ACJ2023の感想
アウフグースチーム「おみっちゃんズ」のじゃがです。
ACJ2023について今更ですが話したいんです。あれから1ヶ月経ち余韻も冷めたのかなと思いつつ、その後の盛り上がりからも、この大会を機に日本のアウフグースシーンは更なるパラダイムシフトの最中にあると言えるかなと思っています。
今年は地方予選も開催されるなどアウフグース人口・観客の盛り上がりを感じる大会でした。かくいう私も東日本予選のチケット抽選に全日全時間帯で応募して全落ちしました。
しかし、神は私を見捨てませんでした。機会に恵まれてACJ東日本予選と日本選手権の両方で裏方スタッフをやらせていただきました。
スタッフ目線でベラベラと裏側を語るべきではないのは百も承知ですが、まずこのnoteを通じてみなさんに伝えたいのは、表舞台から見える輝きを陰で支える存在が舞台裏にもあり、その姿もまた輝いていたということです。
「名施設に名スタッフあり」というのはサウナー界の常識であり、推しサウナ施設に行く理由って「サウナでととのう」を通り越して、スタッフさんが作り上げるホスピタリティ溢れる空気を吸うために行っている節があると思うんです。(わかる人はわかるよね)
ACJは温浴施設スタッフによる大会であり、出場するのは名だたる施設ばかり。名施設を支えるスタッフさんによるチームは結束が素晴らしく、一丸となる姿には尊いものがありました。ACJ関東予選後、すぐに川崎ゆいると池袋かるまるへ足を運んだのは言うまでもありません。ラブ。
…とACJ2023が終了した直後、そんな感動の熱量にまかせて全出場選手の感想を書き殴ったところ、膨大な文量になってしまい封印したのですが、封印したものを久々にみると自分の中に煮詰まってきたものがあるなと気づいたので、今更感がありますが改めてnoteに残します。
ショーアウフグースの正解
今年のACJを振り返ってまず思うのは「ショーアウフグースの正解」の解像度がはっきりしてきているのだろうな、ということです。
昨年のACJ2022は、選手もお客さんも何が正解で何が間違っているのか、手探りであったように思います。ACJ2022を勝ち抜いた日本代表は、本戦たるオランダのWMにおいて団体では鮭&鱸コンビが決勝に進出、WATもその次点に食い込む大健闘。一方で個人では五塔熱子さんやりゅーきイケダさんが予選敗退、特にイケちゃんがWM最下位に沈むという結果は、日本のアウフグースシーンにとって衝撃的な出来事だったのではないでしょうか。(その後イケちゃんは「オランダ335」という演目をつくり屈辱を昇華、次に出た別の国際大会で3位入賞。さすが!)
そしてWM後、世界を知る選手たちが1年かけて本場のショーアウフグースのノウハウという種を日本に蒔き続け、その芽が各地で開花した結果が、昨年の日本代表をジャイアントキリングするほどの新星登場につながったのでしょう。今回の個人団体の両審査員長が「全選手がWMの最低基準を満たしている」と話したことからも、選手が勝ち抜くために描くビジョンがWMにとっての正解に繋がっているといえるでしょう。
ACJから学ぶべきもの
次に、私が思うのは、「ACJから学ぶべきものってなんだろう」ということです。
皆さんご存じないかもしれませんが、私も熱波師の端くれの端くれでして、ACJ2022を観て「来年は自分も出られないかな…」と思っちゃうわけです。正直、昨年は曲を3つ繋げて15分扇ぎますという感じの、ショーアウフグースもどき(言い方は悪いですが)も一部あり、これなら自分でもできるのでは…?とカケラくらい思った節がありました。
しかし、裏でACJ2023を見ていて「あ、無理だな」と悟りました。シンプルに言うと「ショーアウフグース」は今までやっていたアウフグースの延長では到底追いつけない次元にがあることを悟っちゃったわけです。
端くれの端くれ熱波師の目線でショーアウフグースを掘り下げても何も学ぶべきものが出てこないので、目線を変えて私の2つのバックグラウンドから掘り下げてみたいと思います。
組織力の時代
まずは、私のバックグラウンドの1つである社交ダンスから、競技としての「ショー」について考えてみたいと思います。
