財務モデリング①
財務モデリングに関する投稿はnoteでも数多くあり、「これが唯一正しいモデルである」というものがあるわけではないですが、いくつか共通して意識すべきルールはあります。
実務で財務モデルを作成する際に留意すべき基本的な構成、ルールについて、まずは(私流ですが)紹介します。(FASが提供するモデリングサービスを意識しています。)
モデル作成の心構え
まず最初に、モデルを作成する上で最も大事なことは、「シンプルに分かりやすく作る」ことです。
私は、モデルで使う関数は極力簡単なもので良く、1つのセル内に3つ以上の関数は使わないのが望ましいと考えています。また、モデルを作成する際の全体の作り方としては「上から下、左から右」を意識し、思考と同じ流れ・順番を意識する良いです。例として、PLの場合、売上→売上原価→粗利→販管費→営業利益、となりますが、モデルで作る際は上からその順で作ると頭に入ってきやすく(理解しやすく)なります。
(複雑な関数を使って難解なモデルを作るのは、ただの作成者のオナニーにすぎません。)
大事なのは常にシンプルで分かりやすく作ることです。
モデルの基本構成
モデルは主に以下の3つの項目から構成されます。
1. Input
2. Calculation
3. Output
Inputは期間を通して前提が固定のものや時系列で変化させるもの等、前提事項の性質や入力のしやすさを考慮しつつシートを分けることがありますが、極力1つのシートに集約する方が望ましいと思います。
CalculationではInputの前提条件を基にモデル対象期間の各項目の計算を行います。このCalculationのシートにはInput項目は一切設けず、計算式だけで成り立つように作ります。
OutputはCalculationで計算した項目をPL, BS, CFで整理し、月次、四半期毎、年次などで表示するシートです。投資検討においてはIRRの計算もOutputシートで行います。
モデルの構成として、左からInput→Calculation→Outputとなり、シート内の計算も基本はInput→Calculation→Outputに流れるように構成されます。
セルの表示形式
モデル内のセルの表示方法について、これはファームによって多少違いがありますが、唯一同じだとしたら、入力セルは「青字に薄黄色ハイライト」ということでしょうか。
私の場合は以下の通りに使い分けています。
単純参照(Call up)はInputシートやCalculationシートから数値を引っ張ってくる時に使います。セルの中は「=+B15」のように任意のセルを参照しているだけです。
Outputからの参照の場合、上記のInput→Calculation→Outputの流れに反するので単純参照とは色を分けています。
計算式は「=Sum(C15:C18)」のように計算式のみ。「=If(C13>0,~ 」のような場合以外は極力ハードコードの数字を入力しないようにしましょう。
ブランクセルは故意に空欄としているセルで、数値など入力してはいけないセルに印をつけるものです。
固定値セルは1年=365日、1日=24時間、等のように普遍的なInput値を設定する場合に使います。固定値のセルについては下図赤枠のように定義付けをしておくと、計算式を作る際に定義付けしたテキストで式を作れるので、その計算式で何を計算しているか、分かりやすくなります。(定義を作りすぎないように注意!)
ちなみに、数字のセルについては書式を「 #,##0_);[赤](#,##0);-_) 」にしておくと、マイナスの時は(赤字)で表示され、0は「 - 」で表示されるので、小数点以下に数字があるか完全に0なのか、↓のように分かりやすくなります。
上記ルール等を用いながら、次回以降順にモデル作成のステップについて解説していきたいと思います。