太陽光発電の営業の話を聞いてみた
ある日突然玄関のチャイムが鳴った。対応してみると、自宅の屋根を使った太陽光発電の導入に関する営業だった。何やら「モニター設置」という事で、オーナーはパネル代の負担のみで、工事費等諸々を業者が負担するとのこと。
自宅購入以来、停電時などの非常用電源として太陽光発電の導入も考えていたので、工事費・諸費用が掛からないなら、パネル代次第では良いかもなーと思い、話を聞いてみることにした。
ちなみに私の仕事は太陽光含む再エネへのインフラ投資であるが、それは言わずに対応してみた。
太陽光発電導入のコスト
太陽光発電を自宅に導入するにあたって、通常必要になるコストはパネル代、パワーコンディショナー代(直流を交流に変換する機械)、モニター代(発電状況を確認できる)といった「設備代」と工事費、安全対策費、現地調査費、その他諸経費という所謂「工事諸経費」のようだ。
設備代と工事諸経費を合わせてシステム価格ということもある。
今回はパネル代以外全て業者側で負担するという。これだけ聞いてるとなんだかお得な気がしてくる。が、肝心なのはパネル代がいくらか、だ。
果たして太陽光発電の導入はお得なのか
太陽光発電導入のメリットは大きく2つ。
①自家発電による電気代の削減と、②余剰電力の売電だ。
①電気代の削減について、通常各家庭では電気をkWh当たり25~27円ぐらいで買っている。従量課金のみという所もあれば、基本料金+従量課金という所もあるが、燃料調整費や再エネ賦課金を加減算すると、大体どこも25~27円/kWhだろう。我が家では大体年間の電気代が18万円ぐらい(戸建なので多い方だと思う。)なので、使用量に換算すると18万円/26円で大体6,900kWh/年ぐらい使用していることになる。この内、太陽光発電で賄えるのは、(蓄電池を導入しない限り)陽が出て発電している日中のみである。全国平均的には大体日中の使用量は1日の約35%らしい。(在宅勤務の増加で最近はもう少し増えてるかもしれない。)
日中の使用量としては2,415kWhとなり、4,485kWhは夜間の使用量となる。
太陽光発電の導入により2,415kWh×26円=62,790円節約できるという事だ。
なお、夜間は太陽光パネルは発電しないので通常通り外から電気を買うことになる。太陽光パネルで発電した電気を夜間に使いたければ蓄電池の導入も必要となるが、蓄電池はまだ価格も高く(ものによるが住宅用だと200万円ぐらい)今はまだあまりお勧めできない。
②の余剰電力の売電については、(太陽光発電による発電量 - 自家使用量)=余剰電力であり、余剰電力×売電単価となる。
2021年度の住宅設置太陽光のFIT売電単価はまだ決まってないが、直近の調達価格等算定委員会の議論を見るに、19円/kWhとなる見込みだ。
太陽光発電による発電量については、設置容量から大体計算できる。設置容量は屋根の広さによって決まる。最新のパネルは1枚で355Wの発電出力があり、1枚の大きさは約100cm×約174cmである。我が家の場合、15枚程度置けるので355W×15枚で5,325W(=5.325kW)が設置可能な容量である。
設備容量5,325W×24時間×365日×設備利用率で年間の大凡の発電量が計算できる。東京の場合、設備利用率は大体13.0%~13.5%ぐらい。九州の方だともう少し高く、東北や北海道は12%台が目安。我が家に設置した場合の年間の予測発電量は5.325kW×8,760時間×13.0%で6,064kWhとなる。6,064kWh - 2,415kWhの3,649kWhが余剰電力となり、余剰電力の売電による収入は3,649kWh×19円=69,331円となる。
①の62,790円と②の69,331円で、合わせて132,121円が太陽光発電導入による年間のメリットとなる。
ちなみに上記の計算は設置可能枚数と年間の家庭での使用量が分かれば計算できる。そのため、営業の話を聞いている時に私が気にしていたのは自宅の屋根に何枚設置できるのか、ということであった。
肝心の設置費用はいくらか
導入による年間のメリットは分かった。あとは果たしてそのメリットをいくらで買えるのか、だ。
営業の提示してきたパネル代は1枚(355W)約23万円だ。これが高いのか、低いのか、馴染みのない人では分からないだろう。
高い!約65万円/kWは高すぎる!
値引きを入れて税抜195万円を提示してきたけど、36.6万円/kWはまだ高い!
直近の調達価格等算定委員会で示されている住宅用太陽光設備のシステム価格平均値をお見せしよう。
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/067_01_00.pdf
パネル 17.4万円/kWだ。
他のサイトで検索しても同じパネルで20万円/kWを出しているところもある。いくら最新のパネルとはいえ高すぎる。
25年出力保証しますとか自然災害に対する補償もついていますとのことだが、高い。恐らく様々な保証+工事費+業者の利益を上乗せしているのであろう。(ちなみに自然災害への補償は住宅の火災保険で付保できるのでメーカー保証はつける必要ないと思う。)
太陽光発電 費用回収の落とし穴
税込で約215万円で、ランニングコスト抜きにしても回収するのに16年超。太陽光パネル自体は25年~30年は持つといわれている。しかし、パワコンは15年ぐらいで交換が必要となる。また、住宅用太陽光のFIT調達期間は10年間である。卒FITの太陽光発電については最近は8~9円/kWhで買い取りしているところもあるが、10数年後にはもっと低くなっているであろう。上記で述べた②の余剰電力による売電収益は10年間だけだ。
聞くと導入する人の多くはローンを組むか、現金一括とのこと。その際のローンの期間が15年。FIT調達期間よりも長いらしい。最後の5年は売電収益はなく、ローンの支払いのみ発生する。
最初の10年間は年間約13万円のメリットがあるが、そのあとは年間約6万円の電気代節約メリットのみ。そう考えると初期費用215万円を回収するのにゆうに20年は超えてしまう。
そう考えるとあまり導入によるメリットはないなぁと思ってしまった。
即決で
営業によるとこのキャンペーンは今だけなので、できれば即決でお願いしますとのこと。
営業が導入メリットの試算をしている間、自分でも手元のiPhoneで上記の試算をささっと行い、見積もり金額を見た瞬間に決めました。即決で。
上記のパネル代水準やFIT調達期間の指摘を行いつつ、回収期間を考えると導入メリットがあまりないと感じるため、今回は見送ります、と回答。
今後太陽光発電の導入を考えている方やまさに最近営業を受けた方の参考になれば幸いです。
おいしい話には必ず裏があるので気を付けましょう。
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