社交ダンスの大会のうち、「競技ダンス」と「ショーダンス」は同じ社交ダンスでもダンサーにとってはアプローチが明確に異なります。多くのダンサーにとって、主戦場は競技ダンスであり、ショーダンスを主戦場とする者は皆無です。その理由としては、ショーダンスをする舞台が無いこと、そして準備に膨大な苦労がかかるということがあると思っています。
時間・エネルギー・お金等々といった自分のリソースを割くことはもちろんですが、ショーには技術はもちろんのこと、構成・曲・演出・衣装・小道具等々といったダンスとは異なる要素が求められます。器用な選手は自分でやったりもしますが、大抵は専門のスタッフと連携しています。「競技ダンス」は選手個人の戦いですが、「ショーダンス」はチームでの戦いであり、選手は分業の中でいう俳優の役割です。
前置きが長くなりましたが、良いショーダンスを作り上げるためには、良い作品を作り上げるためのチームを組閣し連携できる組織力が求められます。この構造はショーアウフグースにも置き換えられるのではないでしょうか。
ACJ2023はそういう大会だったと思っています。上位に入賞しドイツの本戦に出場する選手たちの演目には、明らかに熱波師以外のスペシャリストの手が入っていました。器用を極めた選手もいたかもしれませんが、もうそれでは戦えない次元の大会なのかもしれません。
ACJ2023は個人・団体ともにウェルビーが制しましたが、しばらくはウェルビーの時代が続くでしょう。ウェルビーの組織力は圧巻でした。毎回ちょっとした引越しくらいある荷物をサウナ室に持ち込み、テキパキと制限時間内に準備するチームワークに、裏で度肝を抜かされていました。演者のパフォーマンスが素晴らしいのはもちろん、良いパフォーマンスを作るための、バックアップやノウハウのレベルが違いすぎる。皆さんも感じたのではないでしょうか。
ショーができる自前の環境と風土を持っているのも大きいです。社交ダンスの世界もそうですが、演者目線で言えば、例えショーをやりたくても、それをやるための舞台と観にくるお客さんがいないから、ショーを普段やらないのです。その点で、サウナシアターがあるとかではなく、サービスとして日常の延長線上にショーがあるのは他には無い強みです。普段の延長でACJに出られるわけですからね。この点は、スカイスパなどの施設にも言えるかと思います。
おそらく、というかほぼ確実に、トップリーダー達の牽引により、日本のショーアウフグースはどんどん進化していくでしょう。これからどんな次元にすすんでしまうのか怖いくらいです。この怖い未来の話も少し考えたのですが、明るい着地点にできなかったのでここには書かないことにします。何かの時に私に直接きいてくださいね。
異分野融合
また目線を変えましょう。今度は私の本業である研究の世界の話をさせてください。
研究の世界のプレイヤーたる研究者は、成果を出すために日々研究をしています。成果といってもひとえに色々あるのですが、ざっくりいうと新規性です。自身の専門の世界において新しい発見をして、世に発表することが研究者の使命です。(これをしない人は研究者ではなく専門家です。)
「研究」の領域は、文系(人文社会系)と理系(自然科学系)に分けられ、専門領域が重なる研究を「学際研究」と言います。この学際研究がもたらす成果が社会に与えるインパクトは強く、国としても学際研究を伸ばしていきたいわけですが、これがなかなか伸びない。
その理由としては、お互いの利害が噛み合って初めて研究者は動き出すものであって、領域が違うと噛み合うポイントが見つからないからだと私は思っています。業務命令的に共通の目的を設定して、ビジネスライクに連携しても、得られる成果はたかが知れています。逆に、利害でなく好奇心や使命感で動くような人が複数いる場合は、良い成果が生まれやすい気がします。
そして学際研究と似たものに異分野融合があります。この2つをあえて定義するなら、学際的な成果というのは専門性ある複数の個人が共通の目的で連携することで生まれるもの、異分野融合の成果は2つ以上の専門性を持つ個人の発見によって生まれるもの、という具合でしょうか。
何がいいたいかというと、ショーアウフグースに異分野融合の本質があるのではないかということです。ACJ2023を現地orオンラインで観て心が動いた人は多いと思います。私もその一人で、まさかサウナ室で涙を流す日が来るとは思いませんでした。アウフグースに構成・曲・演出・衣装・小道具等々が掛け合わさることによって、15分間のショーアウフグースが完成することは、分野がかけ合わさるとスゴイものが生まれるということ、異分野融合によりアウフグースはもっと面白くなれるということをACJ2023は教えてくれたのだと思っています。
