世界記録が自分の超えてはいけないラインを超えた件:Touhou World Cup 2023 EX01 弾幕アマノジャク ノーアイテムRTAを振り返る
東方STGの非公式国際大会・Touhou World Cup 2023に『弾幕アマノジャク ~ Impossible Spell Card.』All Scenes No-Item RTAレースで参加し、現時点の世界記録を更新しました。
日本語公式:
英語公式:
この記録は個人的な超えてはいけないラインを超えてしまったと思います。
今回はそのレポートです。
(以下、Touhou World CupをTWCと表記)
応募
元々は昨年同様に東方虹龍洞 Lunatic ノーボム部門で応募するつもりでしたが、十分な練習時間が取れず、すぐ通すにも実力不足で今年は断念しました。
代わりにと言ってはなんですが、今年の同部門で解説を務めました。
その流れでTWCコミュニティに潜む一人になっていました。
承諾
TWC2023も終わりが見えてきた頃、エキシビションマッチの種目として弾幕アマノジャクのノーアイテムRTAを検討しており、走者を募集しているとDMを頂きました。
最初に参加を決めたのは今年からRTAを始めた世界3位走者・Kiricatさんとのこと。あの方が勝負にノリノリであるなら良いかも……と思い参加を承諾。むしろやらせてくださいという話ですが、当時世界1位走者だったみすみすめたねさんにもこちらから声掛けして、世界トップ3による夢の3人並走が実現することになりました。
事前準備
練習や改善
TWCはShowcaseというより試合の場だと思うので(今回はエキシビション枠ですが3トップ集結ということもあり)、昨年同様に勝ちに行ける姿勢作りが先決でした。要するに練習。
気負いすぎも良くないですが、自信を持ってプレイすることが楽しむことにも繋がるかと思います。
DMを頂く前より、漠然と目標だった55:XXを目指して練習や通しを重ねていて、RTA in Japan Winter 2022の頃よりも更にパワーアップしていました。あれからまだ半年程度、それでも不思議なことに地力の高まりを感じていました。当然だけど、まだまだ成長できる。
走るタイミングは少し本番を意識していて、似た時間帯に通すようにしていました。
TWCにおいては練習と見直し、そしていかにリラックスして臨めるかという状態にあったのでゆるりと本番まで待ち構えていました。プレイ自体は少なめでしたが、考えてる時間は多かったかと。
作戦検討
早く完走したやつが勝ち。
よって自分のことだけ考えていれば良いだろうという結論です。
お絵かき
こんな絵を描きました。モチーフはRTA in Japan Winter 2022での本番台ワイプ。3人並走ならこれしかないといった感じです。
手を付けたのは7/30なのに完成は前日という体たらく。未来のTWCプレイヤーの皆さまは間違ってもED隠しを前日に拵えないことをおすすめします。
RTA観戦
元々RTAに興味を持っていたTWCプレイヤー・タカティンさんがタイマーを試したり走ったりする様子を眺めていました。エキシビションマッチの解説に応募したらしく、前日に世界4位の記録を樹立していました。すごい。
本番
3トップが並走し、世界4位とTA経験者が実況解説を担当する大変貴重な機会となりました。
解説は先述した世界4位のタカティンさん。実況は同じ究極反則生命体でRTAを志した者として知り合い、これまで何度も解説をお願いしてきたカプリエムさんです。奇遇なことにどちらもオフで面識のある方だったため妙な親近感があります。楽しかったですし、盛り上げてくださって大変感謝です。
自分はといえば、本番直前はシャワーに浴びてから好きな東方アレンジを流しつつまったり練習していました。部屋があまりにも暑いので水分補給多め。
昨年同様に本部で相手のペースや各コメントを確認しないチャートで走りました。普段以上に孤独な時間でしたが、研ぎ澄まされた感覚でプレイした覚えがあります。
