の本当の魅力に気づいていない、もしくは言語化しきれていない現状がある。そして魅力を伝える機会・打席もまだまだ少ないのではないかというものです。
これまでの話の流れから、フットサルは
・上手くなるだけでは稼ぎが上がらない問題を抱えている
・試合外でファンの獲得が必要不可欠
・獲得に向いたマーケットは実はキッズ(3歳~10歳くらい)
・キッズを動かすには「わかりやすい魅力を磨き伝える力を持つこと」
と考察してきました。
あとはキッズとの接点をどれだけ多く持つか、相手が喜ぶポイントを見つけられるか、そこにどれだけわかりやすい魅力を伝えファン(リード)にできるかが勝負。フットサルにおいてはこの接点量とファンへのコンバージョンがずば抜けて高いこと。
つまり泥臭いかもしれませんが、キッズのあこがれを自ら勝ち得ることができるトップ営業マンのような人物が今求められるスーパースター像だというのが今回考えてみた結論です。
サッカー・フットサルの技術を上げることでプロになってきた方々からはこの結論に対して「なんでそんな営業なんかしなければ行けないんだ!」と怒られることがあるかもしれません。ただ、プロセスは営業的であったとしても子供に夢や憧れをもたらすという結果自体は何らぶれていないという点にてご容赦を頂きたいと思います。
■あとがき スーパースターに期待したいこと
ここからは個人的な思いの部分です。もしとてつもない行動量をもって大量のファンを獲得しフットサルの動員も増やし・スポンサーも獲得するようなスーパースターが生まれたとするならば、その先に見てみたいなと思う光景があります。
それは、スーパースターがたくさんのファンと繋がっているがゆえにファンの声を聞き、どうやったらもっと盛り上がるかを考えて、魅力感じるルールを生んで、競技自体を進化させていく光景です。
バスケットボールに途中から3ポイントシュートが生まれたように
F1がオーバーテイクの機会を増やそうとレギュレーションを変えるように
ビーチハンドボールは軸を1回転してシュートを撃つと点が2倍になるように
もっと魅力的でエンターテイメント性が高い「サッカーとは違う」機会を生み出すところまでできたらそれは紛れもないスーパースターなんじゃないかと。どうでしょう小島さん、いけそうですかね?
長々と書いてきましたが「フットサルには一体どんなスーパースターが必要なのか?」の考察は以上になります。お読みいただきありがとうございました!なお要点をまとめたスライドは後日アップします。
次は時間ができた時にフットサルプレイヤーのファン獲得にむけた営業戦略・戦術について考察しようかな・・・。
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