これは余談ですが、もはや伝説となった関西の前説王アオバーランド&ぶんご組(以下、「前説王」)の陰で、実は日本選手権初日3試合目で、裏方スタッフの役割ローテにより私が前説をやる世界線がありました。しかし私は周りが見えていますから。お客さんは前説王を見にきていると言っても過言ではない。2人の連携プレーに水を差してはならない。早い話、怖気付きまして。ひとまわりも年下の2人を相手に超情けない判断をしましたが、今思えば我ながらナイスプレーでした。
前説王と話して気づいたのは、関東と関西でアウフギーサーが根底で抱く使命感が違うのだなということです。具体的には、関東アウフギーサーは「お客さんを気持ちよくさせよう」であるのに対し、関西アウフギーサーは「お客さんを楽しませたろう」が根底にある気がします。関西のお客さんはサウナ室を出る時に「あ〜気持ちよかった」より「あ〜おもろ」という気分になりたいのでしょう。それに応えるためなら、しゃべくりでもなんでもやるぜというのが関西のアウフギーサーであり、その気概が昨年に続くACJ2023での関西勢の躍動(前説含む)につながったのかと思います。
アウフグースの視点からアウフグースを見つめても、アウフグースしか生まれません。だから、熱波師がたくさん集まって1つの演目をつくるのではなく、お客さんを楽しませよう、おもろいものを作ったろう、という使命感を原動力に、他分野のアイデアを取り入れたり、スペシャリストの意見をきいたり、自身がアウフグース以外の知見を持てるように視野を広げることが、これからの熱波師がやるべきことなのではないかと、熱波師の端くれの端くれながらに思います。
おみっちゃんズ講習会のお知らせ
…とまぁこれまで5,000字近くワーワー言うてきましたが、結論何がいいたいかというと、おみっちゃんズ講習会をやるぞ!という宣伝です。宣伝のために前置きが大変長くなりました。
まず、「おみっちゃんズ」とは、私がくたびれた赤提灯居酒屋でホッピーを1人でがぶ飲みする時に、劇団ひとり的なノリで思いついた架空のアウフグースチームです。
初めのうちは1人でベロベロに飲んでいたのですが、飲酒と熱波師の相性が大変よろしく、1年以上楽しく色んな熱波師とベロベロに飲み続けていたら、あれよあれよという間に北は北海道から南は沖縄、なぜか海を越えてチェコからも熱波師が集まり、ついには沖縄で本当のアウフグースイベントを開催させてもらう始末。今では自分でもどこに向かっているのかよくわからないアウフグースチームです。
おみっちゃんズの活動は、酒を飲むことなのですが、「講習会」を一度開催しました。講習会といっても、タオルさばきを教えるのではなく、別の異分野からアウフグースを掘り下げてみようという異分野融合ワークショップです。第1回は私が競技者としての社交ダンサー視点から、社交ダンスとアウフグースの共通項を深めるという内容でした。参加者一同はりきってアウフグースタオルを持ってきたものの、3時間の講習会のうち、タオルを振るのは10秒程度で残りは座学という、前代未聞の講習会でした。
というわけで、第2回講習会を下記のとおり開催します。今回は「ショー」を媒介にアウフグースを掘り下げます。私のような端くれの端くれがショーを語っても説得力が無いので、ショーアウフグースのスペシャリストを講師に招き、色々語ってもらいたいなと思っています。(快諾してくれた皆さんマジ感謝!)
この講習会を企画した理由は、ショーアウフグースの話で酒を飲みたいという私利私欲がまずありますが、豪華講師の皆さんが何を考えているのか聞いてみたい、と純粋に思ったことです。
なので、この講習会は来たからといってショーアウフグースができるようになるというものではありません。ショーという媒介によって良いものをつくるための可能性を一緒に探りましょう。その過程で、参加者の皆さんに刺さるものがあったり、日本のアウフグース界の実になるものがあればいいなと思っています。
参加希望の方は私までDMくださいね。終わった後の打ち上げでベロベロになりましょう。ではでは。
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