最序盤のみ、RTA in Japan同様にのぼせていたのか変なミスが目立ちます。2-3はぼーっとしていてリトライ、その後も知らない動きでクリアと大変汚い。
こういう脱力する場面が過ぎると却って上手くいくものです。
ここから(何度か足を取られながらも)ほぼ全部の区間で適度に緊張感をコントロールしていました。慣れたことであれば緊張感の維持は得意です。
ということで千載一遇の強運とほぼ納得の操作コントロールを発揮し、自己ベストを4分38秒、世界記録を2分58秒更新しました。
記録をかけた戦いに移っていることは最強格の5-2 琴符「天の詔琴」を超えた17:17の段階から実感していました。記録が難所の出来に強く左右されるため、早い段階で記録ペースという負荷をゆっくり受け続けながら進むことになります。
それが1-4 潮符「湖のタイダルウェイブ」、4-3 蝶符「花蝶風月」、8-4「小人の地獄」、8-6「にんげんって良いな」、9-5「神の御威光」と主な記録ブレイカーを落としていくうちに、徐々にどうやら異常な記録ペースを維持できているらしいことが身に染みてきました。それは細かなシーンの出来からも伝わってくることでした。
千載一遇、ぶっちぎりの最速ペースの圧を肌で感じながら走る時間は楽しかったです。記録ペースの緊張感はいつだって楽しい。これで魅せているという感覚で走った時間はたとえ嫌なミスがあっても恥ずかしくなかった。
そして繋がったタイムはあまりにも出来すぎたうえに夢の大記録だったため、感情の昂ぶりが抑えられませんでした。
余韻に浸り、本部で走る2人をぼけーっと眺めていると、Kiricatさんが怒涛の追い上げでみすみすめたねさんに迫りデッドヒートに持ち込みます。その直前あたりから自分も本部観戦を楽しむ余裕が出てきました。
エキシビションマッチながら本当に熱い試合をありがとうございました。
選手、実況解説、TWCコミュニティなど、関係者の方全てに感謝いたします。
記録を振り返って
被弾によるリトライを箇条書きでまとめました。
ここまで被弾が減ってくると、何が悪かったかぱっと見で思い浮かびます。
(箇条書き部分は気になる方のみどうぞ)
2-3 劈音「ピアッシングサークル」Challenge 2
ぼーっとしていた&クリアも怪しい動きをしていた。5-8 両吟「星降る唄」Challenge 2
苦手。難しい配置に対応できなかった。5-2 琴符「天の詔琴」Challenge 3
最強格ゆえ十分な出来だが被弾場面的に取られた時間は多い。2-4 眼光「ヘルズレイ」Challenge 2
序盤にインを攻めすぎて頭に激突。軽微。3-3 「20XX年 死後の旅」Challenge 2
札直置き。いつもケアしていたつもりだが思わぬ被弾。超痛い。4-1 通常弾幕 Challenge 2
難しい。7-2 時符「タイムストッパー咲夜」Challenge 2
序盤にインを攻めすぎて身体に激突。軽微。7-6 時符「チェンジリングマジック」Challenge 5
実は初手のミスで隙を晒していた。最悪。初めての当たり方。
その後運ゲーに連敗、あまりにも痛い。ただ微妙なラインも。9-1 御柱「ライジングオンバシラ」Challenge 2
妥協の裏目。右回避ならスクロールアウトできてたが普段やらない。9-5 「神の御威光」Challenge 2
経験不足。視野狭かったり判定理解してなかったり。
2回目のプレイはPOGです。9-8 鬼群「百鬼禿童」Challenge 2
下ミニ萃香に激突。重く見過ぎていたがたまに刺して来るのも事実。10-3 「全妖怪の緋想天」Challenge 3
あまりにも痛いが経験不足。また苦手。難しい……。10-4 「フィットフルナイトメア」Challenge 3
最強格だが2回目の回転ミスはあまりにも痛かった。10-7 「十七条の憲法爆弾」Challenge 3
最強。自分のミスだったと思う。
ここの上振れは最終手段だが今回は間違いなく上振れている。
