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手術は『雨天決行』

できれば人生で経験したくないことランキングの上位に入ってくるのが、全身麻酔の手術。

けがや病気なんて少なければ少ないほうが良い。健康第一。と信念を掲げていたにも関わらず、これまでに膝の前十字靭帯を2回切った。1回目は自転車で転んだことで損傷し、その数カ月後部活中に踊っていたら断裂。2回目はスキーをしていた際、新雪に足を持っていかれて派手に転んだ時に。残念なことに膝の靭帯は人体の構造的に自然治癒の可能性はない。切れてしまったならば身体の別の場所から健を持ってきて新しい靭帯を作り、ボルトで固定をするのが基本的な治療方法だ。新しい靭帯を作りボルトで固定するのに1回、その約1年後にボルトを抜くために1回、完治までには計2回の手術が必要になる。

私は2回靭帯を切っているので、これまでに4回の全身麻酔手術を経験している。
今回はそんな手術にまつわる「選択」に関して。

手術前日。午前中に入院してからは結構忙しい。
麻酔科、薬剤師さん、リハビリ担当、主治医、看護師さんと色々な人と手術に向けた確認をしていく必要がある。その中で、こんな質問をされる。

「音楽、何かリクエストはありますか?」

 そう、手術室に入ってから全身麻酔で意識がなくなるまでの約30分。不安を和らげるために自分の好きな曲をかけてもらうことができるのだ。完全な非日常、見知らぬ機械に囲まれている時に好きなアーティストの曲を聴くことができるのは、単純だけど心の支えになる。ちなみに、患者の意識がなくなってからは執刀医の選んだ音楽に変わるんだとか。

「最近の若い人ってどんなの聴いてるんですか?米津玄師?星野源とか?」

看護師さん、流石。どっちもめちゃくちゃ聴いてます。
星野源は特に高校生の時から大好きで、深夜ラジオもずっと聴いている。間違いなく全曲好き。だが、特に「エピソード」あたりのスローテンポな曲が好きで良く聴いているので、手術前の気合を入れたいタイミングで聴きたいかと言われると少し違うような気もする……。ここは、活動再開したことで、どの曲を聞いてもテンションが爆上がりする状態になったあのバンドでいこう。

「東京事変でお願いします」

そして迎えた手術当日。東京事変とだけリクエストをしていたら看護師さんの方でアルバムを選んでくれたようで、手術室に入っていくとアルバム「スポーツ」が大音量で流れていた。1曲目は『生きる』。多重録音によって作られた、ゴスペルのようなどこか神々しいBGMを背負いながら入室していくのがなんだか可笑しかったのを覚えている。

ベッドに上がるといよいよ手術のための準備が始まる。その時に流れていたのは『勝ち戦』。怪我をしたことで色んなことができなくなって、失ったものは多い。手術が終われば、全身麻酔の副作用である吐き気が待ち受けているし、何カ月にもおよぶリハビリも待っている。だけど、そう。これは勝ち戦なんだ。靭帯を作り直せば「完治」すると思うと前向きになれた。この状況で東京事変を選んだのはやっぱり正解だったな。そして「スポーツ」を選んでくれた看護師さん本当にありがとう。手術に向けての準備が進む中で、曲を聴きながらそんなことを考えていた。

ベッドに上がってからは、ものすごい速さで手術着が脱がされていったり、血圧計をつけられたり、先に痛み止めの麻酔が入れられたりと看護師さんやお医者さんにされるがままになる。『能動的3分間』を聴きながら、世界で一番受動的な時間を過ごしているわけだ。

「じゃあ、そろそろ眠くなるお薬入れますね」

ナイスタイミング。BGMも丁度アルバムの中で一番好きな曲に差し掛かっている。
歌詞とは裏腹なこの軽快なイントロが良いんだよな。

あ…きた……

意識が…ぼんやり……する………

そういえば……この曲の……タイトル………って…………………


<ここで一曲>

ちなみに手術は何事もなく終わりました。お医者さん、看護師さん本当にありがとうございます。もう2年前くらいの話なので、今はピンピンしてます。

書いた人:すみ
ひとこと:スープにたまごを入れようと思っても、良い感じにふわふわにならないのが最近の悩み。たまご料理って難しい。

WACODES


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