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【2023年の阪神劇場】日本一パレードと「奇跡のバックホーム」(その2/終)
【↑トップ画像】<奇跡のバックホーム1>
2019/09/26ウェスタンリーグ(2軍)ソフトバンクとの公式戦最終試合。8回表2アウトという場面で守備位置についた横田慎太郎選手は、「鋭い打球が見えないながら」センター前のヒットをがっちり捕球し、矢のようなボールをキャッチャーめがけて送球した。その直後、<奇跡>が起きた。
(2023/10/21NHKBS1・再放送「逆転人生~神様がくれた奇跡のバックホーム 元阪神・横田慎太郎さんをしのんで」より。以下同じ。
※NHKBSが12月1日から1波に統合され、再々放送の機会もなくなると思い、勝手ながら同番組の画像を多数掲載させていただきました~それにしても海外のすぐれたドキュメンタリーの放送が少なくなるのは、すごく、すごく、残念!)
「奇跡のバックホーム」はどうやって起きたのか
――阪神ファンでもなく、一度もプレーを観たことがないのに、なぜ横田慎太郎選手のことが気になるのか、ずいぶん考えました。
スポーツ選手に限らず、作家や詩人もそうなのですが、<夭折>の存在に格別の想い入れがあるからかもしれません。
そして、この<note>に刻みつけておきたいと決定的に思ったのは、生前の彼の屈託のない笑顔をテレビ画面で見たからだと思います。
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――プロ野球選手だった父を持ち、2013年に強豪の鹿児島実業高校(かごじつ)から阪神にドラフト2位で入団した横田慎太郎選手は、3年後に1軍で活躍(打率は1割9分)したものの、翌年の2017年の春季キャンプで体調不良となり、脳腫瘍と診断されました。
一時は体調が回復したのですが、2019年にいたって、「飛球が2つに見える」などの視覚障害が起こり、悩んだあげくに、その年限りで引退を決意したのでした。
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――2019年9月、2軍選手としては異例の<横田選手の引退試合>に出場した彼は、対ソフトバンク戦の8回表、打球もほとんど見えないのに、(最初のフライこそ後ろにそらしたが、次は)センター前のヒットをがっちりグラブにおさめ、(まるで往年のイチロー選手のように)キャッチャーめがけてストライクを投げ、3塁からすべり込んだランナーをピンポイントで見事に刺したのです。
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やがてゲームセットとなり、横田選手が好きだった曲「栄光の架橋」(ゆず)が流れるなか、見ているだけで彼の一途な人柄をしのばせる挨拶、そして矢野1軍監督(当時)やご家族からの花束贈呈があり、セレモニーが終わると、1軍選手も球場に駆けつけて整列し、彼は一人一人とていねいに握手しました。
これほどチーム全員から愛された選手はいるだろうか
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平田勝男監督の涙を(ノーカットのYouTube映像で)見ていたら――、阪神タイガースという<情>に厚いチームに入団してよかったね、監督やスタッフ、選手たちに恵まれ、みんなに愛されていたことが充分伝わってきたよ、1軍での出場はわずか1年だったのに、引退試合まで開催してもらえてよかったね、と彼に思わず声をかけてあげたくなりました。
昨年まで阪神の監督を務めた矢野さん(開幕早々に「今季限りで退任する」と宣言しヒンシュクを買いましたが、ローマは一日にして成らず、今季の阪神日本一の功労者ではないでしょうか)も、監督時代に選手ミーティングで、横田選手の引退試合のビデオを選手みんなにいつも見せたそうです。
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日本一のビールかけで炸裂した、平田さんの“カツオ節”
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ここで、阪神日本一の祝勝会場(11月5日夜)にいきなり飛びます。
傑作だったのは、現在は1軍ヘッドコーチの平田勝男さんの<中締め>、いわゆる“カツオ節”の炸裂です。
「宴も竹中直人(たけなわ)ですが、日もとっぷり暮れたところで、中島みゆき(中締め)させていただきます」とおやじギャクをかまし、ビールかけ用に提供されたアサヒスーパードライの瓶を手に「全国の野球ファンのみなさん、おつかれ生です、おつかれ生です」と連呼。「スーパードライ、コマーシャル待ってます」と締めくくった。
この話にはオチがついていて、アサヒビール本社もただちに緊急会議を開き、「おつかれ生です」のCMに平田コーチを起用する意向だとか。(アサヒさん、まさかシャレではないでしょうね?)
天国の横田さんも、この“カツオ節”には爆笑したのではないでしょうか。
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「すごく鳥肌が立ってきました。バックホームの瞬間を鮮明に思いだします」
横田さんはNHKの番組の最後に、ナレーションというかたちで、こう語っています。
「つらいとき、あきらめてしまうこともあると思います。そんなときこそ目の前にできることを一つ一つ積み重ねていく。そうすれば道は開けると僕は信じています」
横田さんは、NHKの番組放送から、ほどなくして亡くなりました。
享年 28歳
一度もプレーを観ることはできなかったけれど、
人から愛されるというのはこういうことなのだと
教えてもらいました。
衷心より哀悼の意を捧げます。
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