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人生、綴ってみた 【結婚・後編】 #20

 私はお酒ばかり呑んでいた
 辛かった
 人生から逃げ出したかった
 誰かに頼りたくて
 息子の主治医に助けを求めた

 主治医は難しい顔をして、話を聞いていた
 そして、言った
「お母さんが精神科に行くべきだ。
 しっかりしなさい。
 お母さんがぶれたら、子供もぶれますよ!」

 精神科ではなかったが
 近所の診療所で「心労」だと診断された

 その夜
 母子で揃って、睡眠導入剤を呑んだ
 二人で朝まで泥のように眠った

 よく寝て
 よく食べて
 しっかりと寝て
 規則正しい生活をすること
 それが
 乱れた気持ちを落ち着かせてくれる
 そんな当たり前のことを
 この時初めて知った

 母が亡くなって、半年後
 私はようやく泣くことができた

 母がいなくなって寂しい

 何年も会えなかった後悔
 借りたオカネも返せなかった後悔
 いろんな後悔がありすぎた

 泣いて泣いて
 半年分しっかりと泣いて
 私は自分を取り戻していった

 旦那は福島県へと転勤になった
 原発近くでの仕事

 福島に引っ越しをしようか、と聞いたら
「原発近くにいるより、
 仙台にいてくれた方が安全だから」
 めずらしく優しい言葉だった

 せっかく故郷を離れて
 仙台に住んでいても
 我が家は単身赴任ばかり
 一緒にいる時間は少なかった

 息子にとっても
 お父さんがいない生活が
 当たり前になっていった

 仙台に残ることになって
 どこかホッとしている自分がいた
 正直、息子の主治医から離れたくなかった

 私が八年間出会った医師達は
 ADHDも見抜けず
 様子を見ましょう、としか言わなかった

 治療すらなかった日々に
 絶対に戻りたくなどない

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