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三名刺繍のことば 「革命少年」@武庫川KCスタジオ 10/25,26,27

【ご挨拶】
by 三名刺繍(脚本・演出/muko2プロデューサー)

2023年、武庫川KCスタジオに女性用トイレができた。私が芸術監督に就任した頃からトイレの行列は課題だった。李敬司オーナーが「トイレを作らなあかんな」と取り掛かったのは夏ぐらいだっただろうか。「使われてない便器を持ってきたら、3日でできる」と言って、完成したのは3カ月以上も過ぎて、随分と寒くなってからだった。李敬司オーナーの専門は鉄骨構造であり、水回り工事は専門外だ。「自分でやるのは無理ですよ」と私が言うと「なんでもやればできるんや」と険しい表情を浮かべた。その手には「改造ノート」と書かれたノートがしっかりと握られていた。トイレ工事の3カ月間にどんな試行錯誤があったのか私は知らない。ただ、李敬司オーナーはいつも「うーん」と言いながら、鉛筆を走らせていた。「諦めない」「とことん考える」「失敗を繰り返す」―それは李敬司オーナーの人生そのものだ。スタジオの3階部分の天井をぶち抜き、大きな看板をわずか二人の力で引き上げ、トイレを作った。「不可能は可能だ」というパワーがこのスタジオには存在する。そんな中、李敬司オーナーが何年かけても思うようにならなかったのが、人の心であり、社会の問題だった。青年編は、「金があれば世界を幸せにできる」と信じ、経済的に成功した李敬司オーナーの絶望と葛藤が描かれている。人をしあわせにするのは何なのか―、その絶望と希望のはざまを革命少年は生き抜いていく。「友と家族と社会。その絆をもって夢みること」―私たちは今、李敬司オーナーとそんな答えを追いかけている気がする。※この物語は李敬司オーナーをモデルにしたフィクションで、関係者の話は作者の想像が多く含まれています。

【「革命少年」前回までのあらすじ】
リーキョンサの家族は貧しかった。在日一世である父は失踪し、兄テヨンと弟ソヌの一家は貧乏に生きてきた。しかし、そんな暮らしにもめげず、キョンサは映画や演劇を夢みる明るい青年であり、友人のホンキとジュノと共に劇団による社会変革と祖国への帰郷を志していた。 一方、キョンサは家族を養うために仕事を探していたが、在日であるがゆえに就職差別を受けていた。リー家の〝オヤジ代わり〟であり、「天皇に戦争の責任をとらせる」という風変りな目標を持った向かいに住む日阪は、キョンサに就職口を斡旋する。しかし、「とことん追求して考える」というキョンサのたぐいまれな集中力は、柳谷板金店の社長からサボりと受け止められ、首を言い渡されるのであった。
 ある時、兄のテヨンが警察につかまった。彼は一家を支えるために同胞の汚れ仕事を引き受けていたのだった。それを知ったキョンサとソヌは社会の理不尽に涙を流し、ある決断をする。兄のキョンサは「韓国名を名乗り、事業家として成功する」というもの、弟のソヌは「韓国名を捨てて、学術界で成功する」というものだった。二人の兄弟は「親分より大きな黒塗りの車で、出所する兄を迎えに行く」という共通の決意を胸に、別々の道を歩く。
 キョンサは仲間のホンキとジュノに「演劇も映画も捨てて、事業に没頭する」と宣言。そして、キョンサはガラクタの山から、ついにカブを瞬時に修理できるという魔法の機械を発明するのだった。「これでみんなしあわせになれる」と信じるキョンサだったが……。

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