おとぎ話のような可愛い嘘
今日は4月1日。
新しい年度のはじまり。
子どもたちは新しい学年の始まりを前に、「お友達沢山できるかな?先生怖くないかな?」と期待と緊張でいっぱい。
大人たちも、生活が変わる人が多く、同じようにどこかそわそわしながら、でも少しワクワクした気持ちもあるのではないでしょうか。
そんな4月1日は、わたしにとっても特別な日。
子どものころ、4月1日はわたしにとって一大イベントだった。兄の誕生日であり、エイプリールフール。
あの当時、(わたしの周りでは)「嘘をつかなければならない」という謎の使命感に燃えた子どもたちが多かった。
不吉な嘘、嫌な気持ちになる嘘、ドキっとする嘘、笑える嘘、楽しい嘘…いろんな嘘があちこちで飛び交っていた。
「家族が行方不明になった」「事故に遭った」「彼氏できたよ!」というような…「えぇ?!」と思うような嘘をつく子もいた。嘘をついたらエイプリルフールのうちに訂正すればいいものを、すっかり嘘をついたままにして、嘘が信じられ続けてしまった子もいた。
そして、我が家でも、とある嘘がわたしの心の奥底まで届き、 長年信じ続けていた。
エイプリルフールの可愛い嘘。
可愛い嘘は、幸せを運んでくれることもある。おとぎ話のように、ずっと心に残る、わたしにとって忘れられないお話。
***
小学校1、2年生ごろだろうか。
ある日の夕方ごろ、母がニコニコしながらわたしに話しかけてきた。
「きょうね、近くの〇〇公園のそばの道路あるでしょ?お買い物のときに通ったんだけど、びっくりしたことがあったのよ。犬が縦一列に並んで、お母さん犬が「わんっ!」って言って後ろを振り向いたらね、後ろに沢山いた仔犬たちも「わんっ!わんっ!わんっ!」って言ってね、青になったと同時にみんなでお利口さんに道路を渡り始めたの!まるで行進しているみたいに、「わんわんわんっ!」って言いながら🐶すごいの見たわ~♬」
もちろん、1年生のわたしは興奮して目を輝かせた。
わたしも見たかった!ずるい!って思った気持ちと、そんな犬たちが近くに住んでいるなんて!?と驚きとわくわくで興奮した。
どこに住んでいるのだろう?近くには、大きな木に囲まれた森林公園のような所があるから、そこに犬たちのお家があるのだろうか?いつか会えるだろうか?考えるだけでわくわくがとまらなかった。
それに、お利口さんに信号を渡るなんて…すごいなぁ!会ってみたいなぁ!頭の中でその犬の行列を思い浮かべて、ニヤニヤが止まらなかった。
そんな話を聞いてから、何年後だろうか。うろ覚えだが、中学生になってからだと思う。わたしは、その話を思い出して母に聞いた。
「ちっちゃいころにさ、うちの近くで犬の親子が一列に並んで道路を横断していてさ、まるで行進しているみたいだったって話をしていたよね。あれ、本当にあったんだよね~?」
「ん?なにそれ?そんなおとぎ話みたいなことないでしょー😀お母さんそんなこと言ったかしらー?!」
いやいや、わたしの記憶では、今でもはっきりとあのときの母のニコニコ笑いながら話す顔、胸がドキドキして感動した気持ち、どこに住んでいるのだろう?と長い事考えていた記憶…たしかにハッキリとある。
中学生のわたしも、そう訴えた。
「たしかに言ってたよ!覚えてるもん。え、あれ作り話だったの?!」
「え~そうだった?あ、もしかしてその日ってエイプリールフールだったんじゃない?!きっとそうよ!😀」
「・・・」
おそらく、母の言う通り、この話を聞いたのはエイプリールフールだったのだろう。我が家では、毎年エイプリールフールを楽しんでいたからだ。
母があの話のあと、それがエイプリールフールの作り話だったと告白しなかったのか、告白したにもかかわらず、その話が楽しすぎてわたしの頭から離れずずっと本当にあったことだと思い続けていたのか…どちらなのかはわからない。
でも、1,2年生ごろから中学生になるまでの子ども時代に、近くに可愛らしい犬の親子が住んでいて、一列で行進をしているという夢のような話を信じていたのは、子どもならではの信じて疑わない心で物事を見ていたのだなぁ~と思う。
エイプリールフールには、衝撃的なウソや悲しいウソをついたり、つかれたりしたことのある人もいるかもしれない。「〇〇が行方不明」「〇〇が逮捕された」「〇〇と別れた」など…。
そういうウソは楽しい気持ちにはならず、エイプリールフールのウソでしたとすぐに訂正したとしても、聞いた人は時間が経ったときに’真実’として間違えて記憶していたとしたら、それはとっても悲しいような気がする。あくまでもわたしの考えだけれど。
でも、楽しいおとぎ話のようなエイプリールフールのウソなら、もししばらく信じていたとしても、決して嫌な気持ちにはならなかった。
「もう~!あれは、エイプリールフールだったのかー!あのときのびっくりしたようなニコニコしたようなお母さんの笑顔、覚えてるよ!」
中学生のわたしは、おかしくてお腹を抱えて笑った。
夢のようなわくわくした気持ちが、大人になった今でも蘇ってくる。
お母さん、可愛い嘘をありがとう✨
◇2年前に書いたもの(ほぼ同じ内容)◇