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【万歳!とバンザイ!】<袴田巌さん>無罪から<横浜ベイスタ>日本一、そして「映画〇月〇日、区長になる女。」まで

「万歳!」は嫌いですが、何か?

こんどの石破首相による衆議院解散では少々白けていた様子でしたが、国会で議員どもがいっせいに「万歳!」を叫ぶ光景を見るたび、アホバカマヌケじゃないかといつも感じていました。

自分たちが失職するかもしれないのに、なんで自民党の1年生議員が音頭を取って、ベテラン議員ともども<解散>を喜びあうのか、その神経が理解できませんでした。

「万歳!」は、戦前の無辜(むこ)の民を戦地に送りだすときの「天皇陛下万歳」、それに、全体主義国家・北朝鮮の独裁者を讃える「万歳(マンセー)!」、それに民主主義とは名ばかりのロシアの「プーチン!ウラ―!」や極右の好戦国に成り下がったイスラエルの「ネタニエフ!」歓呼を連想して、虫唾(むしず)が走るのです。

心から喜び合う「バンザイ!」

でも、長いこと生きていると、そんな政治屋どもの愚劣なパフォーマンスではなく、心の底から「バンザイ!」を叫びたくなるようなことが起こるものです。

最近では――。

1)袴田巌さんの冤罪が晴れて無罪が確定したこと

▲1966年に起きた静岡・みそ製造会社専務家族4人殺し(袴田事件)で逮捕された袴田巌さんは一貫して無罪を主張したが、死刑囚として拘禁され、58年後の今年になって、ようやく無罪が確定した。元ボクサーであったことからファイティング原田さんなど元世界チャンピオンが無実を訴え再審を請願してきたが、弁護団の粘り強い証拠実験や姉の秀子さんの献身によって、無罪確定を勝ち取り、静岡県警本部長が袴田さん宅を訪問し、直接謝罪するに至った。
(2024/10/21報道ステーションより)

2)  韓国の作家ハンガンさんにノーベル文学賞が授与されたこと
3)  日本被団協がノーベル平和賞を受賞したこと
4)  自民党総裁選で、右翼リーダーの高市早苗が敗れ、安倍元首相が寵愛した差別オタクの杉田水脈が衆院選の出馬を断念したこと
5)  衆院選2024で<立民>と<れいわ>が躍進し、これまた安倍元首相がスカウトした「愚か者めが!」の丸川珠代・大塚拓両議員が夫婦で落選したこと
6)横浜ベイスターズが予想をくつがえして日本シリーズを制覇し、<感涙にむせぶ筒香劇場>が11月3日の<文化の日>に上演され大成功をおさめたこと

▲「横浜が優勝するため(大リーグから)帰ってきた」という宣言どおり、筒香嘉智外野手は福岡ソフトバンクとの日本シリーズを3勝2敗で本拠地に迎え、第1戦で抑えられたエース有原航平投手から2回裏に先制ホームランを放ち、1998年優勝時の“マシンガン打線”を彷彿とさせる打棒を導き出し、11対2の大差で日本一の栄冠に輝いた。筒香選手がホームランを打つとチームは負けないという<筒香劇場>が最高のかたちで終演した。

最後の6)は、大方の人にとってはどうでもいいことかもしれませんが、26年前の1998年日本一をまじかに観た我ら横浜ベイスタ一家、ようやく3度めの日本一のチャンピオンになった瞬間、夫婦で娘(※夫も横浜出身)の家に駆けつけ、天まで届けとばかりに、「やったあ!すごいね!」をハイタッチしながら連発してしまいました。

「万歳三唱はしません」と「ミュニシパリズム」


お話変わって、この間、政治活動には無縁の若い女性が市民運動団体にかつがれ、東京・杉並区長選(2022年)に立候補して、187票の僅差で当選するまでをつぶさに記録した痛快なドキュメンタリー作品「映画〇月〇日、区長になる女。」(2024年公開)を観ました。

当選が発表されたとき、選挙事務所に集まったメンバーは、駆けつけた人たちに向かって「私たちは万歳三唱はしません。その代わり、いつものようにみんなでコールします」と、スローガンのようなラップのような言葉をリズムに乗せて合唱したのです。

▲2022年の杉並区長選で岸本聡子さん(中央、マスクなし)が当選したとき、右端のリーダー格の女性が「私たちは万歳三唱はしません」と言って、ボードを掲げ、「いつものようにみんなでコールします」と言って合唱した。(「映画〇月〇日、区長になる女。」より)

「♪みんなのことはみんなできめる♪児童館守ってゆうゆう館守ろう♪商店街守って街なみ守ろう♪あしたの杉並みんなでつくろう」

岸本聡子さんが杉並区長になったおかげで、今年も聴きにいった阿佐谷ジャズ祭り(通称)の名所である立派なケヤキ並木が再開発の手から守られることになった――と、この映画で知りました。

当選のときに口ずさんでいた<みんな>とは、男も女も、老いも若きも、暮らしぶりや考えの異なる人たちも、隣接する地域の人たちを含め、<国民>でも<都民>でもない、属性をはなれて個人として自立し自由な意見をぶつけあう<市民><みんな>なのだと思いました。

<市民>代表の区長を誕生させた翌2023年の杉並区議選は、立憲民主党日本共産党れいわ新選組生活者ネットワーク無所属も、肩をくっつけ合って駅頭の街宣活動をおこない、立候補者の大半が当選しました。

▲2023年の杉並区議選のおそらく最終盤。立民・共産・れいわ・生活者ネット・無所属の各候補者が、いっせいに並んで駅頭の街宣活動をした。これが<リベラル共闘>の姿だと思った。(「映画〇月〇日、区長になる女。」より)

この場面を観て、杉並区政を長年サボってきた<自公>はもちろん、“第2自民党”を隠そうとしない<日本維新の会>も<国民民主党>の姿もなく、<市民>による地域住民のための<リベラル共闘>の真の姿があって、この国のあらゆる政治を変えていくモデルになればいいなと胸が熱くなりました。

キーワードは、この映画にひんぱんに登場する「ミュニシパリズム」

聞きなれない概念ですが、「地域に根づいた自治的な民主主義や合意形成を重視する」という考え方だそうです。

だから、区長選の勝利がゴールではなく、区長の姿勢を含めた区議会の動向を常にチェックし、<市民のみんな>が合唱するように、「選挙はつづくよ、どこまでも」

衆院選2024<野党共闘>のうさん臭さにうんざりしていた身には、実に爽快な<ある地域の活性物語>がこの映画にはありました。

【付記】
★このドキュメンタリー作品「映画〇月〇日、区長になる女。」のすごいところは、市民運動団体=選対メンバーの内部で激論をかわす場面をあからさまに描いているところです。
★候補者の岸本さんの方針に対して、長年、地域の市民運動にたずさわってきたメンバーが激しく異を唱え、周囲は「岸本さんが降りるのではないか」と危ぶむところまでいくのですが、とことん話し合って、再び選挙態勢を立て直していき、当選にこぎつけます。

★かつて、東京五輪の神宮外苑再開発問題(都営住宅の取り壊しや神宮の森伐採)に市民運動の一員として関わっていた森まゆみさん(作家・エッセイスト)は、出版社PR月刊誌「みすず」(みすず書房)に、“市民運動にはさまざまな立場や意見の人がいて、まとまって進めていくのは大変むずかしい”という趣旨の嘆きの文章を書いていた。
★そうした意味合いからも、「映画〇月〇日、区長になる女。」をぜひ、ご覧になってください。

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