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〜Holy!!Holy!!〜 Geordie Greep - The New Sound 感想(サムネイルは筆者の感情を表しています)


はじめに

どうも、じゃみです。みなさん、もとblack midiのGeordie Greepがリリースした、彼のキャリアの第二章の幕開けとも言える、The New Soundはもう聴きましたでしょうか。本作はなんとblack midi活動期に同時進行で作られたアルバムで、サンパウロとロンドンにまたがる30人以上のセッション・ミュージシャンが関わる、テクニックと様々な音楽ジャンルが化学反応を起こした、全方位的なハイクオリティ・オルタナティヴ・ポップと謳われています。そしてその謳い文句に相違ないサウンドスケールに文字通り圧倒されまして。今回 noteを起こすに至りました。本記事では、収録曲すべてを一曲一曲レビューし点数(100点満点)を付ける形で進行します。それではどうぞ。

01.Blues[じゃみスコア 78/100]

"Blues"というタイトルにまるで似つかわない、高速ミニマルギターで始まり同じく冒頭のテーマリフで終わる本楽曲は、black midiの2nd以降の派手なアプローチとは真逆のソリッドで削ぎ落とされた、テクニカルなギターとドラムで徐々に展開し、後半に差し掛かるところからドライブがかかり04:12痺れるドラムフィルインから更にホーンセクションが加わり鳥肌が立つようなカオティックさで突き進み、ラストは冒頭のテーマリフ(ドラム☓ギター)で突如終りを迎えます。様々なミュージシャンとセッションを行っているだけあり、black midiのオーバーアプローチとは間逆なミニマルポストパンクを味わえる冒頭にふさわしいオープニングトラックです。

02.Terra[じゃみスコア 92/100]

カオティックなスピード感あふれるBluesからはガラリと変わり、突如として始まる、なんて良質なブラジルMPBソングの本楽曲は、かつてプログレッシヴポストパンクを奏でていたのはまるで嘘だったかのような、多幸感と南米特有の踊りたくなるようなリズミカルと、ジョーディ、君そんな歌い方も出来たのかと思わせてしまう、スポークンワードな歌唱とはまるで異なるソウルフルな歌声に酔いしれてしまいます。そして我々はこれがHoly,Holyへの序章とも知らずに。

03.Holy, Holy[じゃみスコア 200/100]

僕はこの楽曲を先行で聴いた時、鳥肌と共に目から涙が流れました。こんなにもグルーヴィで情熱的、オルタナティヴロックとラテン・ブラジリアングルーヴとAORがとてつもなく高いレベルで融合した楽曲がジョーディという一人の若者から生み出されるとは、一体誰が想像したことかと。ポストパンク風味のカッティングギターから始まり、乾いたAOR感溢れたギターソロが終わるかと思うと腰踊るベースライン、迫りくるコーラス、パーカッションの数々、それらが楽曲の進行と共に徐々に厚みを増し、Holy,Holyは03:33にジョーディの雄叫びとともに最高潮を迎えます。ところがここで終わらないのが彼の早熟過ぎる手腕の見せ所で、03:47を境に一気に表情が変わり、リズムはそのままに突如としてDavidBowieばりの歌唱に切り替わり、上物のサウンドもドリーミーな音に様変わりします。踊り始めたものを最後まで渦の中へ引きずりこませ、気がつくとリピートしてしまう、本当に今彼の持ち得る才能のすべてが注ぎ込まれた、本年No.01と豪語しても差し支えない、最強の一曲です。(じゃみ比)

04.The New Sound[じゃみスコア 95/100]

Holy,Holyで燃え尽きたものをまるで引き離さないかのごとく始まるラテン・ブラジリアンフュージョンのインスト楽曲の本作。箸休めかと思って聴いていると02:07から盛り上がりを見せ03:28からの怒涛のベースソロに驚いたかと思えばミニマルなギターループに収束する、緩急の多いフュージョンもやってのけるジョーディの技量・力量には脱帽です。

05.Walk Up[じゃみスコア 85/100]

スティーリーダンのようなスリリングなリフとリズムでスタートする本楽曲、と思いきや突如襲いかかるSwansのような襲撃、と思えば再びスリリングなパートに移り02:07を皮切りに楽曲はまるでスティーリーダン・フュージョン・オルタナティブがカオティックに融合を果たします。特に02:36からのシンプルでヘヴィーなビートに突き進むテーマリフは格別の気持ちよさです。

06.Through a War[じゃみスコア 82/100]

Terraがブラジリアングルーヴだとすれば、情熱と切れのあるサウンドのラテングルーヴである本楽曲。Terraとは間逆なテンションのサウンドは、Terraと人気を二分すると思います。僕はどちらも好きですが、僅差でTerraが好きです。

07.Bongo Season[じゃみスコア 75/100]

7曲目にしてついに訪れた束の間の箸休めソングとも言えるラフなセッションによる、緩やかなブラジリアングルーヴジャズ。濃度の濃い楽曲が続く中、この力の抜けようは、心を一旦落ち着かせてくれます。Bongo♪〜Season〜♪(次に本作で最も凶暴な楽曲が始まるとも知らずに)

08.Motorbike[じゃみスコア 78/100]

NickCaveばりの歌唱スタイルが特徴なblack midiのサポメン鍵盤奏者、Sethが本作で唯一ボーカルを取ったド直球のポストパンクソングである本楽曲、行場もなく突き抜けていくその様はまるでblack midiに苦悩するジョーディの心の内を表しているかのようです。

09.As if Waltz[じゃみスコア 76/100]

ワルツなどとタイトルに付けておきながら、ワルツ要素は要所要所にある程度の、基本的には硬質なビートに進むスティーリーダンライクな本楽曲。次に訪れる壮大なThe Magicianに比べるとやや弱い印象の本曲ですが、個人的には05:20からのドラムのフィルインからのエンドパートに旨味が詰まっていると思っています。カッティングギターとソロギターとコード進行がなんて気持ちの良いこと・・・。

10.The Magician[じゃみスコア 150/100]

泣きました、12分を超える壮大なロックオペラの様な本曲。静かにアメリカーナなイントロから始まり、Arcade Fireばりに楽器たちがチャンバーに重なり、12分という時間をかけて本曲はドラマティックにかつダイナミックにフィナーレを迎えます。こんな楽曲までも書き上げてしまうジョーディ、恐るべし男です。The Magicianを聴き終えた頃には放心し、涙を浮かべることでしょう・・・。

11.If You Are But a Dream[じゃみスコア 89/100]

さて、New Sound Tourも間もなく終わりを迎えます。往年のTom Waitsや、昨今のBob Dylanの様に優しく情熱的に、ジャズバンドをバックに歌い上げるスローバラードで本作は夢見心地に幕を閉じます。しかしここまで聴いて思うのがジョーディのボーカルスタイルの幅広さです。ほんとうカッコよくて惚れますなと。

おわりに

いかがでしたでしょうか、拙い感想、ご容赦下さい。とにかく、black midiから幅広く大きく飛躍した本作。十分高いレベルのアルバムですが、ぜひ次回はあまりポストパンクなアプローチにこだわらない作風も見てみたいなと思いました。彼の幅広い音楽性と確かな技量故に。ではまた。

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