単純に合わせると計21被弾。
21という数字は一見多く感じられますが、例えば10-7は取得率1/10もあれば最強レベルの実力者と言われています(現実的でない)。こういう理不尽な難所を上振れないと記録は出せない。
僅かな痛過ぎるミスを抱えながらも上振れを繋げた51:52(RTA)は長らく55:XXが目標だった自分にとって超えてはいけないラインを超えた感覚です。
もはや自分の地力で上回るのは困難な域です。全てが綺麗なプレイではないものの、それを潰すだけでは到底届かない領域。
49分台以降の世界は神の不可侵領域と捉えていますが、その一歩手前に手が届いたということは行けるかもしれないということです。それはSoBの40:38が示す通り厳密にはまだ11分14秒もの伸びしろがあるわけで、このRTAはまだまだ競技的に詰まっているわけではないのです。
そんな僅かな期待と厳しい現実に揺れる想いですが、ここから先は真に力のある妖怪たちに一旦任せたいと思います。
国内最大規模のRTA in Japan、
世界最大規模のGames Done Quick、
そして東方STGの国際大会Touhou World Cup などなど。
大きな舞台や東方STG好きが集まるイベントでこの競技は何度も披露されてきました。
出来る限り人目は付いたかと思います。今回のTWCも更なる新規走者の参入や記録更新のきっかけになればこれ以上嬉しいことはないです。ここまで来てしまった以上、不可侵と思っていた49分台を見てみたい気持ちがあります。
(そこまで至らなくとも、TWCプレイヤーのような一部の強者にとってはカジュアルに楽しめる競技だと思います。いやどうだろう。)
自分は一度充電しつつ、またこの競技に向き合えたらと思います。なんだかんだ定期的に遊んでしまいそうですが……。
総括
経験的に一定のタイムを出せる自信はあり、直近のアクティブ走者全員が集結するという高揚もあって期待に胸膨らませたエキシビションマッチを最高の形で終えることができました。
前回の虹龍洞ノーボムでは相手の強大さや自分の未熟さ等が重なり、痴態を晒さないという目標に腐心していました。こう書くと言葉が強いですが、実際それほどのプレッシャーに捉えていたものです。完走すらままならない特殊な部門に飛び込んだゆえ自信を失えば原動力はほぼ無くなってしまう。苦しいながらも最後に奇跡が起き、何とか超えられたという気持ちが強かったです。
転じて、得意のノーアイテムRTAはもっと楽しむための工夫を意識をしました。エキシビションということもあり、程良く準備を頑張って本番に移れました。
プレイではRTA in Japanのときに見せた細かなミスの積み重なりを解消する方向で調整してきました。これには経験と適度な緊張感の維持が必要です。不完全ながらもそれが実を結んだ記録といって良いと思います。
あとは睡眠です。これに限ります。
普段は壊滅的ですがせめて前日くらいは良い質で眠りたい。
冗談ではなくこれまでの自己ベストはほぼ睡眠によって成立しています。
そして、
経験を積むなり良い思い出を願うなり、自信や期待を持って取り組むこと。
これがイベントを楽しむ秘訣かもしれません。
またそのような何気ない営みが幸運を連れてくるものなのでしょうか。
人事を尽くして天命を待つとはよく言われ、まさにこの競技を体現した言葉でもありますが、こと弾幕アマノジャクにおいては「運鈍根の捕物帖」もまたその教訓かもしれませんね。本当に良いゲームだ。
感想はここまでとします。
とても良い思い出を作れました。素敵な機会をありがとうございました!
追伸
もう少しかっちりとした記録の振り返りか、RTAを意識した要点まとめ記事を別で作るつもりです。
それとイベントでみすみすめたねさんが延々と語りながらノーアイテムRTAを通す様を一度見てみたいという密かな願望があります。
(どうした突然)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?