<阿佐谷ジャズストリート2022回顧>「ハナミズキ」は反戦歌だったのか
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バイオリニストが告げた「この曲は反戦歌」
<阿佐谷ジャズストリート2023>では、山下洋輔のジャズを聴くことができたが、去年の<――2022>では、バイオリンとピアノとドラムのトリオ(すみません、グループ名は失念)による一青窈(ひととよう)さんの「ハナミズキ」の演奏がせつなく甘く響き、心に残っている。
物語は筋だけでなく背景が語られてこそ深みを増すが、リーダーの女性バイオリニストは、「ハナミズキ」を演奏する前に、聴衆にこう語った。
「この曲は反戦歌です」
一青窈さんの「ハナミズキ」は大ヒットした名曲には違いないが、歌詞にそのような<ソウル(魂)>がひそんでいるとは、うかつにも知らなかった。
そのときは、ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月24日開始)から半年以上が過ぎ、それを予見した曲、あるいは、あらゆる戦争に対する<とこしえの反戦歌>なのかと思った。
だが、家に帰ってから、検索してみると、こう解説されていた。
――2001年9月11日(9.11事件)、イスラム過激派アルカイダがハイジャックした航空機数機が世界貿易センタービルやペンタゴン(アメリカ国防総省本庁舎)ほかに突入し多数の死傷者を出した事件は、それじたいは局地的なテロだったろうが、当時のブッシュ政権はアフガニスタン侵攻につづき、イラク戦争に踏み切ったことからすれば、アメリカと中東の全面戦争への可能性もあった。
「百年続きますように」と一青窈は歌った
一青窈さんは「ハナミズキ」で歌っている――。
恋人どうしの一生では「百年続きますように」、でも子々孫々に継承するのであれば「千年も万年」も戦争のない平和な時代が続きますように、という希求が込められているのだろう。
台湾出身の一青窈さんにとっても、(軍事力増強に前のめりになる)今生きるこの国、米中両大国のはざまにあっての故国、いや全世界の、そして地球環境の危機的な現状は心安らかであるはずはないと思う。
ハナミズキの花言葉は、「私の想いを受けとめてください」と「永続性」――それも意味深く感じられる。