タイ語の日本語のような謙遜表現の有無を考察
タイ語にも日本語のような謙遜表現がありますが、文化的背景や表現の仕方が異なります。
タイでは、謙遜や敬意を表す表現が会話の中で非常に重要視されていますが、日本語の謙遜表現のような「自分や身内を低く表現する」というよりは、「相手を持ち上げる」形が多いです。
以下はタイ語での謙遜や敬意の表現についての特徴です:
自己を控えめに表現する方法
タイ語には日本語の「愚妻」「愚息」のように、自分や身内を「わざと低く表現する」直接的な言い回しはあまりありません。ただし、自分を控えめに表現する言い回しがあります。
「ดิฉัน (ดิชั้น) / ผม」などの一人称
自分を謙遜して表現するために、適切な一人称を選びます。たとえば、女性は「ดิฉัน (ดิชั้น)」(直訳:私は)を使うと控えめで丁寧な印象を与えます。
男性の場合も、フォーマルな場では「ผม (ポム)」を使い、礼儀正しい印象を示します。「เล็กน้อย (レックノーイ)」=少しの・つまらない
自分が与える物や行動を謙遜して表現する際、「เล็กน้อย」を使うことがあります。
例: 「ของเล็กๆน้อยๆ」=つまらないものですが(贈り物を渡す際)
日本語の「粗品」に近い感覚です。
01:相手を持ち上げる表現が中心
タイ語では、自分を低くするよりも、相手を立てることに重点が置かれます。たとえば:
敬語の使用
相手に対する尊敬を示すために、「ครับ (クラップ)」「ค่ะ (カー)」を文末に付けることが基本です。目上の人に対する表現
相手の肩書きや地位を強調して呼ぶことが一般的です。たとえば、「คุณพี่ชาย (クンピー)=お兄様」「คุณพ่อ (クンポー)=お父様」や「คุณครู (クンクルー)=先生」など。
02:特定の謙遜表現
ข้าพเจ้า (カーパジャオ)
非常にフォーマルな場で使う一人称で、「私」を謙遜して表現する際に使われます。
例: 書類や公式なスピーチなどで使用。เจ้านาย (ジャオナイ)
誰かの雇用主や上司に対して使う表現で、「主人」「上司」として尊敬の意味が込められています。
03:家族に関する表現
タイでは、自分の家族を表現する際、日本語の「愚妻」「愚息」のような表現は使いませんが、敬意や親しみを持って家族を紹介する言葉があります。
たとえば、妻を紹介する場合は「ภรรยา (パンラヤー)=妻」とフォーマルに言うか、「เมีย (ミア)=奥さん」を使うことが多いです。後者はカジュアルな表現です。
若い人は「แฟน(フェーン)=恋人」を男女区別せず相手を指す言葉として場合があります。(例文:คุณมีแฟนหรือยัง? あなたは恋人はいますか?=日本的には付き合っている人はいますかのニュアンスに近い表現と理解しています。)
文化的な違い
日本語では「自分を低くすることで相手を高める」謙譲の美徳が強調されますが、タイ語では「自分を控えめにしつつも、相手に敬意を払う」ことが中心です。
そのため、タイの謙遜表現は日本語ほど自分や身内を過度に卑下するものではなく、バランスの取れた礼儀正しさが特徴だと思います。